初恋は先生。

泉 芳子

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第1章

今だけは

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先生がいきなりこっちを向いてきた

「ごめんね、宮本さん」

いきなり謝ってきた先生を理解出来なかった

「ずっと言えなくてやっと今日言おうと思ってた事があるんだよ」

私の胸は高鳴った、淡い期待を持って聞いた

「なんですか?」 


先生はまた空の方を見た

「この前部活終わりに渡辺君と話したんだ
   それで宮本さんを見てる理由聞いたんだ
   渡辺君1年の時から宮本さんが好きだったん           
   だって」

「それに彼女が居るのは嘘で噂の一人歩きらしいんだ」

勘違いしたのも恥ずかしいが渡辺君が1年の時から私を好き?!どういう事だ?

挨拶くらいしかした事ないのに?

ありえないありえない

「何かの間違えですよきっと」

と私は慌てて言った

「間違えだったら良かったのにね」
と先生も寂しそうに言った

先生の横顔を見たら今までで1番悲しい顔をしていた

こんな悲しそうな顔見た事ないし見たくない

目をそらした

「宮本さん、僕は先生失格だよね」
とこっちを振り向いて言った

今にも泣きそうな涙目の先生

心がぎゅっと掴まれたように痛い

私の瞼の裏も熱くなった

視界はぼやけて頬を涙がつたった

その瞬間

ギュッ

先生から私を抱きしめてくれた

今はただ嬉しくて
でも、叶わない切なさで涙が止まらなくなった

「皇先生…」

「ごめん、今はダメな先生だけど許して」

「いいよ」

私からも強く抱きしめた

先生の匂い好き

今だけは私先生の彼女になれてるのかな

ずっとこの時間が続けばいいのに


私と先生は静かに何分間抱き合っていたか分からないくらい長い時間抱きしめあっていた

涙も止まり顔を上げ先生を見た

先生は顔を真っ赤にして目をぎゅっと閉じていた

私はつい可愛くて笑ってしまった

ハッ!っとしたのか先生は目をあけて私をじーっと見つめてきた

先生は私の左頬に手を当てた


顔が熱くなるのが分かった

私も先生の左頬に手をあてた

先生の頬が熱いのが手から伝わってきた

伝わってくる熱さえ愛しく感じた


私が目を閉じ

先生が何かを言いかけた時


ガラガラッ

ドアを開ける音がした

私と先生は2人同時にビクッとしてドアの方に向かった


そこには渡辺君が立っていた

私は先生の顔を見上げたが先生は冷静だった


「2人で何してんだよ!」と凄い剣幕で私達に怒鳴った

私は怖くて先生の背中に隠れてしがみついた

落ち着いた様子で先生は言った
「宮本さんの相談にのっていただけだよ?」

渡辺君は私に「本当か?宮本!」と怒鳴った

私は怖くでビクッとなった

それに気づいた先生が「宮本さんが怖がってるからもう少し優しく言えない?」と言ってくれた

先生に強くしがみついた

「大丈夫だから横においで」と言ってくれた

渡辺君も「ごめん」と謝ってくれた

私は首を縦にふった

先生が「何で渡辺君が美術室に来たの?」と聞いた

「部活が終わって帰ろうと思った時正面玄関で宮本の友達が「彩音おそい、まだかな」とでかい声で独り言を言ってるのを聞いて心配になって体育館と教室に居なかったからもしやと思って美術室に来た」と言った

先生が「ごめんね、心配かけたね渡辺君!
今日はもう帰ろうか?」と私を見て言った

私は先生の腕を掴んだ

私は先生の耳元で小声で言った
「まだ帰りたくない離れたくない」

渡辺君が「宮本、先生とそんなにくっつくな!」と怒鳴った


私は先生の腕を離してうつむいた

先生が私の頭をポンポンしながら言った

「また来週学校で会えるから」と笑顔で言ってくれた

私がニコニコしていたら

渡辺君が近づいてきて私の腕を掴んで引っ張って行った

私はビックリしすぎて何も言えずに引っ張られるがままに着いて行った

先生は心配そうに「また来週ね」と言った

美術室は3階で2階に差し掛かった時に渡辺君はいきなり立ち止まり私の腕を離した

全く話した事無いし何話していいか分からず無言で数分が経った

渡辺君は「何で笑わないの?」と言ってきた

「え?」意味が分からないと思った
内心笑えないでしょこの状況で!と思ったが無理に笑った

苦笑いみたいになっちゃったけど大丈夫かな?

「ごめん、無理に笑わなくていい
    無茶振りしてごめん
    先生といる時の宮本本当に幸せにそうに笑ってるからちょっと嫉妬した」と言われた

意外と渡辺君って素直なのかな?

「今日一緒に帰っていい?」と聞かれ

私は「うん」と首を縦に振り言った

断ったらちょっと怖いと思ったからだ


玄関に着き、靴を履き替えていた時

バタバタバタッ

先生が走ってきた

私は先生の顔を見るなり嬉しくて思わず
「廊下は走ってはいけません!誰かにぶつかったら大変ですよ?」と笑いながら言った

先生は息をきらしながら
「ごめんね、でも2日会えないと思ったら寂しくて見送りに来た」と言ってくれた


「私も2日会えないと思ったら寂しいです
    でも、先生が今会いに来てくれたのが凄く嬉しいです」
とニコニコしながら言った


渡辺君がまた不機嫌になり
「早く行こ!」と言った

腕を掴まれたけど先生が見えなくなるまで手を振った

先生も私が見えなくなるまで手を振った

駐輪場には美奈が待っていてくれた

「おっと!凄い2人が来たもんだね!何があったの?」と笑っていた

「別に」と渡辺君が不機嫌そうに言った

「彩音は先生とどうだった?」と聞いてきた

私は先生から抱き締めてくれた事と頬に手を当ててくれた事を思い出し顔を真っ赤にした

「ほほん、しちゃったのか!
    先生意外と大胆だね~」と意地悪な笑みを浮かべた

渡辺君までが「したってなにを?!え?まじかよ!今から先生の所行ってくるわ」と走り出しそうになったのを止め、私は弁解をした

「やましい事は何にもしてないし先生は先生だし私は生徒だよ?
これは変える事の出来ない事実
だから、それだけは誤解しないで欲しい」と言った

それは自分に言い聞かせるための言葉にも聞こえた
でも、自分で言った事なのに胸が苦しい


瞼の裏がまた熱くなった

美奈が察してくれて

「さっ!今日はもう遅いから帰ろ!
    うちは逆だから渡辺、彩音を送ってやってよ」と言って1人で颯爽と帰ってしまった

2人だけ取り残されとりあえず帰る事にした


話す事もなく無言でうちまで送ってくれた

私は「ありがとう」と言った

渡辺君は「またな」と言って帰って行った




来週は修学旅行。

楽しみだな、先生と回れたら良いな。



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