【新作】読切超短編集 1分で読める！！！

クレオパトラを見に行った男

私は科学者。

数々の男をたぶらかし、
今日至るまで語り継がれる
永遠の謎。

そう、クレオパトラの素顔。

それを見るために寝る間を惜しみ、
人生を賭けて、研究を完成させた。
目の前にあるものがそれだ。

すなわち、タイムマシーン。

私はワクワクしながら、乗り込んだ。







いざエジプトについてみると、
そこは刺激的な街だった。

整備された美しい港。
黄金に溢れた町並み。
活気に満ちている市場。

私は、ワインや、肉。
スパイスの並ぶ市場を見て回る。



突然、屈強な4人組の男達に囲まれた。

「お前は怪しい身なりをしている。
　ちょっと来い。」

外れの小さな小屋に閉じ込められ、
事情聴取された。

「我々は、自警団のようなものだ。
　この市場の治安を守っている。

　お前は誰で、どこから来たのだ。」


こんなところで怪しまれ、
一生を終えては報われない。

私は必死で話した。
未来の事、私の研究。
そして、私の情熱。
クレオパトラを見たいのだと。

そのためにわざわざ
遥か時空を飛び越え、
ようやくここまで辿り着いたのだ。






すると、彼等は笑いながら言った。

「なるほど、大変面白いやつだ。
　おそらく嘘に決まっているだろうが、
　悪いやつではなさそうだ。

　解放してやろう。ただし…」





最後に笑いながら、こう一言。

「我々の中の誰1人として、
　女王の素顔等、見た者はいない。」




私ははっとした。

現代に生きる我々でも、
芸能人や、大統領、歌手、ハリウッドスター…

何でも良いが、その素顔を見た人物は、
どれくらいいるのだろう。

喋った人は、知り合いになった人は…

同じ時代に生まれたとして、
数える程しかいないのではないのだろうか。

果たして、ここに居続けて、
史料以上の事が分かるだろうか。

下手をすれば、それより情報が少ないかも…




この計画には根本的な欠陥があったようだ。
私は急いで、タイムマシーンに乗り込んだ。