上 下
4 / 7

#.5 迷い

しおりを挟む
#5. 迷い

ウッチーは、静かに語り始めるであった。
そんな、途方に暮れ、死も頭を過ぎる程の極限状態に陥って、精神状態すら正気を保つ
事さえ困難を極めていたそうだ。余りに過酷な現実から逃げるように…
辺りは、すっかりと暗闇が覆いつくす世界へと変貌していたらしいが、ウッチーには
その光景すらも受け止める余裕はなく、自分の頭で描いた世界に逃げ込む事で、微かな
希望を見出していたという。
この辺りの記憶は、ハッキリとは覚えていないらしい。後に、じっくりと振り返って
思い出す限りの範囲での話しにはなる。
そんな、自分の描く世界に居てる間に、“こんな所で、死んでたまるか!”といった感情が
強く芽生えたそうだ。具多的に根拠などはないらいし。
そもそも、昔から負けず嫌いな性格で、ピンチになれば、なる程に力を発揮してきたタイプ
だったので、そんな性格的な物も一つの引き金になったと振り返っていた。

その中で、一番に悔しかった事柄が、今回の登山を強行したのか?自分の不甲斐なさに
憤りすら覚えたらしい。その事だけを自問自答していたらしい。
この世は、理屈では説明つかない事が多いのは事実。例えば、死後の世界や宇宙人など
そんな事柄の一つかもしれないが、目を閉じ念じる様に、登山前の自分に忠告したいと
願い続けたらしい。この世に神が存在するなら叶えてくれと、心の奥底から…

そして目を開くと、信じられない現象が起こった!それは、どう言葉で説明していいのか
言葉が見当たらないが、紛れもなき事実だという事は確かであると言う。

な、なんと!!目の前には、登山の準備をしている自分の姿だったのだ!!
そして、空を見上げながら考え事をしているのである。それは、まさしく登山を決行するか
迷っている自分の姿である!
一瞬、何が起こったのか理解が追いつかない状態だったと。そもそも、超常現象や都市伝説
などの話しを信じる訳がないのだから。記者である職業からも、その事は想像できるが…
しかし、その時だけは、そんな説明の付かない事を信じるしか、命が助からないと判断し
恐る恐る、悪天候にも関わらず、登山を決行しようとしている自身に忠告するしかない。
考えるより、行動だ!その一心で、声を掛けた!

『信じられないかもしれないが、今日は急激な天候の変化があり、命の危険性がある!』
『前から楽しみに計画を立て、断念するのは心苦しいとは思うが、断念してほしい!』
懇願するような思いで、言ったそうだ。しかし、その声は届かなかったらしい…
分かりやすく説明すると、その空間には入れるが、過去の人物からは、こちら側は見えて
なく、勿論、会話する事さえもできない。何度も、過去の自分に忠告したらしいのだが
全く反応が無かった事から、そう判断したそうだ。そうしたのも、この現象が一定期間
続くのか、すぐに消失するのか、それさえも分からなかったからで、時間との闘いでも
あったらしい。
そこで、足元にあるテーブルに触れてみた!すると、テーブルに触れる感覚が!
助ける方法がある!確信を持ったウッチーは、過去の自分を家から出さない事を考えた。
とにかく、家の鍵を手にし、玄関のチェーンロックを閉めた。腕時計を確認すると、家を出る2分前だったという。
ここで、薄っすらとはあるが、2分だけを操られる事に気付き出したと。
それを裏付けるように、きっかり2分後に玄関に過去の自分が現れる。昨夜は閉めた覚えのないチェーンロックに違和感を覚えながらも、ためらうことなく家を出るのである。

ここで、腕時計を確認するが、わずか数十秒しか操れていないことに気付いたらしい。
そこで、最寄り駅まで先回りする事にし、当日に乗車した時刻の電車に、過去の自分を
乗車させない事を思いつき、急ぎ足で向かう事にしたそうだ。
いつも、最寄り駅までは徒歩で5分程掛かるらしい。そこで、時間短縮のためタクシー
を使用することにし、なるべく時間差をつける事にする。

直ぐにタクシーに乗り、思惑通り最寄り駅まで到着に成功する。ただ、予定時刻の電車に
乗車させないのか…、悩んだそうだ。
『ウッチー、流石に電車を止めるのは…』
『南朋君、そのまさかなんだよ!』え、マジかよ!まさかとは…
『なりふり構ってられない状況だったし、それしか思いつかなかったんだ』
う~ん、ウッチーも以外に大胆だな!でも、俺も同じ事するかも…、度胸いるけど!

結局、ウッチーは線路内に自ら降りて、駅員の注意も無視し、周囲の冷ややかな視線に
さらされながらも、線路の真ん中美静かに座っていたらしい。
当選のことながら、周りは騒然となる。そして、結果的に警察沙汰になったそうだ。
しかしながら、過去のウッチーが乗車するはずの電車は、大幅に遅れる事になった。

大幅に電車が遅れた事と、天候の悪化もあり、結果的に登山は諦めることになった。
その事で、自分の命を救う事になった。
そう!時間を操る能力を持っているのは、ウッチー自身であり、そして、今現時点で
この能力を使用できるのは、ウッチーのみだという事になる。
そして、選ばれたのが俺である!え、オレーー!で、いいの…って思うが。
『とにかく、俺の前で起きた事や、壮絶な話しを聞いて、信じるしかねーか』
『まぁ、実際に南朋くんも操れるようになれば、実感が沸くと思うけどね』
『だな、それはそうと、カレーはどうなってんかな…、時間も時間だし』
『あ、そうだな。ついつい忘れたよ』え、マジか!忘れないでーー。一番重要なの…
『まぁ、そんな焦らなくても、カレーなんて直ぐに出来るから』
『因みに、お母さんは辛口で大丈夫かな?』
『えー、分かんねーけど、多分いけんじゃねーかな』最近、沙紀のカレー食ってないし…
『よし、それじゃ、今から作るか!南朋くんにも手伝ってもらうから』
俺も、やるのかよ!まぁ、仕方ねーか。

それから、ウッチーと一緒にカレー作りをする。ウッチーが言ってたように、さほど時間
は掛からなかった。自炊に慣れているのか、手際が素早い。沙紀以上かも!
『さ、これで完成だ。後は煮詰まるのを待つだけだ』
『え、もう終わりなんだな!なんだ、以外に簡単じゃねーか、まぁ、ほぼ何もしてねーが』
『だろ、誰でも出来るよ。南朋くんも直ぐに出来るようになるって』
『お、そろそろ煮詰まってきたかな。味見してみるか?どう、いける?』
『す、スゲー、マジでうめーーー!』冗談ぬきで、上手すぎる!逆に怪しまれるほどだ…
『そこまで、褒めてもらえると嬉しいなー』

“南朋、話しはどうなったの?メール返信してよ!そろそろ、私たち帰るよ”
ヤベー、話し聞くのに夢中で、スッカリ忘れてた。
“望結、ごめんな。思った以上に話しが長引いた。今カレー作ってるから、もう少し
ゆっくり帰って来てくれるかな?”
“分かった。でも、南朋がカレー作れんの?あんまり期待しないで、帰ろっと”
なんだ、コイツらは!まぁ、いいか。早くかえらねーとな。
『南朋君、バイクで送っていくよ』
『ウッチー、マジで助かる!』

原付は乗ったことあるが、大型バイクは、しかも後ろに乗るのは初めてで、少し不安は
あったが、そんな事もいえず…
しかも、ウッチーは、かなりのスピードを出すじゃねーか!自然に、しがみつく力が強く…
でも、電車で帰るよりは、随分と早く家に到着した。なんとか、アリバイ作りも出来る。
『今日は、僕の話しを聞いてくれてありがとね。後は、南朋くん次第だから』
『僕は、南朋くんにも、この能力を操ってほしいと願っている。また、連絡まってるから』
『あと、バイクの後ろに乗るのは初めてみたいだね。少し怖かったかな』
『な、わけねーだろ!ちょっと力入っただけだって。ウッチーありがと』バレてるし…
急いで、台所に向かい、鍋やら、包丁などを無造作に置き、あたかも料理した様にする。
そして、ウッチーの家から持ってきた容器からカレーを取り出すが…、しまったー!
肝心な、ご飯を用!してねー!ヤベー、そうだ、確か棚にチンご飯があったはずだ!
よし、3個パックが2つあるぞ!助かったー。これで、なんとかなる。ふぅ~。

時間をみると、沙紀が帰ってくるであろう時間には十分に間に合いそうだ。
あの2人もまだみたいだしな。これで、誰も疑がわねーだろ。我ながら、完璧だな!

『ただいまーー!あ、カレーのいい匂いがするじゃん』
『そのとーり、俺もやれば出来るって事だ!少しは見直してくれよな』
『それは、味見してから!あ、南朋!チンご飯使ったねー、早くもマイナース!』
な、なに!直ぐに見抜くとは!俺だったら、ぜってーにみやぶれねーけど…
『カ、カレーを作んのに必死で、ついつい忘れたんだって、仕方ねーだろ』
『まぁ、仕方ないか、それより南朋が手作りする料理を食べれる日がくるなんてね』
少し、目を潤ませる沙紀を見て、少し申し訳ない気持ちになる…、実は、なんて言えねー。
『あ、もしかして、レトルトじゃ!初めて作ったにしてはどうも…』
え、そこ!!しかし、どこまで疑えば気が済むんだ!まぁ、実際作ってないんだけど…
『まだ、あの2人も帰ってないし、味見はそれからにしようかな』
ピンポーン!
『あ、グットタイミング!おかえりー。今日は南朋のスペシャルカレーだよ』
お、おーーーい!ハードルあげ過ぎだって!頼むから…、普通にしてくれーーー!
『南朋、やるじゃん!美香、めちゃ美味しそうだよ、メール返信遅くなったのも許す』
い、いや…、そ、それはいいんだけど…、だ・か・ら…、た、助けてーー!

約1時間、俺が作ったとされるカレーの話しで盛り上がる始末…
本来は、喜ぶべきなのだが…、必死の笑顔と、どや顔を作る。カレーを味わう事なく…
ウッチーーー!これは、罰ゲームなの…、時間を操りたーーーい!と心底願うばかり…

それにしても、その能力については、まだまだ謎が多いのも正直ある。
ウッチーが言っていたように、体感しないと分からない物なのかも知れないが…
今日の出来事、聞いた話しを、望結に言葉で説明するにしてもな…、言葉が見つからない
明日から、学校も始まる事だし、まずは俺が能力を手にする方が先決なのかも。
それまでの間に、美香や沙紀に話すべきなのか、悩みどころだ。
とにかく、俺だけでは説明できないな。せめて望結だけでも、ウッチーに会ってもらう
必要性はあるな。説得力も増すだろうし、何よりも、驚きの余り動画を撮り損ねてる…
望結には、ウッチーに会ってもらうしかねーか。
『望結、ちょっといいか。今日の話しなんだけど』
『南朋、どうだったの!その事が、気になって仕方なかったんだよ。連絡もないし』
『ごめん、結論からいうと、俺は信じる!余りに衝撃すぎて、それどころじゃなかった』
『ただ、今日の出来事、話しを聞いても、実感が無いのが本音なんだ』
『言葉で説明しようにも…、だから、望結にも会ってほしい』

望結は、腑に落ちない表情で俺の話しを聞いていた。まぁ、無理もないとは思うが…

『わ、分かった…、会ってみる。日時決まったら教えて』
少し、沈黙してから、望結が呟く。

俺は、ウッチーに、その事や俺の思いをメールする
“今日は、色んな事があり過ぎて、正直疲れた。でも、俺はウッチーを信じることにする
そして、俺も時間を操れる能力を手にし、それを美香の為に役立てたい!望結に話そうと
思ったんだけど、どう説明したらいいか…、だから、望結にも会ってほしい。望結も俺と
一緒で、美香の事件の真相を知りたいと願ってるんだ。あ、そうそう、カレーは好評だった
けど、その事は内緒でw

直ぐに返信が来た
“わかった。南朋くんの思いも含めて。日時は、南朋くんが都合の良い時でいいから。
学校もある事だし、ちゃんと学校には行くようにな。僕も、調べれる範囲で動くから。
新しい情報があれば、連絡するよ。カレーは、どうしよっかなw”

ウッチーも意外に冗談言うんだなwに、しても学校にいけよって!余計なお世話だけどw
まぁ、少なからずは進展してきているし、まずは美香が、いつも通りを取り戻してくれりゃ
いいんだけど…、そこは、沙紀に任しとけば、なんとかなるだろし。

『望結、さっきウッチーにメールしといたから。俺らで日程決めようぜ』
『そだね、明日から学校だし。南朋、学校はちゃんと行くんだよ』
『学校の事は、大きなお世話だってwどいつも、こいつも…wまぁ、美香の事は頼むな』
『オッケー、任しといて!じゃ、明日から、学校だし、もう寝るね』

そうだな、明日から学校かぁ~、色んな奴に色々と聞かれんだろーな。めんどくせーw
でも、なんか新しい事を知ってる奴もいるかもしれねーし、特に、祐樹は調べてそーだし
でも、アイツはバカだから当てにならねーかねw
そろそろ、俺も寝るか、遅刻する訳にいかねーしな。
『お・き・ろー!南朋!アンタ、また遅刻!ほ、ホント、アンタは!』
『毎朝、毎朝、うっーーせって!まだ、大丈夫じゃねーの』
あ、ヤベーーー!とっくに時間過ぎてるし…
『とっくに、あの2人は学校に行ってますけど!早く用意して、行きなさいよ!』
また、いつもと変わらない日常かぁ~、もっと休みてーーw
かったっりーーw、早く能力操りてーーー!

『南朋、お前また遅どいつもこいつも刻か!お前の遅刻病はいつなったら治るんだ』
『ちゃんと、学校きてんだろノッチ!いいじゃねーか』
久々に会っても、相変わらず声がでけーーw、どんなけ元気なんだよw
『南朋!何回言ったら分かるんですかーー!の・の・は・ら・先生と呼べ!』
『はーーーい!わ・か・り・ま・し・た。の・の・は・らせんせーーーい』
はぁ、このやり取りだけで疲れるしw

『おう、南朋。相変わらずだなw』
早速、お前かよ!どいつもこいつも…、何がききてーんだ祐樹のバカはw
『祐樹、休みはどうしてたんだ?』
『まあ、美香ちゃんの事は心配してたけど、でもせっかくの休みだし遊ぶに決まってんだろ』
俺がバカだったな…、やっぱコイツからは、何も情報は気けそーにねーな。
『お前は、どうしてんたんだよ?何回かメールしてきたけど、美香ちゃんと関係あんのか』
『いや、お前が記者の人に何か聞かれてんかなーって思っただけ』
あ、そうだコイツはウッチーと会っているのを忘れてた。しかも名刺貰ってるし。
『あ、あのオッサンか、なんつーてたかな…、まぁ、オレにはかんけーねし』
予想通りw、このバカからは、情報はきけねー。まぁ、バカである意味助かったけどw

久々の学校で、クラスの奴らは、それなりに噂してそうだけど。まぁ、大した事ねーな。
ノッチ含め、先生は何か知ってる可能性はないとも言えねーが、可能性は低いだろうな。
となると、今の所は望結と俺だけか。望結が、新しい情報聞く可能性はあるけど…
でも、事件が起こって時間も経ってるし、そのうちに噂も消えていくだろうし。

やっぱ、この件は俺と望結だけで解明していくしかねーか。その方が、美香にとっても
いいとは思うな。余り騒いで大事になっても、それは、それで厄介だし…
何より、美香の気持ち考えると、それが一番いいし。当面は普通に過ごしながらも、望結と
協力していくのか!それに、まずはウッチーにもう一度会わねーとな。
それと、俺が時間を操る能力を手にしてーし。
忙しくはなりそうだけど、面白くなってきそーだし。当面は遅刻はしない方がいいかw
『相変わらず、コロッケ食べてんだ。また、おごってよ』
『な、ビックリさっせんなよ美香!お前、なんつーか、気分的にはどうなんだ?』
『うん、大分落ち着いたよ。これも、沙紀さんのお陰だね。ホント、南朋が羨ましい』
『なら、よかったけど。大分、顔色も良くなっているみたいだし。俺のお陰もあるなw』
『はぁぁ~、なんでアンタのお陰なの!冗談でしょwwでも望結と、南朋には感謝してる』
『お前もたまには、可愛らしい事いうじゃねーのww』
『そ・ん・な事いいから、コロッケおごれーーーww』
やっぱ、褒めるんじゃなかったw。でも、いつもの美香に戻りつつあるのはうれしいけどな。
『ほらよ、つーか、なんでいつも俺がおごるんだw、今度はお前がおごれよw』

相変わらず、退屈な授業だな。美香の件が気になるせいか、いつも以上に苦痛に感じる。
必死に勉強する奴、寝ぼけている奴、一見なんも変わんねー日常みたいだけど。
まぁ、それが当たり前と言えば、それまでだけど…w
ダメだ、時間がやたらと長く感じる。早く終わんねーかな。しかも一番嫌いな英語だしw
当てられるとうっとしいから、寝たフリでもして、やり過ごすしかねーかなw
休み時間になったら、望結にでもメールして、ウッチーと会う日程でも相談すっか。

“例の件だけど、明日の学校終わりに会うってのはどう?”
“明日かぁ~、分かった。その予定にしとくね”
“サンキュー、その予定でいけるか確認して、また連絡するから”
事は、早い方がいいしな。後は、ウッチーがいけるといいけど…
“急なんだけど、明日の17時くらいって予定空いてんの?”

【キーンコーンカーンコーン】

ちっ、休憩時間はーんだよ。って、しかたねーか。仕事してんだろーし。
次は、えーと、数学か…、暇だし、今後の予定でも整理するか。本気で寝るかもw
でも、ウッチーは俺らの予定に合すって言ってたし、大丈夫だろとは思うけど。
ヤベーーー!マジで爆睡してしまった…ww

“南朋くん、勉強頑張ってるな。予定なんだけど、17時でオッケーだよ。どうしようか?
正門だと目立つし、裏門で待ち合わせでいいかな?”
お、ウッチーから返信きてる!記者ってのは、暇なんかもなw
“勉強がんばってまーすw。オッケーっす。望結にも伝えておく。あ、何か新たな情報ない?”
“そだな、その件に関しては自殺で断定されてるし、目撃者でもいてれば別だけどね…”
やっぱ、そうだよなー、仕方ないな…
“ウッチーから返信あって、明日の17時くらいに裏門に待ち合わせで決定だから”
“オッケー。じゃ、明日ね”
これで、望結が少しでも実感を持ってくれりゃーいいけど…

『望結、ごめん遅れて。まだウッチー来てねーな』
『さ・す・が、遅刻魔の南朋だねw』
『それは、そーと、美香はどうしてるんだ?』
『なんか、一回自分の家に帰って、調べたい事があるんだって…、何だろ?』
『まぁ、親父さんの件で気になる事があるんだろうな。その後は、俺ん家来るんだろ?』
『うん、そう言ってた』
まぁ、それなら問題ないか。何か美香も気づく事あるかも知れねーし。

『南朋くん、遅くなって悪いな。あ、初めまして、南朋くんからは話し聞いてるよね』
『はい、初めまして。望結と言います。ウッチーさんですよね』
『ウッチーでいいよ。急に驚いたでしょ。詳しくは場所変えて説明するね』

車に乗り、ウッチーの家に向かう事になる。
そこで、俺に説明してくれた事や、公園での動画など見せながら、熱く語っている。
それを熱心に聞く望結は、半信半疑ながらも、途中から身を乗り出して聞く姿もあった。
当然の事ながら、驚きを隠せない表情ではあるが、無理もないとは思う…
しかし、ウッチーが美香の事件の真相を暴きたい!その熱意は伝わったと感じる。
一通りの説明を終え、ウッチーが
『望結ちゃん、何でも質問してくれていいからね?』
恐らく、山ほど質問したい事があるのだろが、何から質問していいのか分からない様子だ
自分の中で、何か考えているのか、しばらく沈黙がある。そして…
『うーん、とっても信じられない話しなのが正直な気持ち。だけど、美香を助けたい』
望結の率直で、素直な気持ちが詰まった言葉だろう。
『望結ちゃん、だよね。信じられないよね。それが本音だと思うよ』
『でも、美香ちゃんを救いたいって想いが切実に伝わったよ。それでいいと思うな』

それ以上、望結もウッチーに質問する事はなく、車で家まで送ってもらう事になった。
『ウッチーさん、ありがあとです。まだ実感ないんだけど、美香の為にお願いします』
望結なりの精一杯の表現だと思う。信じる・信じない別にして、美香の事を一番に考えた
その言葉を聞き、俺は何か大切な事に気付かされた様に感じた。
美香を大切にする気持ちは俺も一緒だが、特別な能力ばかりに気を取られていたような…
何より優先すべき事が何か…。それが能力を手にする本来の意味だと…
『おかえりー、おそーいよ望結。あれ、もしかして、南朋とデートだったのw』
『な、わけないじゃん!たまたま、そこで一緒になっただけ』
『だよね~、いくら何でも南朋はないかww』
そーだけどよ…、そこまでいうかーー…w。まぁ、このやり取りがあるって事はいいかなw
『お前は一言多いんだって!あー、腹へったー!沙紀まだかよ』
『あ、今日はね、私の手料理なんだ!沙紀さんをビックリさせよーて思ってね』
『ま、マジで!しかも、ロールキャベツって!どんなけ好きなんだってw』
『美香のロールキャベツひさびさー!めちゃ、美味しいから楽しみ!』

その夜は、沙紀も大はしゃぎで、美香の作ったロールキャベツを囲み、笑顔が絶えなった。
まるで家族のように。俺は、この笑顔が永遠に続けばと、それは俺だけではないのかも…
晩飯が終わって、望結が俺に呟く
『今日の話しを信じる。でもね、美香の笑顔が一番好き。真実も必要かもだけどね…』
『南朋には、その能力を手にしてほしい。私は出来ること協力するから』
望結の本心だと感じた。
『望結の気持ちは十分に伝わった。俺が道を外さねーように見守ってほしい』
『オッケー!南朋は、直ぐに調子にのっちゃうからねww』
『だ・か・ら、一言多いんだってww。まぁ、頼むね』

この場に居てる、誰もが美香の事を想っている事は間違いな。俺も、望結も、沙紀も。
そして、一番大切なのは、美香の気持ちだって事を、俺は忘れつつあったのかも…
それを、初心に戻してくれたのが、望結であり、ウッチーもその一人かもしれない。

俺は、能力ばかりに興味を持ち、美香の事を忘れた訳ではないが、無意識の内に、能力
だけを手にしたい気持ちが先走ってした様に思う。
今までの、望結の発言やメール、ウッチーの言葉などを振り返ってみると、この能力を
手にする事の意味を安易に考え過ぎていたのかも…

今日、望結とウッチーが会ってくれたのは、俺の為でもあったのかも。
まぁ、色んな意味で正解だったんだなって事かな。俺も少しは成長したってかw

それを踏まえて、俺は能力を手にしたい。そして、それを最大限に活かして、あの事件の
真相を追求したい。もしかすると、美香を傷つける事になるかも知れない。
それは、美香だけに限らず、望結や沙紀さえも…
単に、超人的な能力を操るって事だけじゃなく、同時に、運命をも握る覚悟が必要に
なってくるって事なのか…
俺は、その気持ちを素直にウッチーに伝えることにした。
“望結と話し、これまでウッチーに話してもらった事を振り返って、最初は美香の為にと
想っていた気持ちが、能力を手にする事だけを考えていたように思う。その事を、改めて
望結に思い知らせれた気持ちになった。能力を手にし、事件の真相を追求したい気持ちに
変わりないけど、それによるリスクもあるって事も避けられなと思った。
今の俺に、その覚悟があるというと、即答できねーのが本音だ。まぁ、それに気付けた
事だけでもいいのかなってw。考えても始まらねーし、改めて、俺に能力を手にする方法を
教えてほしい!”

“南朋くん、やっぱ君は僕が思っていたセンスの持ち主だよ。実際に僕も、この能力を手に
し、君と同じ悩みを抱えていた時期があった。そうなんだ!大事なのは、南朋くんが言った
事なんだ。それを、能力を手にする前に気付けるとは、正直思ってなかったけどねww。
僕は、まず能力を手にしてからでも、遅くはないとおもっていたからね。南朋くんが思って
いる事は当然の事で、それを率直に話してくれて嬉しいよ。話してくれたって事は、無意識
に覚悟を決めってるって事なんじゃないかな。いずれにせよ、この能力を手に入れるには
それなりに厳しい事もあるから、覚悟しといてね。まぁ、南朋くんなら大丈夫だよ。
こちらこそ、改めて宜しく!あ、カレー以外にも料理も教えるからww。また南朋君の都合
の良い時に連絡して。こちらこそ、改めて宜しく!”

もしかして、オレって!て・ん・さ・いかもーーーww!ってこれがダメなのかw
に、しても料理は余計な気がするけど…w。まぁ、なんかの役に立つからいいか!

それなりに、厳しいってww。あの穏やかなウッチーが、鬼教官みたいに変貌すんの!
うーーーん、そりゃ、ないかなw。でも、遅刻グセはなおさねーと、マズイかもw。
え、山にこもって滝修行…w、針山の上を素足で歩くとか…w。
考えてたら、きりねーなww。とにかく、遅刻からなくさねーとな!

これから、どんな事が待ち受けてんのーーー!
正直、怖い面もあるけど、やると決めたら貫き通すのみ!

男に二言は無い!何があろうと、ビビらねーぞ!!

って、もうこんな時間!早く寝ないと、やべーーーww。

ダメだ!寝る事に集中すると、よけーに寝れないww。
しおりを挟む

処理中です...