48 / 61
客商売
しおりを挟む
私は水晶玉を覗き込んだ。
「うむ。
あなたは小さい頃、
何か動物を飼っていましたね。」
「ええ、まぁ。」
「そして、その時期に、
一度水に溺れかけたが、一命を取り留めた。」
「ええ。まぁ。」
「最近の話をしましょう。
あなたは何か大事な人を失いましたね。」
「ええ。まぁ。」
「そして、運気を上げるにはどうしたら良いか
知りたくありませんか。」
「ええ。まぁ。」
困った事だ。
この客、返事は「ええ、まぁ。」ばかり。
まぁ、そうは言ってもこの手の客は
珍しい訳ではない。
所詮占い等、
誰にでも当てはまる事を質問しているに過ぎない。
話を広げなければ、
占いなんてしようがないだろう。
そう思っている奴等。
分かりやすく言えば、冷やかしなのだ。
それなら、来なければ良いと思うのだが、
これが客商売の苦しいところ。
客を選べないのだ。
まぁ、もっとも、
この手の客は慣れている。
少し、驚かせてやろう。
少々腹も立っているところだ。
「あなたの家で飼っていたのは、
ゴールデンレトリバーの、
名前はダイス。
肺炎にかかり、9歳で死んでいるな。」
「ええっ…」
少し驚いている。しめたものだ。
「5歳の頃、
お父さんの明さんに連れられて行った、
新葉川というところで、溺れかけたが、
遊びに来ていた、別の家族に助けてもらった。」
「……」
「彼女さんは、あなたの金遣いの荒さを
散々注意したが、改善されることはなく
3日前、それが原因で出て行ったようですな。」
「ええ、そうですが…」
客の顔がみるみる青くなっていく。
「玄関に置いている、カエルの置物。
あれがいけない。運気を下げている。
今すぐ捨てなさい。」
「もう結構です。ありがとうございました。」
逃げ出そうとする彼の手を掴み、
私は続けた。
「私は三流の占い師ではない。
水晶玉を見れば、いちいち聞かなくても、
全てが分かってしまう。
しかし、どうかな。
これでは占いとは呼べないでしょう。
私の仕事の半分はあなたの話を聞くことだ。
はら。聞かなきゃ成立しないでしょう。」
「うむ。
あなたは小さい頃、
何か動物を飼っていましたね。」
「ええ、まぁ。」
「そして、その時期に、
一度水に溺れかけたが、一命を取り留めた。」
「ええ。まぁ。」
「最近の話をしましょう。
あなたは何か大事な人を失いましたね。」
「ええ。まぁ。」
「そして、運気を上げるにはどうしたら良いか
知りたくありませんか。」
「ええ。まぁ。」
困った事だ。
この客、返事は「ええ、まぁ。」ばかり。
まぁ、そうは言ってもこの手の客は
珍しい訳ではない。
所詮占い等、
誰にでも当てはまる事を質問しているに過ぎない。
話を広げなければ、
占いなんてしようがないだろう。
そう思っている奴等。
分かりやすく言えば、冷やかしなのだ。
それなら、来なければ良いと思うのだが、
これが客商売の苦しいところ。
客を選べないのだ。
まぁ、もっとも、
この手の客は慣れている。
少し、驚かせてやろう。
少々腹も立っているところだ。
「あなたの家で飼っていたのは、
ゴールデンレトリバーの、
名前はダイス。
肺炎にかかり、9歳で死んでいるな。」
「ええっ…」
少し驚いている。しめたものだ。
「5歳の頃、
お父さんの明さんに連れられて行った、
新葉川というところで、溺れかけたが、
遊びに来ていた、別の家族に助けてもらった。」
「……」
「彼女さんは、あなたの金遣いの荒さを
散々注意したが、改善されることはなく
3日前、それが原因で出て行ったようですな。」
「ええ、そうですが…」
客の顔がみるみる青くなっていく。
「玄関に置いている、カエルの置物。
あれがいけない。運気を下げている。
今すぐ捨てなさい。」
「もう結構です。ありがとうございました。」
逃げ出そうとする彼の手を掴み、
私は続けた。
「私は三流の占い師ではない。
水晶玉を見れば、いちいち聞かなくても、
全てが分かってしまう。
しかし、どうかな。
これでは占いとは呼べないでしょう。
私の仕事の半分はあなたの話を聞くことだ。
はら。聞かなきゃ成立しないでしょう。」
11
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
一人用声劇台本
ふゎ
恋愛
一人用声劇台本です。
男性向け女性用シチュエーションです。
私自身声の仕事をしており、
自分の好きな台本を書いてみようという気持ちで書いたものなので自己満のものになります。
ご使用したい方がいましたらお気軽にどうぞ
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる