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第1章 女神の騎士と女神殺し
1-3 異世界アルトカークス
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私はその異世界アルトカークスの世界を初めて垣間見た。はずだが、何だか初めて見たという感じがしなかった。
不思議と昔から憶えているような気がする。初めて見た世界のはずなのに……。どうして懐かしく感じるのだろう?
それにしても一度死を迎えて、まさか転生をするとは思ってなかった。
輪廻転生とかあまり信じていない私に起こった出来事。不思議な気分だ。確かに地球ではそういう転生とかはある程度は信じられているものだ。宗教にもそれに似た考えもある。
だが、私には関係ないものだと思った。それがこうして今、異世界アルトカークスで第二の人生を歩みだそうとしている。
神殿から出た私は記憶にないはずの世界を、まるで知っているかのように道を歩く。
おぼろげな記憶を頼りに、城を目指す。本当に知らないはずの世界なのに……まるで前世の自分がそれを知っているかのように迷うこともなく歩く。
その世界は景色だけ見れば確かに平和な世界だ。だが、どこかやはり歪みが見える。物質と混沌の境界線が曖昧になって、空間がねじ曲がっているような感覚。
そして、未知の女性のことも気になる。ルーア姫とは一体どういう人物だろうか?
若い女性だろうか? 私と気が合うのだろうか?
若い女性のことで私は一人娘を想う。娘のジェニファー。彼女を置いて元の世界で逝くはずだった、私の運命。
それがまだ終わりを告げないで続いている。だが、私のような妻子持ちが他の女性と結ばれていいものかとも考える。
ここに導かれた以上はそれをするしかないだろうが、まだ抵抗がある。私に妻を裏切れと言うのか? 永遠の愛を誓ったあの人を裏切って、新しい女性と結ばれろというのか?
それに自分に与えられた使命。
混沌の女神の騎士になること。”騎士”ね。私はその騎士という響きに苦笑する。そんなファンタジーみたいな役割に私が務まるのかも疑問だ。
それにパラレルワールドという並行世界であるというのも何だか変な気持ちになる。
今までそういう非科学的なことを一切信じないで生きてきた自分だが、どうやら世界は化学では説明できないことも起こり得るらしい。
そうやって思ったら、気が楽になってきた。まあ、とりあえずはあの目の前に映る城に入ってみよう。
目の前の城は白亜の城だ。
大きい門には見張りの兵士が二人。普通の鎧甲冑に身を包んだ男性兵士だった。
何気なく入ろうと思ったが、呼び止められる。
「何用だ? ここはルーア姫が住まわれる城。無用な者の出入りは禁止となっている」
「そのルーア姫に用があってきました」
「何者だ?」
「混沌の女神の騎士……と言えば分かるかな?」
「何? 混沌の女神の騎士……だと?」
「確か今日、金のルシファー様のお告げでその混沌の女神の騎士が来ると予言されなかったか?」
「運命の書に確かそう書いてあった。この騎士が……あの混沌の女神の騎士か」
「とんだ無礼をしました。あなたがあの混沌の女神の騎士様ですか?」
「ええ。通してくれるかな?」
「どうぞ。お入りください」
私はその白亜の城に入った。
そこはまさに王道ファンタジーの世界の城だ。床は綺麗な大理石の床。窓からは優しい太陽の光が差し込み、カーテンはビロードの赤いカーテン。風に揺れて独特の気高い赤を強調している。
今は昼間で様々な人間がその城を行き来している。メイドや兵士などが中心。彼らは見慣れない騎士である私を興味深そうに見つめる。
ルーア姫がいるのは、この城の最上階だ。私のおぼろげな記憶はそう言っている。
階段を上がる。昼間の太陽の光が差し込む幻想的な階段。床には赤い絨毯が敷かれ、まるでどこかの大聖堂みたいな荘厳な雰囲気だ。天井は高く、きらびやかな装飾がされている。
風に揺れるカーテンは階段は白いカーテンだった。窓の格子にも細かな装飾がされており、非常に美しい。こんな世界、あの地球にはないな。全てが機械で埋めつくされていたあの世界に身を置いていた私には物珍しく映る。
二階から三階へとそのまま階段を上がる。空気はとても澄んでいる。心地よい空気が流れている。油と機械の匂い以外で嗅いだ空気は久しぶりだ。
三階が最上階で、そこはまっすぐに王座の間へと続いている。明らかに景観が違う。天井のシャンデリアも豪華で、カーテンもビロードの赤いカーテンに戻った。
私が身に付けている鎧の長靴の音が規則正しく響く。左腰の黒い絹のパラオが脚に合わせてなびいて揺れる。
目の前には大きな華美な装飾が施された扉がある。両隣には鎧甲冑の兵士がいる。槍を片手に立っている。
扉を目の前にして、鎧甲冑の兵士は、私の入室を許可した。
「どうぞ。お入りください」
不思議と昔から憶えているような気がする。初めて見た世界のはずなのに……。どうして懐かしく感じるのだろう?
それにしても一度死を迎えて、まさか転生をするとは思ってなかった。
輪廻転生とかあまり信じていない私に起こった出来事。不思議な気分だ。確かに地球ではそういう転生とかはある程度は信じられているものだ。宗教にもそれに似た考えもある。
だが、私には関係ないものだと思った。それがこうして今、異世界アルトカークスで第二の人生を歩みだそうとしている。
神殿から出た私は記憶にないはずの世界を、まるで知っているかのように道を歩く。
おぼろげな記憶を頼りに、城を目指す。本当に知らないはずの世界なのに……まるで前世の自分がそれを知っているかのように迷うこともなく歩く。
その世界は景色だけ見れば確かに平和な世界だ。だが、どこかやはり歪みが見える。物質と混沌の境界線が曖昧になって、空間がねじ曲がっているような感覚。
そして、未知の女性のことも気になる。ルーア姫とは一体どういう人物だろうか?
若い女性だろうか? 私と気が合うのだろうか?
若い女性のことで私は一人娘を想う。娘のジェニファー。彼女を置いて元の世界で逝くはずだった、私の運命。
それがまだ終わりを告げないで続いている。だが、私のような妻子持ちが他の女性と結ばれていいものかとも考える。
ここに導かれた以上はそれをするしかないだろうが、まだ抵抗がある。私に妻を裏切れと言うのか? 永遠の愛を誓ったあの人を裏切って、新しい女性と結ばれろというのか?
それに自分に与えられた使命。
混沌の女神の騎士になること。”騎士”ね。私はその騎士という響きに苦笑する。そんなファンタジーみたいな役割に私が務まるのかも疑問だ。
それにパラレルワールドという並行世界であるというのも何だか変な気持ちになる。
今までそういう非科学的なことを一切信じないで生きてきた自分だが、どうやら世界は化学では説明できないことも起こり得るらしい。
そうやって思ったら、気が楽になってきた。まあ、とりあえずはあの目の前に映る城に入ってみよう。
目の前の城は白亜の城だ。
大きい門には見張りの兵士が二人。普通の鎧甲冑に身を包んだ男性兵士だった。
何気なく入ろうと思ったが、呼び止められる。
「何用だ? ここはルーア姫が住まわれる城。無用な者の出入りは禁止となっている」
「そのルーア姫に用があってきました」
「何者だ?」
「混沌の女神の騎士……と言えば分かるかな?」
「何? 混沌の女神の騎士……だと?」
「確か今日、金のルシファー様のお告げでその混沌の女神の騎士が来ると予言されなかったか?」
「運命の書に確かそう書いてあった。この騎士が……あの混沌の女神の騎士か」
「とんだ無礼をしました。あなたがあの混沌の女神の騎士様ですか?」
「ええ。通してくれるかな?」
「どうぞ。お入りください」
私はその白亜の城に入った。
そこはまさに王道ファンタジーの世界の城だ。床は綺麗な大理石の床。窓からは優しい太陽の光が差し込み、カーテンはビロードの赤いカーテン。風に揺れて独特の気高い赤を強調している。
今は昼間で様々な人間がその城を行き来している。メイドや兵士などが中心。彼らは見慣れない騎士である私を興味深そうに見つめる。
ルーア姫がいるのは、この城の最上階だ。私のおぼろげな記憶はそう言っている。
階段を上がる。昼間の太陽の光が差し込む幻想的な階段。床には赤い絨毯が敷かれ、まるでどこかの大聖堂みたいな荘厳な雰囲気だ。天井は高く、きらびやかな装飾がされている。
風に揺れるカーテンは階段は白いカーテンだった。窓の格子にも細かな装飾がされており、非常に美しい。こんな世界、あの地球にはないな。全てが機械で埋めつくされていたあの世界に身を置いていた私には物珍しく映る。
二階から三階へとそのまま階段を上がる。空気はとても澄んでいる。心地よい空気が流れている。油と機械の匂い以外で嗅いだ空気は久しぶりだ。
三階が最上階で、そこはまっすぐに王座の間へと続いている。明らかに景観が違う。天井のシャンデリアも豪華で、カーテンもビロードの赤いカーテンに戻った。
私が身に付けている鎧の長靴の音が規則正しく響く。左腰の黒い絹のパラオが脚に合わせてなびいて揺れる。
目の前には大きな華美な装飾が施された扉がある。両隣には鎧甲冑の兵士がいる。槍を片手に立っている。
扉を目の前にして、鎧甲冑の兵士は、私の入室を許可した。
「どうぞ。お入りください」
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