【総集編】童話パロディ短編集

Grisly

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小人の靴屋

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クリスマスの晩。
お爺さんは今日こそは寝てしまわないぞ。
この不思議の正体を突き止めようと思い、

寝たふりをして、注意深く観察すると、
戸棚の中から、13人の小人達が出て来た。

彼等は熱心に働き、
みるみるうちに、素晴らしい靴を作り上げた。

「何て事だ。
 彼等がひっそりと私達を助けてくれていたのだ。
 世の中捨てた物じゃ無い。
 
 一生懸命に働いていたら、
 ピンチの時、
 誰かが必ず救いの手を差し伸べてくれるのだ。

 今度、恩返しをしなければならない。」

彼は大変温かい気持ちになり、
穏やかな表情で眠りについた。




その数分後のことである。
ひっそりと、戸棚の奥にしまってある金庫から、
店の売上をくすねる何やら怪しい小さな人影が…


そもそも、ピンチだからと言って、
何の見返りもなく、誰かが働いてくれる等、
虫の良すぎる話なのだ。



もっと言えば、
そもそも、腕の良い靴職人がいる店の
経営が傾く事自体が不自然な話では…

きっと昔から彼等が働いていたに違いない。




さて、お爺さんがこれを知ってしまったら、
果たして小人達を追い出すだろうか。

贅沢を知り、
働かずともよくなってしまったお爺さん。

もっと言えば、
誰かの才能が、自分の物として
評価される幸福を味わってしまったお爺さん。


彼は悲しい事に、
もう2度と、一生涯、
あの小人達と離れることができない
運命にあるのではないだろうか。


















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