おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ

文字の大きさ
上 下
3 / 25

意味ないんで

しおりを挟む


「ヨハンナが待っていてくれると思うから頑張ってこれた。でも、それって怠慢だったんだね」

 私の肩に頭を乗せてしがみつく。

「俺を捨てないで。……捨てないで、大好き。愛してる」

 なんだろう。
 本当に捨て犬みたいで。
 あぁ、もうしかたない。
 彼を愛しいと思う自分がいる。
 だけど許してしまっていいの……?

「アルヴィン、離婚の取り消しはしない。それから二人だけで一緒に暮らして上手くいくか試せるのなら。家は買わないで。それでもいい?」

「よくない……でも、我慢する。ヨハンナの信頼がほしいから」

 身体を起こして私を見下ろす。
 目も鼻も赤くて、今だってまだ唇が震えている。
 本当に情けなくて、みじめで……可愛い。

「ヨハンナ、キスしていい? キス、したい」

 そんなこと言わずにキスしたらいいのに、と思うけどそれもまた愛おしか思えるなんて。
 全部、一つ一つ私が教えてきたんだった。

「いいよ」
「ヨハンナッ!」

 強く押しつけた後、唇を食んで吸って、めちゃくちゃなキス。

「んっ……!」
「団長、とは……なんでもない、よね?」

 顔を上げて私をじっと見つめる。
 どんな表情も見逃さないというような、あんまりにも必死な形相に私が口ごもると、
 
「言わないで! 全部上書きするから!」

 何を言い出すのだろう。
 困惑する私の着ていたものを全て脱がせる。

「裸に団長のシャツを着るなんて……! クッソずるい! そんなこと、俺だって、俺だって……」
「してほしかったの?」

 同居で人の目があったから、はしたない格好なんてできなかったけれど。

「してほしい。俺のシャツ着てほしい」
「少ない荷物で家を出たから、貸してもらっていただけよ」
「それでもいやだ。……あんな姿で団長の前にいたなんて」

 ヤキモチを焼く姿がおかしくて、とうとう吹き出した。

「……どうせ、俺は子どもですよ。でも、伸び代はあると思う、です」
「さっきの格好で団長の前に立ったことはないよ、それに……自分で伸び代があるっていうのは、どうかな」

 拗ねる姿も子どもっぽい。
 だけど、こんな彼のそばに寄り添うのも悪くないと思う自分がいる。
 ただすぐにゆるすと思われたくない。

「……ヨハンナ、これからの俺をみていて。信じてほしい」

 真っ直ぐ見つめられてぐっときた。
 彼はこれまで私に嘘をついたことがない。
 そういうところに惹かれたんだった。

「いいよ、アルヴィン。キスして」
「……っ、ヨハンナ、愛してる!」

 噛みつくようなキスに、忙しなく動く彼の手。
 なんだかもう、そんな拙いところまで好きになってしまったからしかたない。
 彼の手が足のつけ根に触れる。

「ヨハンナ、濡れてる」
「……久しぶり、だから」
 
 身体は正直で、慣れ親しんだアルヴィンを受け入れようとしている。
 彼の指を喜んで食い締めているもの。

「そっか」

 それを信じて笑う彼が愛おしい。

「団長とは何もなかったんだね。よかった……」

 指を引き抜き、すぐさま陰茎を押し当てる。

「ヨハンナ」
 
 なめらかにすべり込んで、私の好きなところにコツンと当たる。
 
「……んっ」

 今日は熱くなるのが早いかも。
 声をもらしたくなくて、アルヴィンの首に腕を回し、腰に足を絡めて引き寄せた。

「はぁ……っ。もう二度とこの腕に抱けないかと思ったよ」
 
 私も深く息を吐いた。

「アルヴィン、好きよ」
「ヨハンナ……」

 吐息混じりに吐き出された言葉が耳をくすぐる。
 少しでも奥に行こうと押しつけてくるから陰核がこすれて身体が張り詰める。

「あっ……!」

 思いがけず、絶頂を迎えて私の身体が大きく震えた。
 驚いたアルヴィンが苦しそうに何度か呼吸したけど、そのまま私の中に吐精した。

「アルヴィン……? なんで中で出したの?」
「え? だめだった? だってこれからも俺と一緒に」
「いるけど、離婚したでしょ」

 みるみるしょんぼりするけど、譲れないものは譲れない。
 
「ヨハンナ……でも、子どもは……欲しくない?」
「子どもは授かりものだし、もし授かったら結婚しなくても産める。お互いに上手くやれるようだったら、その時はまた話し合おう」

「……わかったよ。色々と片づけないといけない問題もあるからね。……俺、ヨハンナが結婚したいと思ってもらえるような男になるから、だから……!」

 アルヴィンがごくりと唾を飲む。

「だから?」
「もう一度、抱かせて!」

 子どもを授かったら、私の気も変わると思っているのかな。
 わかりやすい、そして単純。
 馬鹿な子。

 その通りになるかはわからないけど、今くらいすべてを忘れてもいいかも。
 言わないけどあさってにも月のものが来る予定だから。
 
「いいよ。一度だけね」
「好きだ、ヨハンナ!」

 アルヴィンがぱぁっと明るい笑顔を浮かべた。
 再び大きくなった陰茎が私をかき乱す。
 これまでと同じはずなのに、自宅じゃないから気兼ねなく抱き合える。
 
 腰が浮くほど持ち上げられて、深く大きく突き挿れて。

「あっ、はぁ、アル、ヴィンっ!」

 彼は嬉しそうな顔で私を見下ろし、勢いよく揺さぶり始めた。

「ヨハンナの声、いっぱい聴きたい」
「や、もう。十分、だからっ、ぁあっ!」

 子宮口に当たるように何度も突き込むから目の前が真っ白になる。
 
「……ああぁぁっ‼︎」
「っ、ヨハンナ、気持ち、いいっ……イきたくないっ!」

 私が達して彼の射精を促すように、内壁がうごめく。
 しばらく抵抗した彼も、グッと腰を押しつけてかたまった。
 温かいものがなかに拡がり、彼が脚を下ろす。
 そのまま私を腕の中に閉じ込めて、息が整うと言った。

「大好きだ。死ぬまで離さないから。今日はここに泊まって、二人きりでゆっくりしよう。団長が俺と合わせて休みにしていいって。だから……一週間ずっと一緒にいられるよ」

「え?」
「だから、一緒に住む家を決めよう」
「その前に服と靴がほしい」
「俺が買ってくるから!」

 キラキラした目でアルヴィンがまっすぐ愛情を向けてくる。
 隣にいて寄り添う、というより手綱を握ったほうがいいのかもしれない。
 そんなことを思いながら、私は頷いた。








      アルヴィンエンド 終


******


 お読みいただきありがとうございました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

嫁さんのいる俺はハイスペ男とヤレるジムに通うけど恋愛対象は女です

ルシーアンナ
BL
会員制ハッテンバ スポーツジムでハイスペ攻め漁りする既婚受けの話。 DD×リーマン リーマン×リーマン

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...