【総集編】読切短編小説集

Grisly

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桃太郎と吉備団子

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「征って参ります。」

遠く鬼ヶ島へと旅立って行く桃太郎を、
お婆さんは、涙を流して見送った。
大事に育てた我が子。当然である。

心配は絶えない。
「ねえ、
 あの子無事に帰ってこられるかしら。」
お爺さんに聞く。

「気の弱い事を言うな。
 そのために育てて来た子どもだ。
 きっとやり遂げる。」

いつものように洗濯物を干し、
気を紛らわそうとしたが、やはり気になる。

理由はなくても、気を紛らわすため、
お爺さんに聞く。

「ねえ、
 あの子無事に帰ってこられるかしら。」

「気の弱い事を言うな。
 そのために2人で頑張って来たんだぞ。
 吉備団子もちゃんと持たせた。」



夕食の準備ができた。
やはりお婆さんは気になってしまう。
親心である。

「ねえ、
 あの子無事に帰って…」

最初のうちは冷静だったお爺さんも、
感情が爆発したのだろう。
遂に声を荒げる。

「気の弱い事を言うな。
 あの子が帰らなければ、
 今度こそ、我々も終わりなのだぞ。
  
 食べれば無敵になる吉備団子。
 あれを開発するのに
 どれだけの犠牲を払ったと思っている。
 
 ある組織からの依頼で、
 この歳になるまで実験を繰り返したが、
 
 1人も成功せず、
 皆凶暴化し、理性と言葉を失い、
 暴れ回る一方。

 幸い、鬼ヶ島に閉じ込めたのだが、
 心の奥底に眠る恨みからか、
 常に我々を狙っている。

 帰巣本能なのだろう。
 村を訪れ、被害をもたらす者達も
 後を絶たない。
 

 まずいことに、
 村人達も勘づき始めた様だ。
 バレないよう、ずっとこんな山奥暮らし。
 距離を取っていたのに…」
 
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