恋愛ショートショート

かまの悠作

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恋のチョコレート

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「私、今日こそは告白するんだから!」

桜子は自分の心に誓った。彼女の目の前には、学校の屋上から見える街の景色が広がっている。陽射しが心地よく、風が彼女の髪を優しく撫でる。そんな中、彼女の心はドキドキしていた。

「桜子、また何か考えてるの?」と声をかけたのは、彼女の親友、莉子だった。莉子は笑顔で桜子の隣に座り、チョコレートを口に運びながら言った。「またあの彼のこと?」

「うん…」桜子は少し顔を赤らめながら、視線を遠くに向けた。彼女が好きな相手、健太は同じクラスの男子。いつも明るくて、優しい彼の笑顔は、まるで桜の花びらのように彼女の心を掴んで離さない。

「でも、どうやって告白するの?」莉子がちょっと心配そうに聞く。桜子は頷き、考え込む。「なんか、特別なことがしたいな。バレンタインデーが近いし、手作りのチョコレートを渡そうと思ってるの。」

「それ、いいアイデア!でも、チョコレート作り、上手くいくの?」莉子は微笑んでいるが、その目は少し心配そうだった。桜子は思い切って言った。「大丈夫!YouTubeでいろいろ調べたから、きっと!」

その日、桜子は帰宅後、キッチンでチョコレート作りに挑戦した。材料を並べ、レシピを見ながら手際よく進めていく。だが、最初の段階で思わぬアクシデントが起こった。湯煎で溶かそうと思ったチョコレートが、うっかり焦げてしまったのだ。

「うわっ、最悪!」桜子は頭を抱えた。焦げたチョコレートはまるで泥のようで、彼女の心も沈んでいく。「こんなの、健太に渡せない…」

翌日、桜子は気を取り直して学校に向かった。莉子と一緒にいると、少しずつ気持ちが楽になった。そんな時、健太が廊下を歩いているのを見かけた。彼は友達と笑いながら話していて、楽しそうだ。

「ほら、桜子。チャンスだよ!」莉子が背中を押した。桜子は心臓がバクバクしながら、健太に近づいていく。

「えっと、健太…」言葉が詰まる。彼の目がこちらを向くと、さらに緊張が増す。「あの、バレンタインのチョコレート、作ってるんだけど…」

「チョコレート?すごいね!食べたいな~」健太が笑顔で応える。その瞬間、桜子の心は一瞬で晴れた。「じゃあ、明日渡すね!」

「楽しみにしてるよ!」健太の言葉に背中を押され、桜子はますますやる気になった。

しかし、家に帰った桜子は再び焦りに襲われた。今度はチョコレートの型がうまく固まらず、見た目は一層悪化していた。「どうしよう…これじゃ、まるで犬のうんちみたい…」桜子は泣きそうになりながら、チョコレートを何度も試みた。

翌日、彼女はついに形になったチョコレートを持って学校に向かった。緊張と期待が入り混じる中、屋上で健太を待つことにした。

「遅いな…」桜子は手に持ったチョコレートをぎゅっと握りしめる。そんな時、莉子がやって来た。「どんな感じ?うまくいった?」

「うーん、見た目は微妙だけど…今、健太を待ってる。」桜子は少し不安になりながら答える。

「大丈夫、桜子の気持ちが伝われば!」莉子が励ます。

その時、健太が屋上のドアを開けて入ってきた。彼は少し戸惑った表情を浮かべていた。「桜子、呼んだ?」

「うん…」桜子は心臓がバクバクしながら、手に持ったチョコレートを差し出した。「これ、バレンタインの…チョコレート。」

「え、これが?」健太は驚いた顔をして受け取る。「すごい、ありがとう!」

桜子は照れくさくなりながら言った。「でも、見た目はあんまり良くないかも…」

「全然!気持ちが嬉しいよ!」健太が笑顔で言った瞬間、桜子の心の中に温かいものが広がった。その時、彼女は気づいた。見た目なんて関係ない、彼に伝えたい気持ちが大事なんだと。

「じゃあ、食べてみて!」桜子はドキドキしながら言った。健太は一口かじり、そして目を丸くした。「美味しい!これ、すごくいいよ!」

「本当に?」桜子は信じられない思いで聞いた。健太は頷き、笑顔を見せる。「来週のバレンタインデー、また別のチョコレート、お願いね!」

「うん!」桜子は嬉しさでいっぱいになり、心が軽くなった。

その時、莉子が背後から声をかけた。「あれ、桜子、次はどんなチョコ作るの?」

「次は焦がさないように頑張る!」桜子は笑いながら答えた。恋のチョコレート、彼女の心の中で新たな物語が始まったのだった。
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