【総集編】日本昔話 パロディ短編集

桃太郎part5

鬼を討ち取り、帰ってきた桃太郎だったが、
彼を待っていたのは平和では無かった。



彼の家はもともと裕福ではない。
鬼に打ち勝った今、お供とはいえども、
吉備団子を与え続けるわけにはいかない。


文句を言い始めたのは犬である。

「もう吉備団子をくれないだって。
　それは話が違う。
　俺達は命懸けで戦ったんだ。
　
　あなたは一生私に吉備団子を
　支払う義務があるのだ。

　それができないと言うのなら、
　俺にも考えがある。」




桃太郎、困ってしまった。
そして、宝物の分割についても多いに揉めていた。
最初に文句を言い始めたのは雉である。

「鬼の目を潰したのは私。
　ほとんど私がとどめを刺したような物です。
　報酬はもちろん、私が1番多く貰うべきだ。」

それに賛同する者も多数。
そして、この話は次第に大きくなっていった。


宝は、元は自分の物だと主張する村人達。



終いにはお爺さんとお婆さん。

「吉備団子があったからこそ勝てたのだ。
　研究費、開発費、材料費、
　私達が回収する権利がある。

　もっと言えば、お前の養育費…」

これが原因で、
桃太郎と、お爺さんお婆さんの関係は破滅を迎える
そして、吉備団子は2度と手に入らなくなった。



鬼ヶ島の分割についても、
大いに揉めている。
最初に文句を言い始めたのは、猿である。

「蟹との戦に敗れ、
　私達は住む場所を失った。

　鬼ヶ島が壊滅した今。
　この島に、新たな建国を宣言する。」

これに関しては、誰も文句を言わなかったが、
国が文句を言ってきた。
我が国が接収する。




遂には、猿達と、国との間で
戦争が始まってしまった。

そして、この戦禍は、更に広がる。


それぞれが複雑に絡み合った利害関係にあるのだ。

最強、最悪の兵器、吉備団子を流し、
暗躍するお爺さん。

過去の栄光と、恩を武器に
村人を唆し、利権に走る桃太郎。

桃太郎に反旗を翻し、
彼のチームを内部から切り崩す犬。

自らの国を取り戻したい猿。

ただひたすらに戦う雉。

平和が訪れたと思ったら、
再び引き裂かれ、戦うことになった村人達。





もはや鬼退治など、
子どものおとぎ話に思える程、
戦争は激しくなっていったのだった…