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第1章 女神の騎士と女神殺し
1-7 天使の神殿
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そうして、彼らは朝食を摂った後、白亜の城から出て、そして長い冒険が始まる。
まずは目的地として、とある遺跡を目指すよう言われたレムとルーア。その遺跡に彼の秘石があるという。彼がこのアルトカークスで生き延びるためには絶対必要不可欠な力。それは何であるかはわからない。
だが、その力なくしてルーアは守れないという。一体、自分に、どういう力が手に入るのか彼は楽しみでもあった。その力でもってルーアを守ること。
その役回りはそんなに悪くはないと彼は思う。確かに自分には戦いの才能があるとは思えないが、だが、その力が手に入るならば、恐ろしく感じないはずだ。それに今更もう元には戻れないし、だが、彼は目の前の運命を呪うより、自分の愛娘によく似た彼女を守る運命に身を委ねてみることにした。
アルトカークスの平原を歩く一組の男女。レムとルーアの間にはまだお互いに遠慮している仲であった。出逢ってまだ二日目だ。まだお互いのことも教え合ってもいない。
レムは何の話題を話すか迷う。とりあえずは自分のことでも自己紹介がてらに話すか……そう思った。
「まだ、私のこと、話していないよね?」
「う、うん」
「私は元はと言えば異世界の人間だった。地球という世界で、戦争に参加していたんだ。でも、自分の国はもう敗北濃厚だった。既に勝負の行方は見えていた。だけど、私は別に戦争に勝ちたいわけでもなかった」
「何でですか?」
「私が選んだ仕事は、戦争の勝ち負けで決まるような仕事じゃなかった。私はその世界では、あえて言うなら”運命のはじまり”の人間だった。戦争の兵器を産みだした人間だった。実際に引き金を引いて殺したわけではないけど、私もその世界では人間の生命を奪っている男だった。とても許される所業ではないんだ」
「何かの研究をしていたのですか?」
「ああ。人を殺す研究をしていた。だからね、死んだ時、私は地獄に行くんだって思っていた。それがこうして第二の人生を歩んでいる。不思議だよね。私は転生とか信じてなかったけど、実際自分の身にそれが起きた。科学では説明できないことも起きるんだって思ったよ」
「そして、君に出会った。だけど、私は一度死んだ身だ。どんな運命でも受け入れようと思う。君を守ることが出来るなら」
「レムさんって気さくな方ですね」
「研究者だったけど、研究オタクってわけじゃない。それなりに社交術は磨いてきたさ。君はどう思っているのかな?」
「私……ですか?」
「まだ私が、君のお父さんに見える?」
「それとも……自分の恋人にするには、年齢が離れ過ぎていると思う?」
「ううん。そんなことないよ? それに、レムさんはレムさんって思える」
「私のお父さんは混沌の女神の騎士だったから、自分の過去は話したくないって言っていたの。でも、レムさんは自分の過去を話してくれた」
「私はきっと、元居た世界での罪の清算の為にここにいると思う。沢山の生命を奪ってきた。奪われたら元には戻らないものを沢山奪ってきた。私はこの世界で今度はそれを守るのが、私の使命だ」
「使命。重い言葉ですね」
「君もきっと使命に目覚める時が来る。でも、その時は、私が傍にいる。独りきりじゃないから大丈夫だよ?」
そう優しく彼は声をかけて、隣のルーアの肩を抱いた。そんなことを話していたら、その遺跡にたどり着いた。
そこは確かに遺跡だ。古く朽ち果てた神殿にも見える。床も朽ち果てたタイル張りの床で、周囲は滝のように水が流れ落ちている。その滝から太陽の光が差し込む。虹が見えた。思わずその虹を二人は見惚れる。
「綺麗な虹」
「そうだね。なかなか見られない物だね。中に入ってみよう」
「はい」
その朽ち果てた神殿は、彼がこの異世界に導かれた時のように、白い天使の羽みたいなものが舞い落ちている。それはまるでそこに天使がいるように見える。
中の神殿は明るい光が差し込む。だが、そこで彼を待っていたのは、彼にとっての最初の試練だった。
神殿にいる彼のこの世界での強力な力。
それは目の前に翼を羽ばたいて待っている銀色の鱗を持つ、最強のドラゴン……ミカエルだった。
銀翼の最強の竜は、そこで彼に試練を与えた。
こう、彼に告げて……。
「混沌の女神の騎士よ。我を倒したら、貴様に我の力を貸そう……! 貴様が持つべき、あの『幻の紫水晶』と共にな」
そうして、レムとルーアにとって初めての試練が始まった!
まずは目的地として、とある遺跡を目指すよう言われたレムとルーア。その遺跡に彼の秘石があるという。彼がこのアルトカークスで生き延びるためには絶対必要不可欠な力。それは何であるかはわからない。
だが、その力なくしてルーアは守れないという。一体、自分に、どういう力が手に入るのか彼は楽しみでもあった。その力でもってルーアを守ること。
その役回りはそんなに悪くはないと彼は思う。確かに自分には戦いの才能があるとは思えないが、だが、その力が手に入るならば、恐ろしく感じないはずだ。それに今更もう元には戻れないし、だが、彼は目の前の運命を呪うより、自分の愛娘によく似た彼女を守る運命に身を委ねてみることにした。
アルトカークスの平原を歩く一組の男女。レムとルーアの間にはまだお互いに遠慮している仲であった。出逢ってまだ二日目だ。まだお互いのことも教え合ってもいない。
レムは何の話題を話すか迷う。とりあえずは自分のことでも自己紹介がてらに話すか……そう思った。
「まだ、私のこと、話していないよね?」
「う、うん」
「私は元はと言えば異世界の人間だった。地球という世界で、戦争に参加していたんだ。でも、自分の国はもう敗北濃厚だった。既に勝負の行方は見えていた。だけど、私は別に戦争に勝ちたいわけでもなかった」
「何でですか?」
「私が選んだ仕事は、戦争の勝ち負けで決まるような仕事じゃなかった。私はその世界では、あえて言うなら”運命のはじまり”の人間だった。戦争の兵器を産みだした人間だった。実際に引き金を引いて殺したわけではないけど、私もその世界では人間の生命を奪っている男だった。とても許される所業ではないんだ」
「何かの研究をしていたのですか?」
「ああ。人を殺す研究をしていた。だからね、死んだ時、私は地獄に行くんだって思っていた。それがこうして第二の人生を歩んでいる。不思議だよね。私は転生とか信じてなかったけど、実際自分の身にそれが起きた。科学では説明できないことも起きるんだって思ったよ」
「そして、君に出会った。だけど、私は一度死んだ身だ。どんな運命でも受け入れようと思う。君を守ることが出来るなら」
「レムさんって気さくな方ですね」
「研究者だったけど、研究オタクってわけじゃない。それなりに社交術は磨いてきたさ。君はどう思っているのかな?」
「私……ですか?」
「まだ私が、君のお父さんに見える?」
「それとも……自分の恋人にするには、年齢が離れ過ぎていると思う?」
「ううん。そんなことないよ? それに、レムさんはレムさんって思える」
「私のお父さんは混沌の女神の騎士だったから、自分の過去は話したくないって言っていたの。でも、レムさんは自分の過去を話してくれた」
「私はきっと、元居た世界での罪の清算の為にここにいると思う。沢山の生命を奪ってきた。奪われたら元には戻らないものを沢山奪ってきた。私はこの世界で今度はそれを守るのが、私の使命だ」
「使命。重い言葉ですね」
「君もきっと使命に目覚める時が来る。でも、その時は、私が傍にいる。独りきりじゃないから大丈夫だよ?」
そう優しく彼は声をかけて、隣のルーアの肩を抱いた。そんなことを話していたら、その遺跡にたどり着いた。
そこは確かに遺跡だ。古く朽ち果てた神殿にも見える。床も朽ち果てたタイル張りの床で、周囲は滝のように水が流れ落ちている。その滝から太陽の光が差し込む。虹が見えた。思わずその虹を二人は見惚れる。
「綺麗な虹」
「そうだね。なかなか見られない物だね。中に入ってみよう」
「はい」
その朽ち果てた神殿は、彼がこの異世界に導かれた時のように、白い天使の羽みたいなものが舞い落ちている。それはまるでそこに天使がいるように見える。
中の神殿は明るい光が差し込む。だが、そこで彼を待っていたのは、彼にとっての最初の試練だった。
神殿にいる彼のこの世界での強力な力。
それは目の前に翼を羽ばたいて待っている銀色の鱗を持つ、最強のドラゴン……ミカエルだった。
銀翼の最強の竜は、そこで彼に試練を与えた。
こう、彼に告げて……。
「混沌の女神の騎士よ。我を倒したら、貴様に我の力を貸そう……! 貴様が持つべき、あの『幻の紫水晶』と共にな」
そうして、レムとルーアにとって初めての試練が始まった!
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