【アーカイブ】 大好評短編集 後書き付き

専門家

K王国で、米の大凶作が発生した。

王様、すぐに手を打とうとするが、
彼は、国を動かす専門家であり、
農業の専門家ではない。
原因がわからなければどうしようもない。

農民が呼び出された。
しかし、彼は、農作物を作る専門家であり、
凶作を解決する専門家ではなかった。

天文学者が呼び出された。
しかし彼は、天候を予想する専門家であり、
天候を操作する専門家ではなかった。

しかも、調べたところ、
天候は例年通りだった。
ウイルスか何かでは…

医者が呼び出された。
しかし彼は、
人間の病気を解決する専門家であり、
植物の病気を解決する専門家ではなかった。

ならばと、植物学者が呼び出された。
しかし、彼は植物の専門家であって、
ウイルスの専門家ではなかった。

細菌学者も、呼び出されたが、
彼の専門分野は、カビのみ。
米の凶作ウイルスとなると、ちょっと…

事態は解決しないままだった。
悩んでばかりいても仕方がない。

ちょうどクリスマスの時期。
食べ物が少なくても、
年に一度のお祭りだけは、
予定通り開催された。

王様達の前に、
美しいジプシーの踊り娘がやってきた。

会話が耳に入り、こんなことを。
「私は旅しながら、
　各国で、踊りを披露して生きています。
　今日のように。
　
　今の凶作の話、A王国に行った時、
　聞いたことがあります。
　対処法はこのようにして…。」



なんということだ。
解決できたのは、踊りの専門家だったのだ。