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第2章 パラレリアクロス
2-2 崩れ始める世界の理
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ジェニファーは自身を【黒猫の妖精】という女性キッドと共にとりあえずは帰宅する事になった。実はジェニファーは身寄りはおらず近所には父親の妹、つまり叔母の家に住んでいる。母親はジェニファーを産み、10歳の頃に病気を患い他界。父親のレムが男手一人で育てたという。
ジェニファーが産まれた国はサイド3【カルベローナ】。父親のレムと母親はこのサイド1【ローザリア】出身だった。
やがて宇宙と地球全土を巻き込んだ戦争が起きて、サイド1【ローザリア】は戦争の被害を受けて半壊。今のローザリアはその戦争から辛くも被害を免れたコロニーで比較的平和な日常を過ごしている。
同じローザリアでも外の宇宙では復旧工事はされている、そんな状況だった。
最もサイド3カルベローナ公国も未だに混乱は続いているらしく情勢は不安定この上ない。
宇宙と地球全土を巻き込んだ戦争は地球連邦側が辛くも勝利を収めたが未だに大小様々なゲリラ戦は起きている、そんな世界だった。
サイド1ローザリアは連邦政府側の勢力だったがほぼ中立を保ったので大規模な破壊活動は免れたのが功を奏す。その他のコロニーは大概が破壊され目にも無惨な光景になってしまっていたのだ。
ローザリアの街を歩くジェニファーとキッド。ジェニファーは父の事を知っているであろうキッドに彼の事を尋ねている。
「お父さんがいるパラレルワールドって何て名前の世界なの?」
「向こうの世界は【アルトカークス】って名前がつけられているぜ。レムのおじさんはそこである人を守る役割をしているんだ」
「どんな人を守っているの?」
「どこまで話せばいいかなー。あんまり向こうの事は話すなって神様が言ってるからなー」
キッドの言う『神様』とはアルトカークスを創造した神の金のルシファーを指す。黒猫の妖精達は基本的に信心深い存在で創造神にも畏敬の念は持っている。
レムの妹の家に帰ったジェニファー。
叔母である女性の名前はガブリエル。ガブリエルの下には更に弟もいるので親しみを込めて『ガブ姐』と呼ばれている。
「ただいまー」
「お帰り、ジェニファー。あら? 新しい友達? その子は?」
「う、うん。まあね」
「オレ、キッド。宜しくな。えーと」
「叔母さんのガブリエルさん。みんなはガブ姐さんって呼んでいるよ」
「『ガブ姐』ってみんな呼んでいるわ。困ったわねー、その呼び名も」
「じゃあ、ガブ姐さんってオレも呼ぶな。宜しく、ガブ姐さん」
「ジェニファーも変わった友達を連れてきたわね~。まさか『オレ』って言う女子がいたなんて」
しかし、そんな平和なやり取りの最中でも、歪んだ世界の理は容赦なく襲いかかる。
キッドの目にはガブリエルの後ろの空間が歪んで、低級の悪魔がガブリエルを鋭利な爪で引き裂かんとしている光景が視えた。
突然、キッドは叫んだ。
「ガブ姐さん、伏せて!」
「どうしたの!? キッド!」
「ガブ姐さんの後ろから悪魔の奴が引き裂こうとしていた。ゲスな奴らだぜ…!」
「私には何にも見えないよ」
「ああ、そうだと思う。奴ら、見えないように行動していたからな」
「チッ…! とんだ邪魔が入ったぜ」
「ジェニファー、ガブ姐さんを安全な部屋に。今ならジェニファーにも見えると思う。あんな奴らが地球にわんさか湧いてくるんだ」
ジェニファーはそこで見た。
悍ましい低級の悪魔ではあるが、醜く、下卑た表情を浮かべる世界の理から外れた存在を。
まるで魔物。それも複数の生物が醜く融合した存在してはならないものだった。
彼らは下品な笑い声をあげて、言い放つ。
「ヒャーハッハッハッー! このコロニーはおろか、他の世界でもオレたちの仲間が色んな人間達を引き裂いている頃だぜェ! これも、女神殺しを企むグレイブ様のお陰だせぇ!」
「グレイブ……?」
「良いのかな? そんなに簡単に黒幕の名前を言っちゃってさ」
「地球の奴らにグレイブ様を止められる奴はいねーよ!」
「てめえ等もオレ様達の餌になりやがれ!」
その言葉を皮切りに怨霊のような悪魔が彼女らを襲い始める。
とある部屋に駆け込んだガブリエルとジェニファーはあの噂は本当の事だったのかと驚愕していた。
噂というのはこの世のものとは思えないと怨霊が色んな人間に襲いかかっているというゴシップネタ的な噂話だった。
だが、あれは根も葉も無い噂話ではなくて、本当に起こっている事だったのだ。
その噂が飛び交うようになったのは丁度、ジェニファーが夢で父親の姿を観るようになった時期と重なるのであった。
「あの噂、本当だったのね。嫌な世の中になったものねー」
「伯母様。そんな事言ってる場合じゃないよ」
「少しは強がらないと怨霊に呪い殺されてしまうわよ。まぁ、兄様が活きてたら「くだらないな」とか言って流しそうだけどね」
「……」
(やっぱりお父さんの妹さんは凄い。お父さんが私を託したのがわかるよ。こんなのが襲ってくるの? これからずっと……。嫌……あんなのに殺されるなんて嫌……! どうすればいいの? どうすればいいの!?)
手紙にはこう書かれていた。
戦って生きて欲しい。私が君と会う日まで。
戦って欲しい。自分自身を守る為に。
「おばさんには触れさせない!」
キッドはあらかじめ装備してきたナイフで悪魔を切り裂きつつ、ジェニファーとガブリエルが避難した部屋へ走る。
ジェニファーの声が聞こえた部屋の扉を開けるとキッドはシルフに声をかけた。
「シルフ! ジェニファーのチカラになってくれ!」
眩い光が放たれると同時にジェニファーの手には機関仕掛けの弓矢が握られていた。
メタリックブルーの人口的な弓矢がいつの間にか握られている。
キッドはジェニファーにアドバイスをする。
「ジェニファー! その弓矢に目の前の敵を射抜くように念じるんだ! 後は体が勝手に動いてくれるから!」
ジェニファーはそこで初めて心から念じた。
こんなやつ、ここからいなくなれ!
人口的な弓矢はその思いを敵を射抜けと解釈して矢を射る操作を体を通してさせる。
まるでそれはクロスボウのように矢を込めると的確に実体を持たない相手に対しても弱点を射抜いた。
クロスボウに触れた事のない少女が放った一撃に悪魔達は断末魔の叫びをあげて浄化されていった。
「凄い…! やるわね! ジェニファー!」
「これが私の戦うためのチカラ……?」
(手紙に書いてあった【黒猫の妖精】に預けたチカラってこの事なの? お父さん)
機械仕掛けの弓矢は、またシルフの姿に戻っていった。
ジェニファーは先程の悪魔の存在に対して、言葉にできない程の悍ましさを肌で感じた。
キッドはその感じ方に関してこう返してくれた。
「それだけ肌で感じたなら充分だよ。レムのおじさんの手紙もこれで本当に起きている事だとわかっただろう?」
「私、あんな気持ち悪い奴らが襲われるのって許せないよ。だから……私、戦う!」
そしてこの時から彼らレンブラント父娘のそれぞれの戦いも始まっ
ジェニファーが産まれた国はサイド3【カルベローナ】。父親のレムと母親はこのサイド1【ローザリア】出身だった。
やがて宇宙と地球全土を巻き込んだ戦争が起きて、サイド1【ローザリア】は戦争の被害を受けて半壊。今のローザリアはその戦争から辛くも被害を免れたコロニーで比較的平和な日常を過ごしている。
同じローザリアでも外の宇宙では復旧工事はされている、そんな状況だった。
最もサイド3カルベローナ公国も未だに混乱は続いているらしく情勢は不安定この上ない。
宇宙と地球全土を巻き込んだ戦争は地球連邦側が辛くも勝利を収めたが未だに大小様々なゲリラ戦は起きている、そんな世界だった。
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「お父さんがいるパラレルワールドって何て名前の世界なの?」
「向こうの世界は【アルトカークス】って名前がつけられているぜ。レムのおじさんはそこである人を守る役割をしているんだ」
「どんな人を守っているの?」
「どこまで話せばいいかなー。あんまり向こうの事は話すなって神様が言ってるからなー」
キッドの言う『神様』とはアルトカークスを創造した神の金のルシファーを指す。黒猫の妖精達は基本的に信心深い存在で創造神にも畏敬の念は持っている。
レムの妹の家に帰ったジェニファー。
叔母である女性の名前はガブリエル。ガブリエルの下には更に弟もいるので親しみを込めて『ガブ姐』と呼ばれている。
「ただいまー」
「お帰り、ジェニファー。あら? 新しい友達? その子は?」
「う、うん。まあね」
「オレ、キッド。宜しくな。えーと」
「叔母さんのガブリエルさん。みんなはガブ姐さんって呼んでいるよ」
「『ガブ姐』ってみんな呼んでいるわ。困ったわねー、その呼び名も」
「じゃあ、ガブ姐さんってオレも呼ぶな。宜しく、ガブ姐さん」
「ジェニファーも変わった友達を連れてきたわね~。まさか『オレ』って言う女子がいたなんて」
しかし、そんな平和なやり取りの最中でも、歪んだ世界の理は容赦なく襲いかかる。
キッドの目にはガブリエルの後ろの空間が歪んで、低級の悪魔がガブリエルを鋭利な爪で引き裂かんとしている光景が視えた。
突然、キッドは叫んだ。
「ガブ姐さん、伏せて!」
「どうしたの!? キッド!」
「ガブ姐さんの後ろから悪魔の奴が引き裂こうとしていた。ゲスな奴らだぜ…!」
「私には何にも見えないよ」
「ああ、そうだと思う。奴ら、見えないように行動していたからな」
「チッ…! とんだ邪魔が入ったぜ」
「ジェニファー、ガブ姐さんを安全な部屋に。今ならジェニファーにも見えると思う。あんな奴らが地球にわんさか湧いてくるんだ」
ジェニファーはそこで見た。
悍ましい低級の悪魔ではあるが、醜く、下卑た表情を浮かべる世界の理から外れた存在を。
まるで魔物。それも複数の生物が醜く融合した存在してはならないものだった。
彼らは下品な笑い声をあげて、言い放つ。
「ヒャーハッハッハッー! このコロニーはおろか、他の世界でもオレたちの仲間が色んな人間達を引き裂いている頃だぜェ! これも、女神殺しを企むグレイブ様のお陰だせぇ!」
「グレイブ……?」
「良いのかな? そんなに簡単に黒幕の名前を言っちゃってさ」
「地球の奴らにグレイブ様を止められる奴はいねーよ!」
「てめえ等もオレ様達の餌になりやがれ!」
その言葉を皮切りに怨霊のような悪魔が彼女らを襲い始める。
とある部屋に駆け込んだガブリエルとジェニファーはあの噂は本当の事だったのかと驚愕していた。
噂というのはこの世のものとは思えないと怨霊が色んな人間に襲いかかっているというゴシップネタ的な噂話だった。
だが、あれは根も葉も無い噂話ではなくて、本当に起こっている事だったのだ。
その噂が飛び交うようになったのは丁度、ジェニファーが夢で父親の姿を観るようになった時期と重なるのであった。
「あの噂、本当だったのね。嫌な世の中になったものねー」
「伯母様。そんな事言ってる場合じゃないよ」
「少しは強がらないと怨霊に呪い殺されてしまうわよ。まぁ、兄様が活きてたら「くだらないな」とか言って流しそうだけどね」
「……」
(やっぱりお父さんの妹さんは凄い。お父さんが私を託したのがわかるよ。こんなのが襲ってくるの? これからずっと……。嫌……あんなのに殺されるなんて嫌……! どうすればいいの? どうすればいいの!?)
手紙にはこう書かれていた。
戦って生きて欲しい。私が君と会う日まで。
戦って欲しい。自分自身を守る為に。
「おばさんには触れさせない!」
キッドはあらかじめ装備してきたナイフで悪魔を切り裂きつつ、ジェニファーとガブリエルが避難した部屋へ走る。
ジェニファーの声が聞こえた部屋の扉を開けるとキッドはシルフに声をかけた。
「シルフ! ジェニファーのチカラになってくれ!」
眩い光が放たれると同時にジェニファーの手には機関仕掛けの弓矢が握られていた。
メタリックブルーの人口的な弓矢がいつの間にか握られている。
キッドはジェニファーにアドバイスをする。
「ジェニファー! その弓矢に目の前の敵を射抜くように念じるんだ! 後は体が勝手に動いてくれるから!」
ジェニファーはそこで初めて心から念じた。
こんなやつ、ここからいなくなれ!
人口的な弓矢はその思いを敵を射抜けと解釈して矢を射る操作を体を通してさせる。
まるでそれはクロスボウのように矢を込めると的確に実体を持たない相手に対しても弱点を射抜いた。
クロスボウに触れた事のない少女が放った一撃に悪魔達は断末魔の叫びをあげて浄化されていった。
「凄い…! やるわね! ジェニファー!」
「これが私の戦うためのチカラ……?」
(手紙に書いてあった【黒猫の妖精】に預けたチカラってこの事なの? お父さん)
機械仕掛けの弓矢は、またシルフの姿に戻っていった。
ジェニファーは先程の悪魔の存在に対して、言葉にできない程の悍ましさを肌で感じた。
キッドはその感じ方に関してこう返してくれた。
「それだけ肌で感じたなら充分だよ。レムのおじさんの手紙もこれで本当に起きている事だとわかっただろう?」
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