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前向きなあいつと
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あいつとは学生時代から妙に気が合って、親友と言うにはちょっと違うけど自然と一緒にいることが多かった。裏表のないあいつといるとすごくホッとするし、あいつを俺のものにしたいなんて考えは何度も頭に過ぎったけれど。そんなことでこの関係が壊れるほうが嫌だったから、この気持ちはないものとしてこれまでやってきた。
あいつに彼女でもできたらいっそ離れられるのに。なのにあいつときたら、そんな気配もないままかれこれ10年ほどになる。今日は俺たち共通の友人の結婚式、もうそんな年頃なのかと改めて思い知らされる。普段はそんな話なんてしないのに、その空気感に流されるまま、ここぞとばかりにあいつに初めて聞いてみた。
「うーん、おれってたぶんそういう優先順位が高くないんだよね」
さすがに付き合った相手はゼロではないようだが、あいつ曰く、淡白だからいつも続かないようだ。年に数回俺と会う度にそういう気配がないのも確かに辻褄が合っている。
「お前って、淡白なのか? 性欲とか、ないのか?」
ええい! ここまで聞いたのだから、もう何聞いたって一緒だろう! と、喉がカラッカラになるのを自覚しながら尋ねてみた。
「性欲? あるよ? でも相手にとっては足りないみたい」
だから付き合うのも面倒で、なんて酒も手伝いあっけらかんと答えるあいつを目の前にして、俺の中であらゆる考えがものすごい速さで駆け回る。
「性欲はあるんなら、案外抱かれるのが向いてたりして?」
なんてな、今なら酒の席での軽口で許されてもいいはずだ。
「確かに! その発想はなかった!」
「は?」
いや、確かに話を振ったのは俺のほうだが、まさかそんなに生き生きしながらその場でスマホを取り出し検索しはじた。
ちょっと待て、お前ってそんなに積極的だったのか? 大体、それでどうするつもりだ? 今から相手を探すってのか……?
そういうことなら、そんなのやめて俺にしとけ!? 頼むから!!
まさかこんな展開になるとは斜め上過ぎて慌てた俺は、どうにかあいつを口説き落として部屋に連れ込んだ。
もしもこのままダメになってもこれはただの実験だから気まずくなることは何もないし、あわよくば堕ちてきてほしい。
「おまえ、おれ相手に勃つんだな」
「俺は、お前なら余裕で勃つよ」
「なんか、ごめんな……」
「俺が誘ったんだから。お前は何もしなくていいから」
なんてねちっこく囁きながらゆっくりと唇を味わって。とにかく大事に大事に甘やかしながらあいつの全部を確かめるようにして愛を注いでやる、はずだったのに。
「ん、すごいな……気持ちいいかも」
「良かった、そのまま感じてて」
「えっ、あぁっ……そんなとこ、ッ、やぁっ」
「ん、大丈夫」
ただでさえ夢のような展開で嬉し過ぎるのに。上気した表情で俺相手に恥じらうその仕草も、敏感なところに触れるたびに耐えきれず溢れるその声もなにもかも、お前淡白って絶対嘘だろ? ってぐらいめちゃくちゃ可愛くて。
結局加減を忘れて抱き潰して、翌朝になってああやっちまったと頭を抱えていたら、あいつは気が付きながらもまだ半分寝ぼけながら「あ……そっか、おれ、おまえと」なんて
、ちょっと恥ずかしそうにしているのもまた可愛くて。
やっぱり全部覚えてるよな。本当にヤリ過ぎて嫌われても仕方ないと思いながら、これで済まされるとは思わないがせめてとの気持ちで謝った。
「なんで謝るんだ?」
「え?」
そりゃあ、だって、なあ……?
お前、怒ってないのか……?
「すっげえ良かった!」
「え?」
「抱かれるの、すげえ気持ちよかった。いやー、おまえすごいな」
「えっ、あっ」
「おれ、ダメなんだって思ってたけど、こっちだったんだな。スッキリしたわ、ありがとな!」
うぅ……罪悪感が酷過ぎる。
頼むから、そんなキラキラした目で見ないでくれ。本当にすごいのはお前だよ。やっぱり好きだ。そんなお前が可愛い過ぎてまたヤりたくなってくる。
「あれ? おまえまだ元気だな?」
ああ見つかった。その曇りなき笑顔で見ないでくれ、頼むから。
「おれ、言われるがまま全部おまえに任せてたもんな。お礼になるかわかんないけど」
「え?」
モゾモゾとおれの足元に潜り込んで、まさか……あっやめろ、ああっ、俺は下心しかなかったんだから。お願いだから、お礼なんて言うのはやめてくれ。
なんて思いながらも、不器用に絡みつく舌先の生温かい感触と視界の暴力の刺激が俺の許容量を超えて気持ち良過ぎてそのまま流されて。
だけどまさか、昨夜からの急展開に頭がついていかなくて、あいつに好きだと伝えることを失念していたなんて、本当にバカ過ぎる痛恨のミスだった。
新しい扉が開いたことに素直に喜ぶ無自覚なあいつに俺の心が振り回されることになるなんて、このときの俺には確かに想像する余裕すらもなかったけれど――――
あいつに彼女でもできたらいっそ離れられるのに。なのにあいつときたら、そんな気配もないままかれこれ10年ほどになる。今日は俺たち共通の友人の結婚式、もうそんな年頃なのかと改めて思い知らされる。普段はそんな話なんてしないのに、その空気感に流されるまま、ここぞとばかりにあいつに初めて聞いてみた。
「うーん、おれってたぶんそういう優先順位が高くないんだよね」
さすがに付き合った相手はゼロではないようだが、あいつ曰く、淡白だからいつも続かないようだ。年に数回俺と会う度にそういう気配がないのも確かに辻褄が合っている。
「お前って、淡白なのか? 性欲とか、ないのか?」
ええい! ここまで聞いたのだから、もう何聞いたって一緒だろう! と、喉がカラッカラになるのを自覚しながら尋ねてみた。
「性欲? あるよ? でも相手にとっては足りないみたい」
だから付き合うのも面倒で、なんて酒も手伝いあっけらかんと答えるあいつを目の前にして、俺の中であらゆる考えがものすごい速さで駆け回る。
「性欲はあるんなら、案外抱かれるのが向いてたりして?」
なんてな、今なら酒の席での軽口で許されてもいいはずだ。
「確かに! その発想はなかった!」
「は?」
いや、確かに話を振ったのは俺のほうだが、まさかそんなに生き生きしながらその場でスマホを取り出し検索しはじた。
ちょっと待て、お前ってそんなに積極的だったのか? 大体、それでどうするつもりだ? 今から相手を探すってのか……?
そういうことなら、そんなのやめて俺にしとけ!? 頼むから!!
まさかこんな展開になるとは斜め上過ぎて慌てた俺は、どうにかあいつを口説き落として部屋に連れ込んだ。
もしもこのままダメになってもこれはただの実験だから気まずくなることは何もないし、あわよくば堕ちてきてほしい。
「おまえ、おれ相手に勃つんだな」
「俺は、お前なら余裕で勃つよ」
「なんか、ごめんな……」
「俺が誘ったんだから。お前は何もしなくていいから」
なんてねちっこく囁きながらゆっくりと唇を味わって。とにかく大事に大事に甘やかしながらあいつの全部を確かめるようにして愛を注いでやる、はずだったのに。
「ん、すごいな……気持ちいいかも」
「良かった、そのまま感じてて」
「えっ、あぁっ……そんなとこ、ッ、やぁっ」
「ん、大丈夫」
ただでさえ夢のような展開で嬉し過ぎるのに。上気した表情で俺相手に恥じらうその仕草も、敏感なところに触れるたびに耐えきれず溢れるその声もなにもかも、お前淡白って絶対嘘だろ? ってぐらいめちゃくちゃ可愛くて。
結局加減を忘れて抱き潰して、翌朝になってああやっちまったと頭を抱えていたら、あいつは気が付きながらもまだ半分寝ぼけながら「あ……そっか、おれ、おまえと」なんて
、ちょっと恥ずかしそうにしているのもまた可愛くて。
やっぱり全部覚えてるよな。本当にヤリ過ぎて嫌われても仕方ないと思いながら、これで済まされるとは思わないがせめてとの気持ちで謝った。
「なんで謝るんだ?」
「え?」
そりゃあ、だって、なあ……?
お前、怒ってないのか……?
「すっげえ良かった!」
「え?」
「抱かれるの、すげえ気持ちよかった。いやー、おまえすごいな」
「えっ、あっ」
「おれ、ダメなんだって思ってたけど、こっちだったんだな。スッキリしたわ、ありがとな!」
うぅ……罪悪感が酷過ぎる。
頼むから、そんなキラキラした目で見ないでくれ。本当にすごいのはお前だよ。やっぱり好きだ。そんなお前が可愛い過ぎてまたヤりたくなってくる。
「あれ? おまえまだ元気だな?」
ああ見つかった。その曇りなき笑顔で見ないでくれ、頼むから。
「おれ、言われるがまま全部おまえに任せてたもんな。お礼になるかわかんないけど」
「え?」
モゾモゾとおれの足元に潜り込んで、まさか……あっやめろ、ああっ、俺は下心しかなかったんだから。お願いだから、お礼なんて言うのはやめてくれ。
なんて思いながらも、不器用に絡みつく舌先の生温かい感触と視界の暴力の刺激が俺の許容量を超えて気持ち良過ぎてそのまま流されて。
だけどまさか、昨夜からの急展開に頭がついていかなくて、あいつに好きだと伝えることを失念していたなんて、本当にバカ過ぎる痛恨のミスだった。
新しい扉が開いたことに素直に喜ぶ無自覚なあいつに俺の心が振り回されることになるなんて、このときの俺には確かに想像する余裕すらもなかったけれど――――
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