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叶わない願い
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ある夜。
優衣が眠りにつこうとすると、
枕元に、妖精が現れた。
少々逞しい、色黒の妖精。
「こんばんは。僕は妖精。ヘンリー。
何でも3つ貴方の願いを叶えてあげる。」
優衣は考えた。
彼女はどちらかと言えば、パッとしない方。
せめてもう少し顔に華があったら良いのに…
「私をもう少し可愛くできる?」
「そんなの簡単さ!」
妖精は、ものの2分で優衣の顔を美しく変えた。
今流行りの整形手術等は、
ハズレの先生を引くと無惨にも失敗する。
また、成功しても、
自分の理想とは違う仕上がりになり
後悔する場合もある。
しかし、不思議な事に、そういう物なのか、
ヘンリーが慣れていて凄腕なのかは
分からないが、
彼女の顔は全く彼女の理想通り。
彼女はその顔でチヤホヤされ、
輝く人生を送ることとなった。
しかし、問題が生じて来た。
美人と言う物は、それはそれで大変である。
あちこちの人間に好かれる分、交友関係も増え、
付き合いでの食事も増える。
美人で好印象である分、期待値も跳ね上がり、
断ればすぐ印象が悪くなるのだ。
行ったら行ったで、
美味しい物を見たら気兼ねなく食べたいのだが、
それを抑制しなければいけない地獄。
思えば、顔が良い悪い等、
何割かのポイントに過ぎない。
結局体型が良くなければ、全て水の泡。
美人ならば、尚更見る目も厳しくなる。
こんなのしんどすぎる。
ヘンリーを呼び出した。
「いくら食べても太らず、
いつでも黒木メイサみたいな体型に
してくれないかしら。」
流石に無理だろうか。
これでは願いは2つ分のような気がしなくもない…
しかし、ヘンリーはいつもの笑顔で答えた。
「そんなの簡単さ!」
遂に優衣は、美人を手に入れたのである。
性格も少し自信がついたのか、
色々な男にモテまくった。
アラブの富豪、東京のストリートレーサー、
実業家、インフルエンサー、俳優…
ありとあらゆる勝ち組の男達と付き合ったが、
優衣は満たされなかった。
彼等は、
確かに私を愛してはくれるかも知れないが、
何も与えてはくれない。
美女といることをステータスとして、
確かに楽しい時間を
心がけてくれているかも知れないが、
それでは何故か満たされない。
私がわがままを言ったら、
美人じゃなくなったら、
歳を取ったらどうなるのだろう。
自分ばかりすり減っていく気がした。
どんなわがままでも、
ありのままの私を受け入れてくれて、
私のためだけに尽くしてくれる人が良い。
そう思った時、ある人の顔しか浮かばなくなった。
いたじゃないか。
どんな惨めな私でも、受け入れ、
屈託のない笑顔で、愚痴一つなく、
それを解決し、色んな物を与えてくれたあの人。
優衣はヘンリーを呼び出した。
「最後の願いよ。
私と結婚してくれないかしら。
一生私を幸せにして。」
しかし、今度という今度は
ヘンリーの微笑みは見られなかった。
それはそうだろう。
彼女の願いは、この世で最も叶わない願い。
すなわち、好きな人の好きな人になると言う事。
うつむき、首を横に振るヘンリーに、
優衣は更に頼み込んだ。
「なら、せめて私を妖精にして。」
彼女はもう、この世に未練はなかった。
どんな男と付き合っても、
ヘンリーには敵わないのだ。
彼は言う。
「どうしてもと言うなら、
できない事はないけど、
人間には戻れないよ。
それと、妖精は、
人々の願いを叶え続けないと生きられないよ。」
優衣に迷いはなかった。
今の自分は嫌だった。
結婚は無理だとしても、
少しでも彼に近づきたい。
彼の景色を見てみたい。
ついに優衣は妖精になった。
彼女は、仕事に励み、
沢山の人々を幸せにした。
魔術の練習も欠かさず、
他のどの妖精より力をつけた。
しかし、なぜだろう。
もう2度とヘンリーとは会うことが
できなかった。
次第に、優衣は気づいてしまった。
あのヘンリーとかいう妖精。
初めは人間だったに違いない。
どこからか来た妖精に、
叶わない願いを望み…
彼女は、人々を更に幸せにするため、
ますます精力的に活動するようになった。
優衣が眠りにつこうとすると、
枕元に、妖精が現れた。
少々逞しい、色黒の妖精。
「こんばんは。僕は妖精。ヘンリー。
何でも3つ貴方の願いを叶えてあげる。」
優衣は考えた。
彼女はどちらかと言えば、パッとしない方。
せめてもう少し顔に華があったら良いのに…
「私をもう少し可愛くできる?」
「そんなの簡単さ!」
妖精は、ものの2分で優衣の顔を美しく変えた。
今流行りの整形手術等は、
ハズレの先生を引くと無惨にも失敗する。
また、成功しても、
自分の理想とは違う仕上がりになり
後悔する場合もある。
しかし、不思議な事に、そういう物なのか、
ヘンリーが慣れていて凄腕なのかは
分からないが、
彼女の顔は全く彼女の理想通り。
彼女はその顔でチヤホヤされ、
輝く人生を送ることとなった。
しかし、問題が生じて来た。
美人と言う物は、それはそれで大変である。
あちこちの人間に好かれる分、交友関係も増え、
付き合いでの食事も増える。
美人で好印象である分、期待値も跳ね上がり、
断ればすぐ印象が悪くなるのだ。
行ったら行ったで、
美味しい物を見たら気兼ねなく食べたいのだが、
それを抑制しなければいけない地獄。
思えば、顔が良い悪い等、
何割かのポイントに過ぎない。
結局体型が良くなければ、全て水の泡。
美人ならば、尚更見る目も厳しくなる。
こんなのしんどすぎる。
ヘンリーを呼び出した。
「いくら食べても太らず、
いつでも黒木メイサみたいな体型に
してくれないかしら。」
流石に無理だろうか。
これでは願いは2つ分のような気がしなくもない…
しかし、ヘンリーはいつもの笑顔で答えた。
「そんなの簡単さ!」
遂に優衣は、美人を手に入れたのである。
性格も少し自信がついたのか、
色々な男にモテまくった。
アラブの富豪、東京のストリートレーサー、
実業家、インフルエンサー、俳優…
ありとあらゆる勝ち組の男達と付き合ったが、
優衣は満たされなかった。
彼等は、
確かに私を愛してはくれるかも知れないが、
何も与えてはくれない。
美女といることをステータスとして、
確かに楽しい時間を
心がけてくれているかも知れないが、
それでは何故か満たされない。
私がわがままを言ったら、
美人じゃなくなったら、
歳を取ったらどうなるのだろう。
自分ばかりすり減っていく気がした。
どんなわがままでも、
ありのままの私を受け入れてくれて、
私のためだけに尽くしてくれる人が良い。
そう思った時、ある人の顔しか浮かばなくなった。
いたじゃないか。
どんな惨めな私でも、受け入れ、
屈託のない笑顔で、愚痴一つなく、
それを解決し、色んな物を与えてくれたあの人。
優衣はヘンリーを呼び出した。
「最後の願いよ。
私と結婚してくれないかしら。
一生私を幸せにして。」
しかし、今度という今度は
ヘンリーの微笑みは見られなかった。
それはそうだろう。
彼女の願いは、この世で最も叶わない願い。
すなわち、好きな人の好きな人になると言う事。
うつむき、首を横に振るヘンリーに、
優衣は更に頼み込んだ。
「なら、せめて私を妖精にして。」
彼女はもう、この世に未練はなかった。
どんな男と付き合っても、
ヘンリーには敵わないのだ。
彼は言う。
「どうしてもと言うなら、
できない事はないけど、
人間には戻れないよ。
それと、妖精は、
人々の願いを叶え続けないと生きられないよ。」
優衣に迷いはなかった。
今の自分は嫌だった。
結婚は無理だとしても、
少しでも彼に近づきたい。
彼の景色を見てみたい。
ついに優衣は妖精になった。
彼女は、仕事に励み、
沢山の人々を幸せにした。
魔術の練習も欠かさず、
他のどの妖精より力をつけた。
しかし、なぜだろう。
もう2度とヘンリーとは会うことが
できなかった。
次第に、優衣は気づいてしまった。
あのヘンリーとかいう妖精。
初めは人間だったに違いない。
どこからか来た妖精に、
叶わない願いを望み…
彼女は、人々を更に幸せにするため、
ますます精力的に活動するようになった。
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