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11話
しおりを挟む響く銃声、カルマはダメだと目を閉じた。
「いってぇ……流石に素手で止めると痛いな」
目を開けたカルマ。そこには人質の前に立つセンジ。驚愕の顔を浮かべるテロリストの仮面が対峙していた。
パンパンと乾いた音が連続する。銃弾はいずれもセンジの手の中に収まった。
「化け物め……!」
戦いが始まる。
「フォリオ! 二人を守れ!」
人質の前から動けないセンジが叫ぶ。
カルマ達の方に向かってきたテロリストは二人。大方、センジの強さをみて生徒達を人質にしようとしているのだろう。
「了解っス!」
叫んだフォリオが乱暴にカルマを後ろに下がらせると戦闘が始まる。
フォリオにとっての幸運はふたつあった。一つは相手が子供だからとナメてかかってきている事。二つめは捕らえるのが目的で銃などの武器を使うつもりがない事。
「ッシ!」
フォリオは強烈なハイキックをテロリストに浴びせる。それだけで昏倒する。言うだけあってか彼は喧嘩の類には慣れていた。
「アンタら弱いな」
「クソガキ!」
残った一人は挑発に乗ると怒りのままに突っ込んでくる。相手の攻撃にカウンターを合わせるとあっさりと倒れた。
「先生と組手やってるからこのレベルなら楽勝だわ」
フォリオは彼らのベルトを引き抜くと縛り上げる。センジの方へ援護に行こうかと思いそちらを見た。
センジの方はという壁を背に囲まれていた。
「この程度なら先生なら余裕か」
背中に人質達の恐怖が伝わってくる。壁を背にしたのには訳があった。後ろを取られたくなかったからだ。守るべきものがいるので後方からの攻撃は対応が遅れるのが理由だった。
「あっちは片付いた様だな。どちらかペンを持ってないか?」
「あの、私持ってます」
秘書の女性から後ろ手で受け取るとそれを構えた。
「ありがとう。さて、お前ら怪我をしたくなかったら武器を捨てて投稿しろ」
向けられるペン先。いつぞやフォリオに向けたやつとは違い本物の殺気を込めている。テロリスト達は真剣を向けられている様に感じるだろう。事実、「うっ」と言い何人かは後退る。
「狼狽えるな! たかがペン一本! 人質もろとも撃ち殺せ!」
仮面が喝を入れる。気圧されていた者達は一斉に引き金を引いた。
黒鉄の咆哮、いくつもの弾丸が迫る。センジは魔力を解き放つ、魔法建材の影響で頭がズシリと重くなったが、気にせずに思い切りペンを上段から振り抜いた。
剣戟から生まれた吹き荒ぶ突風。弾丸は弾かれ地面に跳ねる。それだけでは止まらない。撃った者達も壁に叩きつけられる。誰一人立ち上がれずに呻き声を上げるしか出来ない。
「終わりだ。まだ、やるか」
カツカツと倒れている女の下へと向かうと壊れたペン先を向け告げた。
「ふ、ふふ……ははは! お前は最悪だな!」
「……なに?」
「あの女生徒は答えたぞ! だが、お前は答えられなかった! にもかかわらずだ! 力を振るい主張を潰す」
「それはお前達が間違ったやり方だからだ」
「そこが最悪だと言っているんだ! 己が主張もなく、他者の追随を許さない力を振るう! こんな馬鹿げた話があるか!」
「……!」
痛いところを突かれる。こちらに帰ってきて日が浅いのもあるが世界情勢などセンジは知らない。だが、それでも仮面の言っている事は少なくともセンジには正論に聞こえた。
「……時間か、今度会う時までには答えを考えておくんだな」
「捨て台詞みたいだが逃がさないぞ」
「無理さ、もう転移陣は起動している」
その言葉と共に床全体に赤く輝く魔法陣が出現する。
「最後に一応名前を聞いておこうか?」
「ナガイ・センジ」
「ではな勇者殿、また会おう!」
「待て!」
魔法陣が強い光を放つ、視界が晴れるとテロリスト達は一人残らず消えていた。
「魔法は使えないんじゃ無いのかよ」
テロリスト達は去った。達成感はない。センジの心に残ったのは少しのやるせなさだった。
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