【新作】読切超短編集 1分で読める!!!

Grisly

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絶滅危惧種保護惑星

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ハリガネネズミ。

それは、5万年もの間、
ひっそりと地球で生息した
生きた化石だった。

しかし、彼等が発見されてから10年。

瞬く間に乱獲及びハンターによる環境破壊が進み、
数10頭を残すのみにまで減少。




それではいけないと、
世界的な保護運動が巻き起こった。

一大プロジェクトとなり、
頭数を回復するため、
遂には近くの星一つを保護星と定め、
ハリガネネズミのみを繁殖させた。






数年後の今日。
果たしてその星で
ハリガネネズミは順調に頭数を増やしているのか。

我々は遂にその保護惑星の
調査へと出かけたのだった。






「船長。これは…」

私は口を途中で閉ざした。

その星にはありえない光景が広がっていた。
まさにそこはハリガネネズミの楽園。
地球ではありえない、光景だった。
まさにハリガネネズミの星。


私は涙を流し、船長に語りかけた。

「何万匹、いや、億かもしれない。
 素晴らしい。

 天敵がいない星で彼等はのびのびと…」





しかし、船長は言った。

「これはいけない。
 10匹を捕獲し、残りは残らず毒殺せよ。」


私は理解できなかった。

「どうしてですか。
 こんなに順調に増えたのに。

 彼等の体に何か異常でも…」


「いや、なにもおかしなところはない。
 それが問題なのだ。」


「意味が分かりかねます。」


「いいかね。絶滅危惧種と言うのは
 数が少なく、貴重だからこそ価値があるのだ。

 これ程までに数を回復してしまえば、
 誰がそこに価値を見出す。」


「確かにそうですが…
 我々はそのために頑張ってきたのでは。
 そもそも、生きた動物を殺める等、人道的に…」


「人道的と言うのならば、
 このプロジェクトに関わる
 数万人の雇用の事を考えるべきだ。

 彼等が職を失えば、
 彼等の家族はどうなる。」


私はなおも食い下がった。

「しかし、そんな人間の都合で…」



「いや、動物や環境の観点から見ても、
 彼等を、減らさねばならない。

 こんなに数が回復しているとなっては、
 世界的な環境保護ムーブメントはどうなる。
 また元の破壊活動に逆戻りだ。

 地球に設置した保護区はどうなる。
 全て取り壊されるのだぞ。
 そちらの方こそが、問題なのではないか。」







私は毒薬投下のボタンを押した。

確かに環境のためには、こうするのが1番だ。






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