【総集編】 1分怪談短編集

Grisly

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幽霊リゾート

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私は割と優秀な霊媒師。
その腕を見込まれ、ある依頼があった。

今流行りの世界有数の大企業。
人権問題にも力を入れている。
その会社の手掛ける幽霊リゾートだ。

「本物の幽霊に会える」を
コンセプトにしているホテル。
どうやらそのせいで、幽霊が抑えきれなくなり、
問題が起きているらしい。



席に着くと、担当者と弁護士が座っていて、
かなりの書類にサインをした。
守秘義務と言うやつだ。

大企業は何かと、決まり事が多くて大変だ。




早速、仕事にかかる。
ホテルの隅々まで巡回し、
うめき声をあげ、
問題を起こしている幽霊全てと対話して行った。

そして、ついに原因がわかってしまった。
まさか、こんな事が…




私は、担当者を呼び出した。
ホテルの地下。
30人程を収容できる巨大な広場。


「こんな事をしていては、
 被害が出るのは当然です。
 
 今すぐ中止するべきだ。
 例え私でも、これは抑えられない。」


ありとあらゆる拷問器具が揃っていた。
きっと、定期的に使われているのだろう。


「ここをすぐ突き止められるとは、流石です。
 高い給料を払った甲斐があった。
 あなたのその腕で、何とか抑え込んで下さい。」

「ふざけないで下さい。
 
 幽霊を自分で作り出しておいて、
 その呪いは受けたくないから何とかしろ。
 こんなに都合が良く、矛盾している事はない。

 幽霊は私が適当にどこかからとってきますから、
 これは中止すべきだ。」


「ははははは。面白い事を言う。

 それでは安定した供給はできない。
 
 狩猟時代なら、獲物の獲れる時もあれば、
 獲れないときもあり、それが普通だった。

 しかし、現代においてそれは許されない。
 我々は、生きている限り、
 必ず利益を生み出し続けなければならない。
 結果を出し続けなければ生きていけないのです。

 元から、無理な事を追い求めなければ
 生きていけないのが悲しい現実。
 

 
 都市開発を進め、
 遂には星さえ見れなくなった都会で、
 金を払ってプラネタリウムを観る。

 護岸工事をし、
 固めて泳げなくなった砂浜の横に、
 プールを作る。

 皆がそうやって生きている。
 至極真っ当なビジネスという物だ。
 何が矛盾していると言うのですか。」


「しかし、法律は、それを許さない。
 大体貴方達は、
 人権問題にも力を入れているじゃないか。
 こう言う事をさせないためではないのか。」


「貴方はまだ分かっていないようだ。

 法律とは弱い者のためにある。
 それは建前に過ぎないでしょう。

 本質は人を縛るための物。
 正確にはのね。
 独占すら、作り出す物だ。
 
 何度も言うようだが、
 我々は
 利益を生み出し続けなければならないのだ。
 効率よくね。
 
 人権問題に力を入れているのは、
 つまりそう言う事だ。

 プラネタリウムを星空の見えない都会に作り、
 プールを護岸工事の後に作る…」



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