おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ

文字の大きさ
上 下
14 / 25

ただの感想だ

しおりを挟む
「なあ……こういうの・・・・・ってさ、その……こういうもん・・・・・・、なのか」

 雰囲気に流されるままうっかり預けちまった身体は熱くなる一方で、もう引っ込みがつかねえ予感は察してる。
 だが会話が途切れた途端にさっきまで存在すら気づいていなかった時計の秒針の音が妙に煩くて、あまりにもいたたまれなくて言葉を絞り出す。

「はぁ……」
「あ、悪りい……」

 確かにおれが知らなすぎるのが悪い、それは間違いねえんだけど。案の定返ってきたのはため息で。

「ああ、いえ、違うんですけど」
「え?」
「はぁ……」

 いや結局ため息じゃねえか、と言ってやろうと口を開くより先に側頭部が覆われるような感触が降ってくる。

「いえ、こちらのことです」
「え……、ん、んん……?」

 ……あ、やべ。変な声出たな。
 するりと滑るような感触、まさかと思ったがやっぱりだよな。ああいや、それはいい、なんつーかこう……あたま撫でられてんの、男の手って感じででけえ手のひらがすげえ気持ちいい。

「そうですね……必ずしも、というわけではないですけど」
「ん? あ、ああ」
「っ、はあ……もう」

 ため息が吐かれるたびに背中にかかるのが妙に熱っぽくて、また変な気持ちになりかけてはっとする。
 ああ、危ねえ危ねえ。おれから訊いたそばから、思考飛ばしてりゃ世話ねえな。

「……悪りぃ。んで、けど?」
「プレイの相性がいいほど、そういう気分にはなりやすいですね」
「あー……」

 おれとこいつの相性なんてわかんねえ。ただ、触れ合ってんのがこんなにも安心するなんて信じらんねえけどこれは事実だ。だから自然とその先を想像しちまうような、その先っつったらもうそれしか……って、いやそういうことを言いたいんじゃねえんだけど、なんつうか、おれはなにを考えてんだ。

「これだけでそんなにいい顔されちゃあ、俺だって興奮しますよ」
「お、おお……」

 ただ確実に言えんのは、どう考えてもこれはとんでもねえことを頼んじまったっつう……なんて全然回っちゃいねえ頭で必死に理屈を捏ねたところでなんも落ち着きやしねえのに、って――

「……っ、ひ」
「ふ……今更考え事ですか」

 気づけばさっきまでおれの後頭部に触れていたはずの熱い手のひらが、首筋をなぞるようにするり、するりと降りていく。

「まあ、先輩はちょっと敏感すぎですけど」
「っあ、ちょっ、い」

 言葉にならないそのひゅっとするような感触を咀嚼しきれないまま、それは鎖骨から胸もとに伝って塗り潰されていくような。なにかを描くような意味深な手つきで撫でまわしてはまた何度も行ったり来たりを繰り返す。

「ん、っひ」

 手のひらの動きは無造作風だが、焦らすみてえに指先が乳首に掠ってくるのは絶対わざとだろ。

「はあ……本当に、よく今まで気づかれなかったものですね」
「しら、ねえ」

 もっとマシな言葉で言い返してやりてえのに、それだけ絞り出すので精一杯で。

「それ、あんたのその目、もう溶けそう。どう見てもSubだし、いちいち俺の声に反応すんのも煽ってるだけだから」
「あ……?」

 なんだそれ、そんなの知らねえ。
 だが確かにこいつの声はなんつうか、耳元で揺らされた空気が熱っぽいまま全身に駆け巡って、血が浮くみてえにいちいち茹で上がってんのが嫌でもわかる。

「ね、先輩」
「っ、あ」
「もう、いいでしょう」
「なに、が」

 なにが、なんて形だけの抵抗で、うまく言葉にならねえだけで薄々わかってんのに。

「ほら、仰向けになって・・・・・・・

 物理で抵抗するって発想自体が既に抜け落ちてんのに気づいたときには、遅かった。
 言うが早いか、そのまま重心をこちらに預けられれば有無を言わさず勝手に背中が後ろに落ちれば、蛍光灯の明かりの逆光で、暗い影から落とされる眼鏡越しの視線だけが妙に際立ち圧倒される。

「……つか、もう仰向けだし」

 ああ、こいつ正面から見たらこんな顔してたっけ。
 知ってるはずなのに見たことねえような男の顔で、まっすぐ見下ろされたら目が逸らせねえ。

「ええ、とっても上手です」
「よく言う」
こういうプレイ・・・・・・・、ですからね」
「は……」

 そりゃあそうかもしれねえけどさ。
 まあでもおれの頼みにここまで付き合ってくれてんだから文句は言えねえしむしろありがてえ、で合ってんだよなあ? なんて。
 どうにかしておれ自身がこの状況を納得する言葉を探してんのに、焦らすように肌をさする手のひらは止まんねえままついに下着んとこまで降りてきて。

「っ、ひぁ、ちょ」

 とっくにテントは張りかかってんのに、その芯の先を指先でついっと引っ搔かれりゃ勝手に変な声が出る。
 その刺激のせいで、どうぞと言わんばかりに高さを増したところをきゅっと握り込まれて弄ばれるその感触は、布越しなのがなんつーか余計にいやらしい。

「いいですね。そろそろ、こっちも脱いで・・・おきましょうか」
「あ? ……っおい、」
「そうそう、いいですよ」

 っつってまた結局人の下着を勝手に引っぺがしてんじゃねえかよ。
 ああもう、そういうプレイだっつったか? なんもしてねえのに褒められてんのもくすぐってえ。

「お前な……、っ」
 
 さすがにひと言言ってやるつもりだったのに、いつのまにかこいつの下穿きまで寛げられんのを目の当たりにして思わず躊躇っちまうぐらいには、その……なんつーか……

「凶器じゃねえかよ」
「それ褒め言葉でいいですか……先に誘ったのも、先輩ですからね」
「まあ……うん」

 褒め言葉もなにも、ただの感想だ。
 そんで、確かに先に頼んだのはおれかもしんねえが、それでもお前、律義に勃つんだなっつうこれも感想だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

嫁さんのいる俺はハイスペ男とヤレるジムに通うけど恋愛対象は女です

ルシーアンナ
BL
会員制ハッテンバ スポーツジムでハイスペ攻め漁りする既婚受けの話。 DD×リーマン リーマン×リーマン

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...