上 下
10 / 18

救済

しおりを挟む
「海斗様…どうかご無事で…!」
-タッタッタッタッ

グルルルルルルッ
ドラゴンの唸り声が大きい。どうやら近づいているらしい。
松明の火が所々消えていて、急ぎたくても慎重にいかざるを得なかった。
最初は点いていた松明の火が、だんだんと消えてくる。均等に並んで見える灯火は奥まで続いていない。
-スッ
点いている最後の灯火の横を通り過ぎた。
一瞬にして闇に包まれる。壁に手を当てて歩いた。

-スッスッスッスッ
コツンッ
「ん…?」
壁を手探りで歩いていると、目の前に壁のようなものが現れた。
-コツコツッ
「硬い…。この先に大きな力…ドラゴンの魔力を感じるのに…。」
スッスッ…ガチャンッ
-キイイイイイ
「とっ…!」
足が一歩進んだ。どうやら扉だったようだ。
扉が開き、大きな空間が広がっていた。この空間
だけは、異様に明るく、空気も澄んでいた。
「ドラゴン…は!?それに、海斗様は…どこ?」
その空間には何も存在していなかった。ドラゴン、海斗さえ。
「うそ…!?どうして…。確かにドラゴンの唸り声が…。それに海斗様が居ない…!」
ついさっき聴こえてきたはずのドラゴンの唸り声。この層にいるはずの工藤海斗。何もかもが正反対だった。どうして何も無いのか。ドラゴンが居ないのか。肝心の海斗が居ないのか。どうしようもなかった。予想しない結果に私は思わず呆然と立ち尽くしていた。
その時だった。私は前方に、クルクルと回る穴を見つけた。
「なに…これ?」
よく見ると、穴に塵が吸い込まれている。
思わず穴に手を入れた。

-シュンッ
ギュルルルルルルルッ!
「え?きゃあああああ!」
手を入れた途端、穴に体が吸い込まれて、体を飲み込まれた。
それ以降、プツッと私の意識は切断された。

---------------------------

き……。み…。き…み。きみ。きみ!君!

「はっ!?」
何かに呼ばれて、目を覚ました。
「君!大丈夫かい?」
目の前には、金髪の男が立っていて、私に手を差し伸べていた。
「わ…私は…。」
-スッ
手を借りて立ち上がる。
「君、さっきあのワープホールから出てきて、それから気を失っていたんだよ。」
ワープホール。彼はそう言った。私は気を失っていたらしい。
「えと…。ありがとうございます。私…洞窟で回る穴に手を入れて、そしたら意識が…。……!海斗様…は?」
「それはボクが作ったワープホールだね。その、海斗様…とやら、ボク知っているかも?」
「本当ですか!?今、どこに!?」
「彼、ドラゴンにボロボロにされていたんだ。たまたま洞窟に鉱石を集めに来ていたんだけど、ボロボロの彼を見つけて、助けたんだ。彼は今この町の医療施設に居るよ。」
「そうなのですね…!海斗様…。あの!ありがとうございます!海斗様、助けて頂いて…。」
「なーに。お安い御用さ。あんな状況で、助けない訳にもいかないからねぇ。それで
君。彼の所にいくんだろう?案内してあげるよ。そんなに遠くないからね。」
「ありがとうございます!是非、よろしくお願いします!」
「じゃあ、いこっか。」

--------------------------
「あの…ここはどこなんですか?」
「ああ、そうか。ワープしてきちゃったんだもんね。ここは、あの洞窟のある町からかなり遠い町だけど、ラインストルムっていう所だよ。」
「そうなんですね…。早く海斗様を連れて帰らないと…。」
「おっと。ここからだとワープで帰るほか帰り道は無さそうだね。でもボク、魔力を使っちゃって、もうワープホールを作れそうに無いから、数日待っててもらえるかな。」
「分かりました…!待ってますね。」
「うん、ごめんね。……おっと。こうしているうちに、着いたよ。ここが医療施設だ。」

-ウィーン
「すいませーん。例の彼の所へ連れてってよ。連れの方がおいでになってる。」

こちらです。

「じゃあ、ボクはここでまってるよ。行っておいで。」
「はい!ありがとうございます!行って参ります!」

-ウィーン
着きましたよ。

「……!海斗様!!」
「ん…。この声…グレイスか…!?」
「はい…!海斗様!よくご無事で!…こんなにボロボロになって…私が早く駆けつけていれば…本当にごめんなさい!」
「最初はビックリしたよ。いきなり洞窟に飛ばされるんだもんよ。それにしても、グレイス、どうしてここに?」
「そのことなのですが、海斗様のギルドの皆様の代わりに、海斗様を助けに参ったのですが、金髪の方が助けてくれたみたいで…本当に良かったです。」
「なるほどな。ああ。俺も助かったよ。そうだ、帰らないのか?」
「私も海斗様をお連れして帰りたいのですが、ここはあの町からかなり遠いらしくて、ワープするにも、魔力を使ってしまってしばらく帰れないらしいです…。なので、安静にしていて下さい。私が見守っていますから!」
「そうだったんだな。まったく、あの人、助けてくれたは良いものの、何にも話してくれないから、困ってたよ。じゃあ、少し休ませてもらうよ。」
「はい!おやすみなさいませ。」

-------------------------

彼…の…ま…り……く………上手く吸い出せたみたいだね。ククッ

-------------------------
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...