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本編
2.執事になった少年
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とあるDom夫妻の家庭に生まれた少年ルカは、ハニーブロンドの髪と瞳が人目を引く美少女のような少年だった。
しかし彼は―当然本人の知るところではないが―Domである主人がSubの女性執事を孕ませた子であると噂されていた。
そんな腫れ物のような存在であったルカが、あるときSubだと診断されるや否や施設に「保護」されたことは、ある意味自然な流れと言えた。
そして周囲のだれも――ひと目見たら忘れないほどの美少年が突然姿を見せなくなったというのに、その事実について掘り下げようとはしなかった。
***
「次、Come」
「………………」
「よし、Kneel、Stay」
Domの管理者から高圧的かつ事務的にコマンドを放たれて、まだSubとしての自認すら不十分な少年に抵抗の手段などあるはずもない。
何が起こったのかを理解する間も与えられないままカクンと膝を付く。
身体じゅうが命令に縛られて、震えが止まらない。
複数の人の気配が近付いてきて身体を調べられている様子を感じながら、声を出すこともできないまま意識が遠くなっていく。
こうして施設にやってきたルカにも例に漏れず、早々にチップの埋め込みが施されていた。
そして数年間の英才教育を受けたのちに、優秀な執事候補として売り出されることとなる。
***
まだ美少年の面影を残した彼に目をつけたのは、裕福なDomの中年男だった。
「こんな可愛い子に出会えるなんて、やっぱり早めに買い替えに来て正解だ」
「さすがお客様はお目が高い、いつもありがとうございます」
「前のはすぐに大きくなってガッカリしたけど、今度はどうかな」
「ええ……そう仰るかと思いまして……新しいオプションで、成長を遅らせるホルモン剤を仕込むこともできますがいかがでしょう?」
「ああ、いいね。じゃあそのオプション付きで、この子をちょうだい」
まるで消耗品のように扱われているにもかかわらず、自我の制御を受けて感情を持たないSubは何も感じることはない。
ましてや過去の記憶も、自分の名前すらもわからない。
「果実のように美しい、お前はモモだ」
主人にそう名付けられたルカは、モモとして、彼の執事として、何不自由なく生きていく。
「ああ、僕の可愛いモモ…………もっと可愛がってあげるから、こっちへおいで」
執事としてのSubの仕事は、主人に仕えて忠実に命令を遂行すること、それに尽きる。
そこに性的な奉仕も含まれるかどうかは主人との関係性によるところではあるのだが……モモの場合は当然のように求められた。
どんな要求にも忠実に応えるモモに夢中な主人は、自分の支配下でモモが乱れることに興奮し続けた。
それでも彼を組み敷く手付きは優しくて、傷つけるようなことも、ひどく扱われることもなかった。
――――少なくとも彼が「美少年」の姿である限りは。
「今度のは期待してたのに、そうでもなかったな」
無理矢理成長を遅らせているのだから、あくまで彼ら人間の身体には限度というものがある。
モモが既に成人男性であることを認めざるを得ないほどの身体の成長が感じられるようになると、やがて主人は彼に対する興味をなくし、態度は豹変した。
強引に無茶な命令をきかせたり、愛のない欲求のはけ口として使われたりもした。
当然、碌に「メンテナンス」がされるはずもなく、やがてモモは壊れるべくして壊れていった。
そして成金Dom特有の理不尽な言い分で、モモという名をつけられたSubは施設に返品された。
しかし彼は―当然本人の知るところではないが―Domである主人がSubの女性執事を孕ませた子であると噂されていた。
そんな腫れ物のような存在であったルカが、あるときSubだと診断されるや否や施設に「保護」されたことは、ある意味自然な流れと言えた。
そして周囲のだれも――ひと目見たら忘れないほどの美少年が突然姿を見せなくなったというのに、その事実について掘り下げようとはしなかった。
***
「次、Come」
「………………」
「よし、Kneel、Stay」
Domの管理者から高圧的かつ事務的にコマンドを放たれて、まだSubとしての自認すら不十分な少年に抵抗の手段などあるはずもない。
何が起こったのかを理解する間も与えられないままカクンと膝を付く。
身体じゅうが命令に縛られて、震えが止まらない。
複数の人の気配が近付いてきて身体を調べられている様子を感じながら、声を出すこともできないまま意識が遠くなっていく。
こうして施設にやってきたルカにも例に漏れず、早々にチップの埋め込みが施されていた。
そして数年間の英才教育を受けたのちに、優秀な執事候補として売り出されることとなる。
***
まだ美少年の面影を残した彼に目をつけたのは、裕福なDomの中年男だった。
「こんな可愛い子に出会えるなんて、やっぱり早めに買い替えに来て正解だ」
「さすがお客様はお目が高い、いつもありがとうございます」
「前のはすぐに大きくなってガッカリしたけど、今度はどうかな」
「ええ……そう仰るかと思いまして……新しいオプションで、成長を遅らせるホルモン剤を仕込むこともできますがいかがでしょう?」
「ああ、いいね。じゃあそのオプション付きで、この子をちょうだい」
まるで消耗品のように扱われているにもかかわらず、自我の制御を受けて感情を持たないSubは何も感じることはない。
ましてや過去の記憶も、自分の名前すらもわからない。
「果実のように美しい、お前はモモだ」
主人にそう名付けられたルカは、モモとして、彼の執事として、何不自由なく生きていく。
「ああ、僕の可愛いモモ…………もっと可愛がってあげるから、こっちへおいで」
執事としてのSubの仕事は、主人に仕えて忠実に命令を遂行すること、それに尽きる。
そこに性的な奉仕も含まれるかどうかは主人との関係性によるところではあるのだが……モモの場合は当然のように求められた。
どんな要求にも忠実に応えるモモに夢中な主人は、自分の支配下でモモが乱れることに興奮し続けた。
それでも彼を組み敷く手付きは優しくて、傷つけるようなことも、ひどく扱われることもなかった。
――――少なくとも彼が「美少年」の姿である限りは。
「今度のは期待してたのに、そうでもなかったな」
無理矢理成長を遅らせているのだから、あくまで彼ら人間の身体には限度というものがある。
モモが既に成人男性であることを認めざるを得ないほどの身体の成長が感じられるようになると、やがて主人は彼に対する興味をなくし、態度は豹変した。
強引に無茶な命令をきかせたり、愛のない欲求のはけ口として使われたりもした。
当然、碌に「メンテナンス」がされるはずもなく、やがてモモは壊れるべくして壊れていった。
そして成金Dom特有の理不尽な言い分で、モモという名をつけられたSubは施設に返品された。
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