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18話 宮廷魔導師の提案
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その場にいる男性重鎮たちの視線が注がれる中、宮廷魔導師は女性ならではの作戦を話した。
「エミールを諜報部員として利用する…?」
「残酷な言い方をするとそうね」
「言ってみろ。アネット。君の作戦を聞こう」
エリック皇帝は黄金色の瞳を真っ直ぐにアネットに向ける。
他の男性陣もアネットを見つめた。
それにも怯まないで、アネットが出した提案はこれだった。
「敵のアトランティカ帝国はエミール君を利用してあの『浄化の泉』を捜させようとしています。なら…それを逆手に取り、こちらから彼を派遣してアトランティカの動向を探るのです」
「なるほど。彼を女帝の夜伽に仕立て、こちらは諜報部員として使う訳か」
「しかし…エミールとやらはただの美少年だろう? 普通の一般人にそんな諜報部員のような仕事は出来るのかな?」
「それだよ。プロの工作員でもかなり骨が折れる部類の仕事だ。身分を偽り、しかも女帝の懐に飛び込むのだ。バレたらお終いだ」
「アネット。何故、エミールでなければならないのだ? 他の美しい諜報部員を使えばいい仕事を何故、エミールに任せる?」
「イザとなれば『浄化の泉』の場所を教える事が出来ます。話題には困らないでしょう。それに…仮にもエミール君はエリック陛下の夜伽を務められる人物。なら…あの女帝もエミール君の美しさを見初め、寵愛をいただけるかも知れないです」
「こちらはどうするつもりだ? アネット? 『浄化の泉』の場所を知れば奴らは必ず兵を送るぞ。最悪の場合、村が壊滅してしまう可能性も考慮しなくて良いのか?」
「それは考慮するわ。その前に我々が『浄化を泉』を確保すればいいでしょう? 周到な罠を用意すればアトランティカ帝国の女帝すら、アッサリ殺す事もよしんば出来るわ」
「──まさに、女性ならではの作戦だね」
「今回の相手は女帝だ。我々、男性では通じる作戦でも女帝には通じない作戦もある。なるほど──敢えて敵の思惑通りにするのか。そして罠を仕掛ける」
しかし。この作戦を決行するにはまずエミール少年の意志が絶対必要だ。こちらの帝国の諜報部員として彼を連れてきた訳ではない。あくまでも夜伽として連れてきた。
まあ──契約書など交わしてなどいないので口約束でもいけそうだが。
しかし、彼も反発はするだろう。
下手をすれば殺される心配もある危険な任務だ。
しかも女帝の夜伽と男の皇帝の夜伽は性質が違う。女帝とならばまずは無理矢理にでも性行為は行われるだろう。女帝の精力にも寄るがもしかしたら延々にされる可能性も無い訳でもない。
『浄化の泉』についても、手を打たないとならないだろう。
つまるところ、これからパトリス帝国は色々な準備に追われる事は明白だった。だが重鎮達はむしろ今までが暇過ぎたのである。戦乱の時代ならばまずこういう事態は日常茶飯事と考えた方がいいだろう。
「いい感じに忙しくなりそうだ。私はアネットの作戦に同意するよ。どちらにしろ、対策は立てなければならない話だった」
宰相エリオットはこのアネットの作戦を全面的に支持する様子だ。
「──そうだな。私が首都パトリスに赴任してきた時に伝えられた。いずれにせよ大きな戦乱が来る。その時、君の力は必要だと。その時が来た訳だ。私も異論は無いよ」
大臣オグスも同意した。彼の黒い瞳は活気に満ちている。
「こちらの軍備増強もやらないとですな。兵士達が危うく平和ボケするところだったよ」
グリンウッド将軍も同意した。
後はエリック陛下の返事のみだ。
エリック皇帝はみなまで言うなという感じで信念がこもった黄金色の瞳を皆に向けた。
「エミール次第だが、今回は作戦は私も同意した。しかし、エミールが断った際は別の作戦を用意する事を念頭に置いてくれ。いいな?」
「了解です。出来る限り対策は立てましょう」
そうして、緊急会議は解散となった。
後はエミールがこの作戦に同意してくれるか、どうか。
同意しなかったら別の作戦を立てるしかない。
この問題はとてもデリケートな話になるので、エリック自ら、この話はするという方向で話は進められる事になる。
宰相エリオットは、そこで、もしもエミールが断った際の替え玉の美しい諜報部員を用意する裏工作をする事になる。
エミールが断るか、危険承知で引き受けるか。パトリス帝国には今、二つの道が示されている。
「エミールを諜報部員として利用する…?」
「残酷な言い方をするとそうね」
「言ってみろ。アネット。君の作戦を聞こう」
エリック皇帝は黄金色の瞳を真っ直ぐにアネットに向ける。
他の男性陣もアネットを見つめた。
それにも怯まないで、アネットが出した提案はこれだった。
「敵のアトランティカ帝国はエミール君を利用してあの『浄化の泉』を捜させようとしています。なら…それを逆手に取り、こちらから彼を派遣してアトランティカの動向を探るのです」
「なるほど。彼を女帝の夜伽に仕立て、こちらは諜報部員として使う訳か」
「しかし…エミールとやらはただの美少年だろう? 普通の一般人にそんな諜報部員のような仕事は出来るのかな?」
「それだよ。プロの工作員でもかなり骨が折れる部類の仕事だ。身分を偽り、しかも女帝の懐に飛び込むのだ。バレたらお終いだ」
「アネット。何故、エミールでなければならないのだ? 他の美しい諜報部員を使えばいい仕事を何故、エミールに任せる?」
「イザとなれば『浄化の泉』の場所を教える事が出来ます。話題には困らないでしょう。それに…仮にもエミール君はエリック陛下の夜伽を務められる人物。なら…あの女帝もエミール君の美しさを見初め、寵愛をいただけるかも知れないです」
「こちらはどうするつもりだ? アネット? 『浄化の泉』の場所を知れば奴らは必ず兵を送るぞ。最悪の場合、村が壊滅してしまう可能性も考慮しなくて良いのか?」
「それは考慮するわ。その前に我々が『浄化を泉』を確保すればいいでしょう? 周到な罠を用意すればアトランティカ帝国の女帝すら、アッサリ殺す事もよしんば出来るわ」
「──まさに、女性ならではの作戦だね」
「今回の相手は女帝だ。我々、男性では通じる作戦でも女帝には通じない作戦もある。なるほど──敢えて敵の思惑通りにするのか。そして罠を仕掛ける」
しかし。この作戦を決行するにはまずエミール少年の意志が絶対必要だ。こちらの帝国の諜報部員として彼を連れてきた訳ではない。あくまでも夜伽として連れてきた。
まあ──契約書など交わしてなどいないので口約束でもいけそうだが。
しかし、彼も反発はするだろう。
下手をすれば殺される心配もある危険な任務だ。
しかも女帝の夜伽と男の皇帝の夜伽は性質が違う。女帝とならばまずは無理矢理にでも性行為は行われるだろう。女帝の精力にも寄るがもしかしたら延々にされる可能性も無い訳でもない。
『浄化の泉』についても、手を打たないとならないだろう。
つまるところ、これからパトリス帝国は色々な準備に追われる事は明白だった。だが重鎮達はむしろ今までが暇過ぎたのである。戦乱の時代ならばまずこういう事態は日常茶飯事と考えた方がいいだろう。
「いい感じに忙しくなりそうだ。私はアネットの作戦に同意するよ。どちらにしろ、対策は立てなければならない話だった」
宰相エリオットはこのアネットの作戦を全面的に支持する様子だ。
「──そうだな。私が首都パトリスに赴任してきた時に伝えられた。いずれにせよ大きな戦乱が来る。その時、君の力は必要だと。その時が来た訳だ。私も異論は無いよ」
大臣オグスも同意した。彼の黒い瞳は活気に満ちている。
「こちらの軍備増強もやらないとですな。兵士達が危うく平和ボケするところだったよ」
グリンウッド将軍も同意した。
後はエリック陛下の返事のみだ。
エリック皇帝はみなまで言うなという感じで信念がこもった黄金色の瞳を皆に向けた。
「エミール次第だが、今回は作戦は私も同意した。しかし、エミールが断った際は別の作戦を用意する事を念頭に置いてくれ。いいな?」
「了解です。出来る限り対策は立てましょう」
そうして、緊急会議は解散となった。
後はエミールがこの作戦に同意してくれるか、どうか。
同意しなかったら別の作戦を立てるしかない。
この問題はとてもデリケートな話になるので、エリック自ら、この話はするという方向で話は進められる事になる。
宰相エリオットは、そこで、もしもエミールが断った際の替え玉の美しい諜報部員を用意する裏工作をする事になる。
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