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第1章 女神の騎士と女神殺し
1-9 竜の天使
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混沌の女神の騎士レムは自らの秘石(クリスタル)『幻の紫水晶』を手に入れた。彼の秘石の形は優雅な薔薇の形をした紫色のクリスタルだった。
これは彼がこのアルトカークスで行使する力、つまり彼を背中に乗せる天使・ミカエルを召喚する時に必要なアイテムだった。
今、彼らは、レムとルーアは空中でミカエルの背中に乗っている。ドラゴンに乗って感じる風を切る感覚も彼には新鮮だ。穏やかな風を感じて、そして改めてこの世界の美しさを感じる。
どこまでも続く大自然。緑豊かな森、青く輝く紺碧の海、黄金色の砂漠……所々には人間が住む街も見受けられる。
暖かな太陽の光も彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように、さんさんと輝く。
銀翼の最強の竜であるミカエルの背中に乗るレムはそこで、率直な疑問をした。
「所でミカエル先生。もしかして、君は我々の世界で言う所の『天使』なのか?」
「そうか。お前は知らないな。この世界での天使は。丁度いい。少し、解説してやる。よく聞くがいい」
このアルトカークスに於ける『天使』は竜の姿をしている。それは創造神である『金のルシファー』が、天使という存在を最も誇り高き存在であるドラゴンの姿に造ったからだった。
地球に於ける『天使』とアルトカークスに於ける『天使』は似ているようで、違う存在だ。地球では『天使』は至上の存在だが、それはアルトカークスでも同じだった。
だが、アルトカークスに於ける『天使』は目に見える形で姿を現す。それが、竜という存在だ。なので彼らはミカエルらのことを『竜の天使』と呼んでいる。
そして、それらの存在の対極に位置するのが、『堕天使』と呼ばれる存在だ。
その名の通り、堕ちた天使。人間によって汚された竜の天使である。
その最もたる例が、人間によって手を加えられた存在……つまり魔法強化をされた竜の存在だ。
通常、竜の天使に人間が手を加えることなどそうそう出来ない。
もとより自我が崩壊しているか、強力な意思の力によって、それらの制御をする。
だが、例外もなくはない。
もし、竜の堕天使を駆使する存在がいるとしたら、その者も秘石(クリスタル)を持っている可能性がある。
秘石(クリスタル)は強力な力を行使する際に必要な、その人間の心が形となった聖なる石。
ルーアにも、必ず、その秘石(クリスタル)があるはずだ。
彼女の秘石(クリスタル)はただし竜の天使を召喚するための秘石(クリスタル)ではないが。
秘石はその物に必要な力を与える力を持つ。だから、それぞれが全く違う力を持っていることは大いにあり得る話だ。
その者がアルトカークスで生きるための力だから。
彼らは今はルーアの秘石(クリスタル)を求めて、銀翼の最強の竜の案内で、とある神殿に向かっている。
空から見るアルトカークスはまさに絶景だった。穏やかな吹く風とその風に乗って香る、彼女の長い茶色の髪の毛の香り。
甘く美しい薔薇の香りのシャンプーの香りが、後ろに座るレムの嗅覚に訴える。なかなかいい趣味をしているなと彼は思う。艶やかに波打つ髪の毛が彼には素敵に思える。
秘石はそれぞれが全く違う形と力を持つ。
彼の秘石(クリスタル)は混沌の女神を守るための力となってその形となった。能力は竜の天使を呼び出す力と彼が携える銀色の剣の能力の解放。
故に彼の秘石『幻の紫水晶』が輝きを増す程、自然と彼の相棒である銀翼の最強の竜・ミカエルも進化する。今はミカエルは第一段階に当たる能力だが、それでもなおその力は驚異的な力だ。
では、どうすれば、彼の秘石が輝きを増すのか?
それは、ミカエルさえもわからない。至上の存在であるミカエルをもってしても、彼の秘石を輝かせる方法は判らないのだ。
こればかりは、その石を持っている彼自身が見つけ出すしかない。そうして、心の結晶であるクリスタルは光輝くのだから。
レムは己の胸に輝く秘石を見つめる。まるでそれは紫色の薔薇だ。地球では絶対咲かない色の薔薇。だが、そこからは確かに力のような存在も感じることが出来る。
やがて、ルーアの秘石(クリスタル)があると言う神殿が見えてきた。
だが、そこに……先客が既に来ていた。
あの、『女神殺し』を企む騎士・・ビヨンド・グレイブである。
グレイブにはわかっている。あの銀翼の最強の竜にまたがる者こそ、混沌の女神を守る為に召喚された存在、混沌の女神の騎士であることを。
意外と華奢な外見にグレイブは苦笑いをする。まさか、金のルシファーともあろう者が、あんな男を混沌の女神の騎士として召喚したことに。
レムも見慣れない男がそこにいるのを確認する。明らかに友好的な人物ではないことに気付いた。殺気が伝わってくる。この目の前にいるルーアを殺そうとしていることに気付いた。
なら、自分はその男と戦うのが己の使命だと思う。
ルーアは、私が守る。誓った約束を破るつもりなどない。どんなことになろうとも彼女を守る。それの障害となる者は排除する。
答えはすぐに出た。なら、彼に出来るのは自分が乗るこの銀翼の相棒の力を借りることだ。
レムはミカエルに念のために聞いてみた。
「どう思う? ミカエル先生? あの男、友好的な客に見えるか?」
「どこからどう見ても、あの男は敵だな。奴はルーアを狙っているぞ?」
「やはり、な。なら、手加減は無用だな。ここは一つ、ミカエル先生の実力を見せてもらうとするか」
「注意しろ。レム?奴は持っているぞ?お前と同じく秘石(クリスタル)を」
「何?」
「恐らく奴は時読みの一族の騎士。時読みの巫女に仕える騎士だ。ならば、秘石(クリスタル)を持っていても不思議なことではない」
「なるほど……とにかくあの男を倒すか?」
「覚悟は決めたか? レム?」
「別に今更、迷わない」
「いい答えだ!」
彼らはルーアを守るためにその揺るがぬ決意を胸に神殿へと降りる。レムの右手には既に銀色の剣が握られている。左腕には特殊な魔法金属製の盾を装備して。
彼らが初めて言葉を交わした。
これは彼がこのアルトカークスで行使する力、つまり彼を背中に乗せる天使・ミカエルを召喚する時に必要なアイテムだった。
今、彼らは、レムとルーアは空中でミカエルの背中に乗っている。ドラゴンに乗って感じる風を切る感覚も彼には新鮮だ。穏やかな風を感じて、そして改めてこの世界の美しさを感じる。
どこまでも続く大自然。緑豊かな森、青く輝く紺碧の海、黄金色の砂漠……所々には人間が住む街も見受けられる。
暖かな太陽の光も彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように、さんさんと輝く。
銀翼の最強の竜であるミカエルの背中に乗るレムはそこで、率直な疑問をした。
「所でミカエル先生。もしかして、君は我々の世界で言う所の『天使』なのか?」
「そうか。お前は知らないな。この世界での天使は。丁度いい。少し、解説してやる。よく聞くがいい」
このアルトカークスに於ける『天使』は竜の姿をしている。それは創造神である『金のルシファー』が、天使という存在を最も誇り高き存在であるドラゴンの姿に造ったからだった。
地球に於ける『天使』とアルトカークスに於ける『天使』は似ているようで、違う存在だ。地球では『天使』は至上の存在だが、それはアルトカークスでも同じだった。
だが、アルトカークスに於ける『天使』は目に見える形で姿を現す。それが、竜という存在だ。なので彼らはミカエルらのことを『竜の天使』と呼んでいる。
そして、それらの存在の対極に位置するのが、『堕天使』と呼ばれる存在だ。
その名の通り、堕ちた天使。人間によって汚された竜の天使である。
その最もたる例が、人間によって手を加えられた存在……つまり魔法強化をされた竜の存在だ。
通常、竜の天使に人間が手を加えることなどそうそう出来ない。
もとより自我が崩壊しているか、強力な意思の力によって、それらの制御をする。
だが、例外もなくはない。
もし、竜の堕天使を駆使する存在がいるとしたら、その者も秘石(クリスタル)を持っている可能性がある。
秘石(クリスタル)は強力な力を行使する際に必要な、その人間の心が形となった聖なる石。
ルーアにも、必ず、その秘石(クリスタル)があるはずだ。
彼女の秘石(クリスタル)はただし竜の天使を召喚するための秘石(クリスタル)ではないが。
秘石はその物に必要な力を与える力を持つ。だから、それぞれが全く違う力を持っていることは大いにあり得る話だ。
その者がアルトカークスで生きるための力だから。
彼らは今はルーアの秘石(クリスタル)を求めて、銀翼の最強の竜の案内で、とある神殿に向かっている。
空から見るアルトカークスはまさに絶景だった。穏やかな吹く風とその風に乗って香る、彼女の長い茶色の髪の毛の香り。
甘く美しい薔薇の香りのシャンプーの香りが、後ろに座るレムの嗅覚に訴える。なかなかいい趣味をしているなと彼は思う。艶やかに波打つ髪の毛が彼には素敵に思える。
秘石はそれぞれが全く違う形と力を持つ。
彼の秘石(クリスタル)は混沌の女神を守るための力となってその形となった。能力は竜の天使を呼び出す力と彼が携える銀色の剣の能力の解放。
故に彼の秘石『幻の紫水晶』が輝きを増す程、自然と彼の相棒である銀翼の最強の竜・ミカエルも進化する。今はミカエルは第一段階に当たる能力だが、それでもなおその力は驚異的な力だ。
では、どうすれば、彼の秘石が輝きを増すのか?
それは、ミカエルさえもわからない。至上の存在であるミカエルをもってしても、彼の秘石を輝かせる方法は判らないのだ。
こればかりは、その石を持っている彼自身が見つけ出すしかない。そうして、心の結晶であるクリスタルは光輝くのだから。
レムは己の胸に輝く秘石を見つめる。まるでそれは紫色の薔薇だ。地球では絶対咲かない色の薔薇。だが、そこからは確かに力のような存在も感じることが出来る。
やがて、ルーアの秘石(クリスタル)があると言う神殿が見えてきた。
だが、そこに……先客が既に来ていた。
あの、『女神殺し』を企む騎士・・ビヨンド・グレイブである。
グレイブにはわかっている。あの銀翼の最強の竜にまたがる者こそ、混沌の女神を守る為に召喚された存在、混沌の女神の騎士であることを。
意外と華奢な外見にグレイブは苦笑いをする。まさか、金のルシファーともあろう者が、あんな男を混沌の女神の騎士として召喚したことに。
レムも見慣れない男がそこにいるのを確認する。明らかに友好的な人物ではないことに気付いた。殺気が伝わってくる。この目の前にいるルーアを殺そうとしていることに気付いた。
なら、自分はその男と戦うのが己の使命だと思う。
ルーアは、私が守る。誓った約束を破るつもりなどない。どんなことになろうとも彼女を守る。それの障害となる者は排除する。
答えはすぐに出た。なら、彼に出来るのは自分が乗るこの銀翼の相棒の力を借りることだ。
レムはミカエルに念のために聞いてみた。
「どう思う? ミカエル先生? あの男、友好的な客に見えるか?」
「どこからどう見ても、あの男は敵だな。奴はルーアを狙っているぞ?」
「やはり、な。なら、手加減は無用だな。ここは一つ、ミカエル先生の実力を見せてもらうとするか」
「注意しろ。レム?奴は持っているぞ?お前と同じく秘石(クリスタル)を」
「何?」
「恐らく奴は時読みの一族の騎士。時読みの巫女に仕える騎士だ。ならば、秘石(クリスタル)を持っていても不思議なことではない」
「なるほど……とにかくあの男を倒すか?」
「覚悟は決めたか? レム?」
「別に今更、迷わない」
「いい答えだ!」
彼らはルーアを守るためにその揺るがぬ決意を胸に神殿へと降りる。レムの右手には既に銀色の剣が握られている。左腕には特殊な魔法金属製の盾を装備して。
彼らが初めて言葉を交わした。
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