【総集編】 1分怪談短編集

Grisly

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幸運のダイヤ

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S氏には、普段肌身離さず身につけている、
ネックレスがあった。

5年前、ベトナムへ旅行へ行った時、
現地の市場で、何故か惹かれて買った物だ。

幸運のダイヤが、そこに使われているらしい。
なるほど、美しい真っ赤な輝き。
生命力がみなぎってくるようだ。

話を聞けば、幸運のダイヤ。
持ち主は、かつてないほどの
強運に恵まれるらしい。



S氏は、普段はそう言う物を信じない
タイプだったのだが、
旅行での気分の高揚。

また、このダイヤの放つ輝きに惹かれて
相当な額を支払い、買ってしまったのだ。



5年経った今でも肌身離さず持ち歩いている。
効果はと言うと、残念な事に何もなかったのだが。

付けても付けなくても、何も変わらない、
これまで通りの日々。


それならいっその事、外してしまって、
支払った料金を回収しようと思わないこともない。



しかし、その度に不安がよぎるのだ。
俺はとんでもない不幸に見舞われているが、
このネックレスのおかげで
平凡に暮らせているのではないのか。



その結果、S氏は、ギャンブルで大負けしようが、
急な出費に見舞われようが、
このネックレスを
手放す訳には行かないのである。

呪いのネックレスならば、すぐに手放し、
損失を埋めることもできるのだが、
幸福のネックレスは確かめようが…











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