恋愛ショートショート

勝利の恋心

「新しいコーチが赴任してくるんだってさ。インタビューを試みてみようかな」
と結衣は同僚に話す。

「でも、あのコーチはメディアに対して非常に警戒心を持っているみたいだよ。難しいかもしれないね」
と同僚は心配そうに言った。

それでも結衣はあきらめずに、何度もアプローチを続けることにした。
彼女はスポーツジャーナリズムに情熱を注いでいるだけでなく、慶太の指導にも興味を持っていた。

ある日の練習中、結衣は慶太に話しかける機会を見つけた。
「慶太さん、お話をお伺いしてもいいですか？」
と彼女は恐る恐る声をかけた。

慶太は少し困った表情を浮かべたが、結衣の真剣さを感じ取ったのか、少しだけ心を開いた。
「わかった。でも、あまり長くは話せないからね」
と彼は言った。

結衣は短い時間の中で、慶太が過去のオリンピックでの失敗について触れた。
「その時の貴方の心情を教えていただけませんか？私たちが選手たちを取材する上でも、貴方の経験はとても貴重なヒントになると思っているんです」

慶太はしばらく黙って考え込んだ後、深いため息をついた。
「あの時は本当に辛かった。自分自身を責める日々だった。でも、それが私を強くしたんだ」

結衣は彼の言葉に胸が熱くなった。
「慶太さん、私は貴方の過去を受け入れます。そして、私たちが一緒に選手たちをサポートし、成長させていくことができると信じています」

慶太は驚いた表情を浮かべたが、やがて微笑んだ。「ありがとう、結衣。私も貴方と一緒に頑張りたい」

二人は選手たちの日々の奮闘を見守りながら、互いに惹かれ合っていく。
しかし、大会が近づくにつれて、慶太の元恋人が現れ、二人の関係に亀裂が入る。

結衣は慶太との関係を優先するのか、それとも競技との関係を優先するのか、葛藤する。
一方の慶太も、コーチとしての責任と個人的な感情の間で苦悩しながらも、結衣の支えがあって最終的には選手としてではなく、一人の男性として結衣に真剣な愛情を示す決断をする。

大会当日、慶太が指導する選手が見事に勝利を収める。
慶太と結衣は互いの成功を祝い、二人はこれからも互いに支え合いながら前に進むことを誓う。