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番外編
落ち着くところ
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※スピンオフとなる前話「あいのす」の、「一方その頃~」的な短いお話です。
スピンオフ部分は読み飛ばしていても問題ありません。
当社比でろあま。
ルイ視点で、たまには甘やかしたいお話です。
◆
ハルはいつも優しくてかっこいい。
気が付けばいつだって僕はハルに甘やかされている。
ハルに触りたくてちょっかいを出すのはいつも僕のほうだし、そういうところがダメなんだろうけど。
それはそれで幸せではあるけれど、僕だってハルのことを甘やかしたいし、もっと甘えてほしいのに。
直接言葉で伝えたところで「俺はいつも、めちゃくちゃ甘やかされてるよ」なんて返される。
確かに僕はいつだってハルには敵わないけどそうじゃない、そういうことじゃないんだ。
例えば、そうだな…………
「ルイ、おかえり!」
そう、例えばこんなふうに僕の帰りを待っててくれて、顔を見たら駆け寄ってきてくれて、
「会いたかった…………!!」
そう言ってぎゅっと抱きついてきてくれたりとか…………
って、
え?これ本物??
ハル、どうしちゃったの??
「ただいま、ハル。僕も会いたかったけど……何かあったの?」
「ん…………」
僕に甘えてくるハルは確かに可愛いけれど、明らかに様子が普通じゃない。
宥めるようにして部屋の中に誘導しながらも、「お前とくっついてると落ち着く」なんて離れようとしないハルに僕の理性が試されている。
***
「知らない男が纏ってる空気がなんか妙でさ……近付いたらヤバいって思ったときにはもう心臓を掴まれてたような感覚で……あれが、Ωの匂いなのかな」
「それって…………」
「βみたいだったけど。図書館でさ、バース性に関する資料を漁ってたから。そいつが、お前が言ってたやつかな」
「ああ……そうかもね………」
そうだ、きっとあのΩ少年……ミカくんのお相手だろう。
勉強熱心なのはやるじゃないかと見直したけど、ちょっと根回しが足りなかったかな。
でもミカくんもお兄ちゃんには言いたくないって感じだったから、そこは今後の課題だな。
何がなんて野暮なこと言うつもりもないけれど、ハルが感じ取れるほど纏っていたなら彼らなりにうまくいっているのだろうから。
「今まで他人のフェロモンなんてほとんど感じたこともなかったのに、あれは別物みたいだった。自分の身体が自分じゃないみたいで、怖かった……」
「そっか……助けられなくてごめんね」
ハルは否定するように首を横に振っている。
「俺は……お前だけでよかったのに、運命なんて信じてなかったのに、引き寄せられてしまったことがすごい悔しい」
「……大丈夫だから、こっち見て」
あのハルでもそうなってしまうなんて、何もできない自分のほうがもっと悔しい。
だけど、それ以上に。
「それにね、彼の匂いを怖いと感じてくれて、ハルが僕を選んでくれて、こうして僕を待ってて頼ってくれて…………僕は本当に嬉しくて幸せだよ」
きっとひとりで不安だったに違いない。
だけどハルは僕のところに戻ってきてくれた。
嬉しい、なんて言葉ではとても足りないし、なんて表現すればわからない。
「こんな、俺でもいい……?」
「そんなハルが大好きだよ」
「お前も……俺を選んでくれる?」
「当たり前だよ!! 僕にはハルだけだよ!」
「ありがと……ルイ、好き」
安心したような、嬉しそうな表情でくっついてくるハルがめちゃくちゃ可愛い。
猫を飼ったことはないけれど、きっとこんな感じなのかもしれないな……
ねえ、それってもしかしてキス待ち顔ってやつじゃない??
可愛くてもったいなくてずっと見ていたいけれど、もっともっと可愛がって愛してあげたい。
僕の理性が限界に近いのを悟られないように、そっと唇を重ねて抱きしめる。
「ハル、愛してる。もっと僕のことしか考えられないようにしてあげるから、僕に任せて……愛させて」
「ん……そうして…………」
そう言って素直に身を預けてきたハルの色気はだだ漏れ過ぎて、本当によくぞ無事に帰ってきてくれたなと心臓に悪い。
できれば閉じ込めて外になんて出したくないけれど、これからはまたあの頃みたいに毎日迎えに行けばいい。
可愛いハル、また僕を選んでくれてありがとう。
だから僕も、ハルしかいないって何度でもわからせてあげる。
この破壊力にいつまで理性が保つかは自信がないけれど、めいっぱい甘やかして優しくしてあげるから。
だからこれからも、僕だけ見てて、もっと甘えてくれていいからね。
◆
ありがとうございました。
ようやくルイに甘やかさせてあげることができました。
甲斐甲斐しく甘やかした結果、たぶんハルは1週間もせずに立ち直りますが、
身を預ける心地良さを実感したのと「こうやって甘えれば喜ぶのか」と学習したので、今後もたまに甘えてあげるはず。
(つまり結果的にやっぱりルイを甘やかしているとも言う)
ちなみに作中で、執着や独占欲が強いはずのルイが嫉妬をしている描写がほとんどないことについて。
もちろん(?)本来は嫉妬深いのですが、マーキングやマウンティングがつよつよなので、露骨に嫉妬する状況は少ないです。
ただハルが構ってくれなくて拗ねるとかは割りとある。
今回は誰も悪くないし、ハルがちゃんと戻ってきてくれたので、ここぞというときには決める子です。
忘れがちですが、設定的にはスパダリのはずなので……
スピンオフ部分は読み飛ばしていても問題ありません。
当社比でろあま。
ルイ視点で、たまには甘やかしたいお話です。
◆
ハルはいつも優しくてかっこいい。
気が付けばいつだって僕はハルに甘やかされている。
ハルに触りたくてちょっかいを出すのはいつも僕のほうだし、そういうところがダメなんだろうけど。
それはそれで幸せではあるけれど、僕だってハルのことを甘やかしたいし、もっと甘えてほしいのに。
直接言葉で伝えたところで「俺はいつも、めちゃくちゃ甘やかされてるよ」なんて返される。
確かに僕はいつだってハルには敵わないけどそうじゃない、そういうことじゃないんだ。
例えば、そうだな…………
「ルイ、おかえり!」
そう、例えばこんなふうに僕の帰りを待っててくれて、顔を見たら駆け寄ってきてくれて、
「会いたかった…………!!」
そう言ってぎゅっと抱きついてきてくれたりとか…………
って、
え?これ本物??
ハル、どうしちゃったの??
「ただいま、ハル。僕も会いたかったけど……何かあったの?」
「ん…………」
僕に甘えてくるハルは確かに可愛いけれど、明らかに様子が普通じゃない。
宥めるようにして部屋の中に誘導しながらも、「お前とくっついてると落ち着く」なんて離れようとしないハルに僕の理性が試されている。
***
「知らない男が纏ってる空気がなんか妙でさ……近付いたらヤバいって思ったときにはもう心臓を掴まれてたような感覚で……あれが、Ωの匂いなのかな」
「それって…………」
「βみたいだったけど。図書館でさ、バース性に関する資料を漁ってたから。そいつが、お前が言ってたやつかな」
「ああ……そうかもね………」
そうだ、きっとあのΩ少年……ミカくんのお相手だろう。
勉強熱心なのはやるじゃないかと見直したけど、ちょっと根回しが足りなかったかな。
でもミカくんもお兄ちゃんには言いたくないって感じだったから、そこは今後の課題だな。
何がなんて野暮なこと言うつもりもないけれど、ハルが感じ取れるほど纏っていたなら彼らなりにうまくいっているのだろうから。
「今まで他人のフェロモンなんてほとんど感じたこともなかったのに、あれは別物みたいだった。自分の身体が自分じゃないみたいで、怖かった……」
「そっか……助けられなくてごめんね」
ハルは否定するように首を横に振っている。
「俺は……お前だけでよかったのに、運命なんて信じてなかったのに、引き寄せられてしまったことがすごい悔しい」
「……大丈夫だから、こっち見て」
あのハルでもそうなってしまうなんて、何もできない自分のほうがもっと悔しい。
だけど、それ以上に。
「それにね、彼の匂いを怖いと感じてくれて、ハルが僕を選んでくれて、こうして僕を待ってて頼ってくれて…………僕は本当に嬉しくて幸せだよ」
きっとひとりで不安だったに違いない。
だけどハルは僕のところに戻ってきてくれた。
嬉しい、なんて言葉ではとても足りないし、なんて表現すればわからない。
「こんな、俺でもいい……?」
「そんなハルが大好きだよ」
「お前も……俺を選んでくれる?」
「当たり前だよ!! 僕にはハルだけだよ!」
「ありがと……ルイ、好き」
安心したような、嬉しそうな表情でくっついてくるハルがめちゃくちゃ可愛い。
猫を飼ったことはないけれど、きっとこんな感じなのかもしれないな……
ねえ、それってもしかしてキス待ち顔ってやつじゃない??
可愛くてもったいなくてずっと見ていたいけれど、もっともっと可愛がって愛してあげたい。
僕の理性が限界に近いのを悟られないように、そっと唇を重ねて抱きしめる。
「ハル、愛してる。もっと僕のことしか考えられないようにしてあげるから、僕に任せて……愛させて」
「ん……そうして…………」
そう言って素直に身を預けてきたハルの色気はだだ漏れ過ぎて、本当によくぞ無事に帰ってきてくれたなと心臓に悪い。
できれば閉じ込めて外になんて出したくないけれど、これからはまたあの頃みたいに毎日迎えに行けばいい。
可愛いハル、また僕を選んでくれてありがとう。
だから僕も、ハルしかいないって何度でもわからせてあげる。
この破壊力にいつまで理性が保つかは自信がないけれど、めいっぱい甘やかして優しくしてあげるから。
だからこれからも、僕だけ見てて、もっと甘えてくれていいからね。
◆
ありがとうございました。
ようやくルイに甘やかさせてあげることができました。
甲斐甲斐しく甘やかした結果、たぶんハルは1週間もせずに立ち直りますが、
身を預ける心地良さを実感したのと「こうやって甘えれば喜ぶのか」と学習したので、今後もたまに甘えてあげるはず。
(つまり結果的にやっぱりルイを甘やかしているとも言う)
ちなみに作中で、執着や独占欲が強いはずのルイが嫉妬をしている描写がほとんどないことについて。
もちろん(?)本来は嫉妬深いのですが、マーキングやマウンティングがつよつよなので、露骨に嫉妬する状況は少ないです。
ただハルが構ってくれなくて拗ねるとかは割りとある。
今回は誰も悪くないし、ハルがちゃんと戻ってきてくれたので、ここぞというときには決める子です。
忘れがちですが、設定的にはスパダリのはずなので……
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