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Folge 50 両手に双子
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「咲乃って、いいよな」
「え? 何か言った?」
おい、オレは何を言った!?
「何か言ったっけ?」
「言ったよお」
「気のせいだろ、言っていないから」
「絶対に言ってたけどなあ」
手を握り直して大きく振られている。
ちょっと恥ずかしい。
校門を出てからは手を繋いで歩いているんだ。
オレから握ったんじゃない。
もちろん咲乃の方から。
……オレから握ってもいいのか?
否定したら違和感が。
オレから握るって相当恥ずかしいぞ。
妹とはどうだっけ――大抵は妹からだな。
基本的にオレからモーションを掛ける前に掛けられている。
男としてどうなのさ。
もっと肉食系でいいのかな。
オレから動かないから好かれているのかもしれないし。
どっちのタイプで動いたらいいんだよ!
「サ~ダメがダンジョン入ったねー。ボ~クは手繋ぎ楽しいんだー」
歌っている。
咲乃が歌を歌っているぞ!
「なんて歌だよ」
「ボクの作詞作曲。ダンジョンから戻れたね!」
「……言われてみれば。そっか、行ってたのか」
「そうだよお、ボクを置いて一人でさぁ。ああ寂しかった」
ニコニコして言うな。
そういうのさ、可愛いと思っちゃうから。
最近、こいつが何かをするといちいち可愛く見えるんだが。
「あのぉ。サダメちゃん、私とも手をつないでくれない?」
「そりゃいいよ。こちらへどうぞ」
鞄をどうしようかと思う間もなく、美咲が持ってくれた。
空いた手を美咲に差し出してあげる。
何故だか話に加わらないし、ついてくるだけなんだ。
美咲らしくない。
「何を遠慮しているの? 今はどっちが彼女だとか、そういうの無いから」
「それじゃあ手を繋ぎます!」
両手に双子。
妹じゃないんだぜ!
我ながら理解不能な状況。
「随分咲乃と仲が良くなっていますね。嫉妬がうなぎ上りです」
「それなのに来ないのはなんでだよ」
「そうしたいのですけれど……」
「したいけど?」
「好き過ぎて恥ずかしかったり、どうして良いのか分からなかったりで困っているのです……」
体験期間では圧倒的に咲乃の方が話せている。
同クラスだからね。
話のネタは同じことが多くなるから、意識しなくても話せていた。
その点、美咲とは共有する時間が少ないわけだ。
話が盛り上がるまでに多少時間が掛かりやすかったのかな。
振り返るとそう思う。
「話す時間が少なかったもんな。一緒の時間を増やしてみるか?」
「ちょっとサダメ! 体験は終わっているんだけど」
「まあまあ。フェアじゃないっていうか、やっぱり……」
振り向いた咲乃はオレに向かってベロを出した。
「お優しいですこと! ふん! ボクより好きにならないって条件じゃないと嫌だから」
今のベロ出しはキュンときた。
キュンってなんだよと今まで思っていたけど、キュンってなるんだな。
めっちゃ可愛かった。
アンコールしたい。
「とまあ、妹さんも言っているから、そうしてみる?」
「はい!」
「だけどさあサダメ、テスト勉強しなきゃ」
「そうだった! 詰め込み作業しないと」
「それなら私がお手伝いします! 分からない所は聞いてください」
「おお、それは助かる。そっか、それなら内容は勉強だけど話はできるな」
その手があった。
咲乃から勉強材料は提供されているけど、話し相手も欲しい時がある。
実は美咲と話すと言っても、どうしたものかと困っていたからちょうどいい。
あはは。
笑って誤魔化しとこ。
「そんじゃ、今晩よろしくってことで」
美咲の握る手に力が入り、咲乃と競う様に腕を振られる。
オレの腕は交互ではなく、同時に前後に動かされている。
恰好悪いし、歩きにくい。
でもこんな感じで二人と歩くのは初めて。
競っているかとも思ったけど、どうやらどちらも楽しそう。
高校生で手を繋いでブンブン振るなんてそうそう無い。
小学生の遊びっぽいもんな。
たまに小さいころの遊びをすると、やたら楽しい時ってあるよね。
今が正にそれ。
ゴチャゴチャと考えずに今はこの瞬間を楽しみますか。
「え? 何か言った?」
おい、オレは何を言った!?
「何か言ったっけ?」
「言ったよお」
「気のせいだろ、言っていないから」
「絶対に言ってたけどなあ」
手を握り直して大きく振られている。
ちょっと恥ずかしい。
校門を出てからは手を繋いで歩いているんだ。
オレから握ったんじゃない。
もちろん咲乃の方から。
……オレから握ってもいいのか?
否定したら違和感が。
オレから握るって相当恥ずかしいぞ。
妹とはどうだっけ――大抵は妹からだな。
基本的にオレからモーションを掛ける前に掛けられている。
男としてどうなのさ。
もっと肉食系でいいのかな。
オレから動かないから好かれているのかもしれないし。
どっちのタイプで動いたらいいんだよ!
「サ~ダメがダンジョン入ったねー。ボ~クは手繋ぎ楽しいんだー」
歌っている。
咲乃が歌を歌っているぞ!
「なんて歌だよ」
「ボクの作詞作曲。ダンジョンから戻れたね!」
「……言われてみれば。そっか、行ってたのか」
「そうだよお、ボクを置いて一人でさぁ。ああ寂しかった」
ニコニコして言うな。
そういうのさ、可愛いと思っちゃうから。
最近、こいつが何かをするといちいち可愛く見えるんだが。
「あのぉ。サダメちゃん、私とも手をつないでくれない?」
「そりゃいいよ。こちらへどうぞ」
鞄をどうしようかと思う間もなく、美咲が持ってくれた。
空いた手を美咲に差し出してあげる。
何故だか話に加わらないし、ついてくるだけなんだ。
美咲らしくない。
「何を遠慮しているの? 今はどっちが彼女だとか、そういうの無いから」
「それじゃあ手を繋ぎます!」
両手に双子。
妹じゃないんだぜ!
我ながら理解不能な状況。
「随分咲乃と仲が良くなっていますね。嫉妬がうなぎ上りです」
「それなのに来ないのはなんでだよ」
「そうしたいのですけれど……」
「したいけど?」
「好き過ぎて恥ずかしかったり、どうして良いのか分からなかったりで困っているのです……」
体験期間では圧倒的に咲乃の方が話せている。
同クラスだからね。
話のネタは同じことが多くなるから、意識しなくても話せていた。
その点、美咲とは共有する時間が少ないわけだ。
話が盛り上がるまでに多少時間が掛かりやすかったのかな。
振り返るとそう思う。
「話す時間が少なかったもんな。一緒の時間を増やしてみるか?」
「ちょっとサダメ! 体験は終わっているんだけど」
「まあまあ。フェアじゃないっていうか、やっぱり……」
振り向いた咲乃はオレに向かってベロを出した。
「お優しいですこと! ふん! ボクより好きにならないって条件じゃないと嫌だから」
今のベロ出しはキュンときた。
キュンってなんだよと今まで思っていたけど、キュンってなるんだな。
めっちゃ可愛かった。
アンコールしたい。
「とまあ、妹さんも言っているから、そうしてみる?」
「はい!」
「だけどさあサダメ、テスト勉強しなきゃ」
「そうだった! 詰め込み作業しないと」
「それなら私がお手伝いします! 分からない所は聞いてください」
「おお、それは助かる。そっか、それなら内容は勉強だけど話はできるな」
その手があった。
咲乃から勉強材料は提供されているけど、話し相手も欲しい時がある。
実は美咲と話すと言っても、どうしたものかと困っていたからちょうどいい。
あはは。
笑って誤魔化しとこ。
「そんじゃ、今晩よろしくってことで」
美咲の握る手に力が入り、咲乃と競う様に腕を振られる。
オレの腕は交互ではなく、同時に前後に動かされている。
恰好悪いし、歩きにくい。
でもこんな感じで二人と歩くのは初めて。
競っているかとも思ったけど、どうやらどちらも楽しそう。
高校生で手を繋いでブンブン振るなんてそうそう無い。
小学生の遊びっぽいもんな。
たまに小さいころの遊びをすると、やたら楽しい時ってあるよね。
今が正にそれ。
ゴチャゴチャと考えずに今はこの瞬間を楽しみますか。
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