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Grisly

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偉人保護活動

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私は21✖︎✖︎年の人間。

現在の人からすると、
少し未来の人間と言う事になる。

この時代には、タイムマシンが発明され、
時間旅行ができるようになっていた。

しかし、全員ではない。
まだ一般化するにはコストがかかる。

死ぬほど働いたとして、
一生に一度行けるか行けないか。
大昔の海外旅行のような物だ。







しかし、それでも私にはやりたい事があった。
「偉人保護プロジェクト」だ。

誰しもが一度は考えた事があるだろう。

もし、坂本龍馬が暗殺されずに済んだら、
織田信長の命が助かっていたら…

日本は、世界は幾分かマシになっていたはずだ。






歴史を変える恐れがあるとの
反対意見もあったが、

私は本気だった。
本気で活動し、演説をし、宣伝を打った。
賛同する人は多く、寄付が沢山集まった。

賛同する人は増え続けた。
いつの時代も、
現状に不満を抱く人々は多くいる。
少しでもマシな明日が手に入るなら…

一大ムーヴメントとなり、
遂には法律を変え、許可も降りた。






かくして、私を含め30人の、
国を挙げた
スペシャルプロジェクトチームが組まれ、
過去の世界へと送り込まれた。

皆が信念と、情熱。
やる気に満ち溢れた勢いのあるチームだった。








けれども。何故だろう。

国中の天才達が考え抜いた綿密なプラン。
寄付で集まった潤沢な資金。
21✖︎✖︎年の科学技術。

その全てが揃った最高のチームだったが、
全て工作は失敗。

どんな事をやろうとも、
歴史の通りにしかならないのだ。

不思議な事だ。
我々の事を邪魔する勢力があるのかも知れない。







あらゆる手段を使ってよくよく調べてみると、
私達と同じように未来から来たチームが
実はいくつも存在している事が分かった。

彼等の誰かが、
必死に我々の邪魔をしているのかも知れない。

不信感が募ってきた私達は、
その中の1チームと話をする機会を設けた。

皆覚悟を持ってやってきている。
返答によっては、差し違える覚悟だった。







「私達は、本気で偉人を保護し、
 歴史を良い方向へ変えるために活動している。
 
 貴方方が、邪魔をしていると言うなら、
 私達にも考えがある。」



すると、未来のチームが答えた。

「邪魔なんてとんでもない。
 私達も貴方方と同じ気持ちで活動しています。
 
 私達の全てがね。
 時間旅行は未来でもとんでもない金がかかる。
 
 この中に生半可な気持ちでチームに
 加わった者など1人もいない。」



私は尋ねる。

「では、どうして歴史が変わらない。
 変じゃないか。
 私達はこんなにも頑張っているのに。」


未来のチームが答えた。

「ええ。それについて私達も散々考えました。

 改ざんした歴史を修正する勢力があるのか。
 時間の摂理に反するのか…


 そして、結論を出した。
 そのどれもが違っていた。

 がこれなのです。

 つまり、当時の人間が必死で作り上げ、
 未来人も散々色んな事を努力した結果。
 それで出来たのが今の歴史。

 つまり、歴史は変えようがない。」


私は衝撃を受けた。
歴史とは、その時一度だけで
繰り返しの無い物だと思っていた。

なので、手を加えれば簡単に書き換えられると。

しかし、その全てが間違いで、
全力を出し、手を加え、書き換えた結果も含め、
その結果が歴史となっているのだ。

すなわち、我々が何をしようと無駄なのだ。

それなら… 私は疑問に思った。



「それなら、なぜ貴方方は、意味の無い、
 こんな活動を…」




「私達にも分かりません。
 しかし、私達の全員がそうではないですか。

 普通に生きるのもそうでしょう。
 どんなに頑張ろうとも、世界は変わらない。
 自分がいてもいなくても、
 何の変化も無いのです。

 それでも、何かをしなくては生きていけない。
 何かをするのをやめられない…」




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