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Folge 95 ドッキングミッション

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「ふぅ。二人に想いを吐き出したらすっきりした気がする」

 力が抜けて、背中が地面に着きたがっている。
 それには賛成だ。
 背中がひんやりとして気持ちいい。
 どうも火照っていたようだ。
 思いっきり想いを二人に伝えたもんな。
 実は照れていたのかも。
 はは。
 自分の状態が分からない程鈍いらしい。
 そんな風だから女子からモーションかけてくるんだよね。
 オレから動かないんだもの。
 今まで妹以外に女の子のことを考えたことが無かった。
 白い目で見られていたから。
 その中で現れたさくみさ。
 姉妹で好きになってくれるなんてさ。
 今まで白い目で見ていた女子に物申したくなるね。
 ……ちゃんと、好きになってくれる人がいますよーだ。
 ああ。
 目の前は空だ。
 いつもより近いんだな。

「サダメちゃんが横になっていると――――」

 空の青さが美人の白い顔に代わった。
 長髪の先で頬を撫でられる。

「構いたくなる衝動に駆られるんですよね」

 くすぐったい。
 でもされていたい。

「外でも同じ事しているじゃないか」

「キスと顔を見るのは違いますよ」

「今にもキスしそうな気配を感じるよ?」

「ふふふ。ここでするのは素敵なことですね。大切な場所で大切な人と――――」

 そのままするのかと、待ち構えてしまう。
 両手は左右に置かれているし、顔までは髪の長さ分程度の距離。
 表情からしてもすると思うよ、これは。

「しないと勿体ないので、サダメちゃん正解です」

 綺麗な顔が降下を初める。
 装備されているドッキングアダプター、通称――唇。
 難なくこちらのアダプターとドッキングを成功させる。
 人肌の温もりという乗組員が移動を試みる。
 こちらの温もり乗組員が愛情という手を差し伸べアシスト。
 移動を確認後、乗組員が入れ替わる。
 ドッキングミッションの完了だ。
 美しい顔は上昇し、元の位置へと帰還した。

「美咲ってさ、綺麗だね」

「サダメちゃんって、火照らせるのがお上手ですね」

 クスクスと笑い合った。
 ゲラゲラと笑い転げるよりも、気分がいい。
 こんな楽しみを共有できるのは何故だろう。
 やはり美咲だから……なのだろうな。

「特別な人になっているのは確かだよ」

 そう。
 特別な感情を持ってさくみさとは接している。
 知らぬ間にね。
 特別な感情というものの正体。
 これが愛情というものだと、もう一人の自分が囁いてくる。

「もう少し、待っててくれる?」

 片手を美咲の頬へ伸ばし触れる。
 足りぬと言わんばかりに掌へ密着させてきた。
 それを受け入れた証として、親指で撫でる。

「私、近づけたのですね。……出会えてよかった。ほんとに――」

 オレの頬には美咲の目から嬉し涙というプレゼントが届けられた。
 そう思ってもらえてこちらこそ良かったよ。
 役に立てる人になれたようで。

「こちらこそ、ありがとう。……とりあえず、これからも仲良くしてくれるかな」

「その言葉を言ってもらえる日が来るなんて。仲を悪くする気なんて毛頭ありませんから」

 これだけ気持ちを語り合うなんてね。
 家族とは違う人と。
 とても素敵な時間を過ごしている贅沢な奴だな。

 ――――罰が当たらないように頑張らないと。
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