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詐欺師
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昔々。ある男がいた。
生まれた時から、家が借金まみれ。
毎日取り立てに怯える毎日。
身代金目当てに誘拐されることも。
払えるお金も無いので、
家に帰されるのだが。
こういう日常を過ごしていると、
突拍子も無い考えが出てくる。
将来真面目に働いても、
どうにもならない借金なのだ。
15歳になった男は、悪事に手を染める。
すなわち、結婚詐欺。
夫を早くに亡くした、30代の貴族の女。
寂しさを紛らわすあてもない所に、
若い男。
あの人、
聞いたこともない話を沢山知っているわ。
自分が少し冒険しているような感覚。
当然である。
他人のしない苦労を沢山味わっているのだ。
このように、
婚約者として数十人をうまく丸め込み、
借金を完済し、衣食住は保証される。
普通の男ならここで満足する物だが、
もうあんな生活には戻りたくない。
彼は焦燥感に駆られていた。
若い時のトラウマはそう消えるものではない
貴族の婚約者という立場を最大限に利用した
人脈を作り、本を読み漁り、勉強を欠かさず、
体を鍛え、国の情勢を学び…と言った具合。
詐欺とばれる前に、何か身につけなければ。
そして次の詐欺へと繋げてやるのだ。
次第に貴族としての振る舞いが身についた。
当然だ。貴族の婚約者として
貴族と共に生活し、知識をつけたのだ。
そこで、貴族相手に投資詐欺を始めた。
ありもしない企業をでっち上げ、
株券を集めた。
もともと足りない物だらけの男。
何を作れば良いかをよく分かっている。
彼の話は真実味があり、人を惹きつけた。
巨万の富を得た彼は、
遂に会社を立ち上げてしまった。
もともと悪いプランではなかったため、
実行に移すと、大成功したのだ。
なにより、投資詐欺とバレる前に
行動しなければならなかったのだ。
動機は充分だった。
ビジネスで大成功を収めた彼だったが、
ここで新しい願望が出てくる。
昔の事だ。
やはり、男として生まれたからには、
騎士として、手柄を上げなければ。
彼はビジネスで得た金で、
身分を偽り、戸籍をでっち上げ、
貴族の将校として軍隊に入った。
皆が、偽物だと気づく前に、
何か手柄を上げなければならない。
動機は充分だった。
彼は誰よりも功績をあげ、
遂には大将軍へと昇り詰めた。
南方へ遠征に行った時のこと。
王に呼び出された。
「私はどうやらマラリアにかかったようだ。
もう長くはない。
息子はどうにも不出来で、頼りないが、
どうか面倒を見てやってくれ…」
そう言い残し、王は旅立った。
幸いな事に、これを聞いたのは彼だけ。
「王は最期に言い残された。
功績を讃え、私にこの国を託す。と。」
そう皆の前で宣言し、
遂に王になってしまった。
当然皆がおかしいと気づく前に、
王として良い政治を行なわなければならない
動機は充分だった。
ある夜、男は1人でワインを飲んでいた。
最期の時が近づいている。
全く、嘘ばかりで
ろくでもない人生だったが、
こうして国は安泰となり、
世継ぎにも恵まれ、
美しい妻と共に暮らせて幸せだった。
俺がもし違った家庭に生まれていたら、
こんなとんとん拍子に進んだだろうか。
または、
詐欺なんてしなくても済んだだろうか。
職人として手に職をつけたり、
ホテルの支配人として働いてみたり、
なんという事もない会社に入社してみたり
するのも良いな。
定食屋として暮らすのも良い。
しかし、彼は笑い出した。
肩書きに向かい、散々努力し、
肩書きを最大限に利用して、
良い事も悪い事も行う。
詐欺師である自分と何が違うというのだ。
生まれた時から、家が借金まみれ。
毎日取り立てに怯える毎日。
身代金目当てに誘拐されることも。
払えるお金も無いので、
家に帰されるのだが。
こういう日常を過ごしていると、
突拍子も無い考えが出てくる。
将来真面目に働いても、
どうにもならない借金なのだ。
15歳になった男は、悪事に手を染める。
すなわち、結婚詐欺。
夫を早くに亡くした、30代の貴族の女。
寂しさを紛らわすあてもない所に、
若い男。
あの人、
聞いたこともない話を沢山知っているわ。
自分が少し冒険しているような感覚。
当然である。
他人のしない苦労を沢山味わっているのだ。
このように、
婚約者として数十人をうまく丸め込み、
借金を完済し、衣食住は保証される。
普通の男ならここで満足する物だが、
もうあんな生活には戻りたくない。
彼は焦燥感に駆られていた。
若い時のトラウマはそう消えるものではない
貴族の婚約者という立場を最大限に利用した
人脈を作り、本を読み漁り、勉強を欠かさず、
体を鍛え、国の情勢を学び…と言った具合。
詐欺とばれる前に、何か身につけなければ。
そして次の詐欺へと繋げてやるのだ。
次第に貴族としての振る舞いが身についた。
当然だ。貴族の婚約者として
貴族と共に生活し、知識をつけたのだ。
そこで、貴族相手に投資詐欺を始めた。
ありもしない企業をでっち上げ、
株券を集めた。
もともと足りない物だらけの男。
何を作れば良いかをよく分かっている。
彼の話は真実味があり、人を惹きつけた。
巨万の富を得た彼は、
遂に会社を立ち上げてしまった。
もともと悪いプランではなかったため、
実行に移すと、大成功したのだ。
なにより、投資詐欺とバレる前に
行動しなければならなかったのだ。
動機は充分だった。
ビジネスで大成功を収めた彼だったが、
ここで新しい願望が出てくる。
昔の事だ。
やはり、男として生まれたからには、
騎士として、手柄を上げなければ。
彼はビジネスで得た金で、
身分を偽り、戸籍をでっち上げ、
貴族の将校として軍隊に入った。
皆が、偽物だと気づく前に、
何か手柄を上げなければならない。
動機は充分だった。
彼は誰よりも功績をあげ、
遂には大将軍へと昇り詰めた。
南方へ遠征に行った時のこと。
王に呼び出された。
「私はどうやらマラリアにかかったようだ。
もう長くはない。
息子はどうにも不出来で、頼りないが、
どうか面倒を見てやってくれ…」
そう言い残し、王は旅立った。
幸いな事に、これを聞いたのは彼だけ。
「王は最期に言い残された。
功績を讃え、私にこの国を託す。と。」
そう皆の前で宣言し、
遂に王になってしまった。
当然皆がおかしいと気づく前に、
王として良い政治を行なわなければならない
動機は充分だった。
ある夜、男は1人でワインを飲んでいた。
最期の時が近づいている。
全く、嘘ばかりで
ろくでもない人生だったが、
こうして国は安泰となり、
世継ぎにも恵まれ、
美しい妻と共に暮らせて幸せだった。
俺がもし違った家庭に生まれていたら、
こんなとんとん拍子に進んだだろうか。
または、
詐欺なんてしなくても済んだだろうか。
職人として手に職をつけたり、
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するのも良いな。
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しかし、彼は笑い出した。
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