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第二章
今は何も考えたくない
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二人でお披露目の為の夜会を抜け出して、あのアホ王子の事や王様の事を考えると頭が痛いがアホ王子と居るとこっちまで頭がおかしくなりそうだった。ジークフリートを何故連れて来てしまったのかは分からないが、手を握り強制的に連れて来てしまった。夜会の会場を少し離れた所で冷静になってジークフリート手を離した。
「あ、ごめんなさい。思わず…」
「い、いや…」
気まずい雰囲気が辺りを漂う。まだ少し冷たい風に一瞬身震いすると気が付いたジークフリートが自分の鎧の上に羽織っていたマントをいのりにかけてあげる。少し長い裾に苦笑いを浮かべたが、ありがとうと言ういのりにジークフリートは嬉しくなった。
「ジーク様っ!!」
「レイラ嬢…?」
薄暗い闇世の中から似つかわしくないピンクのドレスの裾を持ちながら可愛らしい少女が現れる。ジークフリートは知り合いなのだろう。その女の子はレイラというらしい。息を切らして走ってきたレイラは、ジークフリートの腕に抱き着いて満面の可愛らしい笑顔を見せた。
「ちょっ…レイラ嬢、やめてくれっ」
「このお方は…?」
じっとこっちを見てきている瞳には明らかに敵意が向けられていて、いのりは少し胸がズキンと痛んだ。離そうとしているジークフリートを軽くいなして絶対離れないという意志が見受けられる。
「聖女のイノリ・ヒナタです」
もう面倒になって自分から自己紹介をする。すると、プッとレイラがまるで馬鹿にしたように嘲笑いだした。
「え?やだー。レイラは公爵令嬢。身上の人間から自己紹介するのが普通ですよ?そんなマナーも分からないのです~?」
イチイチ語尾を伸ばすなといつもなら言い返しているが、ここは異世界。やっぱりこんな夜会なんて来るんじゃなかった。
「彼女は聖女。国王陛下と同等と扱う様にと貴族には通達が来ているはずだが…?」
「え…?レイラ、そんなことお父様から聞いてません!」
「わざわざ言わなくても分かるようなことだから言わなかったんじゃないのか?」
冷たく言い放つジークフリートに一瞬怯んだレイラ。今だとジークフリートは自分の腕とレイラの腕を離す。明らかにジークフリートは嫌悪感を示しているが、レイラは熱っぽい視線を向ける。
「そんなことより!婚約者の私を放置するのは仕事だからと納得してましたが…聖女様と一緒にいるのはどうかと思いますわ!」
「え…貴方も婚約者が…?」
「いや、ちがっ!お、俺には」
「あたし、婚約者の蔑ろにする男は嫌だとさっきの話聞いてませんでしたか?」
「違うっ!」
「どうでもいいです。レイラさんについてあげてください。ラッシェル令息様」
無性に腹が立ったいのりは、何か言いかけているジークフリートに借りたマントを叩きつけ、ニヤニヤしているレイラを二人に別れを告げて、自分の仮住まいになっている神殿へ帰った。
正直腹が立ちすぎて馬車を操る御者を脅すようにして帰ってきたような帰ってこなかったような気がするが、今は何も考えたくない。
「比呂!」
「あら?あんた夜会は…?」
いのりの服を作りながら呆気にとられた見慣れた顔に思わず涙腺が崩壊した。思いっきり泣いたあと、説明するいのりの話を優しい目で見ながら背中をさすり聞いてくれた。しかし、聞いているうちに眉間の皺が深く刻まれていく。
「はぁぁああああああ!?あんのクソ王子!どういうつもりよ!」
「ははっ…比呂以外の自分の周囲の男は最低な奴ってことが分かった」
「でもさー、ラッシェル令息だっけ?あんたが処置してやった男」
「いやー、完全には治ってないから治療したというか、勝手に手を出したというか…」
「遠目で見ただけだけだからなんとも言えないけど、誠実そうだったけど。それにあの顔、あんたのどストライクじゃない」
「もう!顔だけ男なんて嫌!比呂の言葉は信じない。あの王子だってクソだったもの」
確かにねと苦笑いした比呂に抱きしめられたら落ち着いたはずなのにまたじんわりと涙が視界に入ってきた。
「あ、ごめんなさい。思わず…」
「い、いや…」
気まずい雰囲気が辺りを漂う。まだ少し冷たい風に一瞬身震いすると気が付いたジークフリートが自分の鎧の上に羽織っていたマントをいのりにかけてあげる。少し長い裾に苦笑いを浮かべたが、ありがとうと言ういのりにジークフリートは嬉しくなった。
「ジーク様っ!!」
「レイラ嬢…?」
薄暗い闇世の中から似つかわしくないピンクのドレスの裾を持ちながら可愛らしい少女が現れる。ジークフリートは知り合いなのだろう。その女の子はレイラというらしい。息を切らして走ってきたレイラは、ジークフリートの腕に抱き着いて満面の可愛らしい笑顔を見せた。
「ちょっ…レイラ嬢、やめてくれっ」
「このお方は…?」
じっとこっちを見てきている瞳には明らかに敵意が向けられていて、いのりは少し胸がズキンと痛んだ。離そうとしているジークフリートを軽くいなして絶対離れないという意志が見受けられる。
「聖女のイノリ・ヒナタです」
もう面倒になって自分から自己紹介をする。すると、プッとレイラがまるで馬鹿にしたように嘲笑いだした。
「え?やだー。レイラは公爵令嬢。身上の人間から自己紹介するのが普通ですよ?そんなマナーも分からないのです~?」
イチイチ語尾を伸ばすなといつもなら言い返しているが、ここは異世界。やっぱりこんな夜会なんて来るんじゃなかった。
「彼女は聖女。国王陛下と同等と扱う様にと貴族には通達が来ているはずだが…?」
「え…?レイラ、そんなことお父様から聞いてません!」
「わざわざ言わなくても分かるようなことだから言わなかったんじゃないのか?」
冷たく言い放つジークフリートに一瞬怯んだレイラ。今だとジークフリートは自分の腕とレイラの腕を離す。明らかにジークフリートは嫌悪感を示しているが、レイラは熱っぽい視線を向ける。
「そんなことより!婚約者の私を放置するのは仕事だからと納得してましたが…聖女様と一緒にいるのはどうかと思いますわ!」
「え…貴方も婚約者が…?」
「いや、ちがっ!お、俺には」
「あたし、婚約者の蔑ろにする男は嫌だとさっきの話聞いてませんでしたか?」
「違うっ!」
「どうでもいいです。レイラさんについてあげてください。ラッシェル令息様」
無性に腹が立ったいのりは、何か言いかけているジークフリートに借りたマントを叩きつけ、ニヤニヤしているレイラを二人に別れを告げて、自分の仮住まいになっている神殿へ帰った。
正直腹が立ちすぎて馬車を操る御者を脅すようにして帰ってきたような帰ってこなかったような気がするが、今は何も考えたくない。
「比呂!」
「あら?あんた夜会は…?」
いのりの服を作りながら呆気にとられた見慣れた顔に思わず涙腺が崩壊した。思いっきり泣いたあと、説明するいのりの話を優しい目で見ながら背中をさすり聞いてくれた。しかし、聞いているうちに眉間の皺が深く刻まれていく。
「はぁぁああああああ!?あんのクソ王子!どういうつもりよ!」
「ははっ…比呂以外の自分の周囲の男は最低な奴ってことが分かった」
「でもさー、ラッシェル令息だっけ?あんたが処置してやった男」
「いやー、完全には治ってないから治療したというか、勝手に手を出したというか…」
「遠目で見ただけだけだからなんとも言えないけど、誠実そうだったけど。それにあの顔、あんたのどストライクじゃない」
「もう!顔だけ男なんて嫌!比呂の言葉は信じない。あの王子だってクソだったもの」
確かにねと苦笑いした比呂に抱きしめられたら落ち着いたはずなのにまたじんわりと涙が視界に入ってきた。
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