王立図書館の副館長は健康のためにドラゴンを飼うことにした

おにぎり1000米

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第27話 ルーク・セクストンの真実について

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「あっ」
 ルークは小さく叫んでラッセルから顔をそむけたが、ラッセルはもうルークの方へ駆け寄って、続き部屋のドアを開いていた。それにルークもその場から動くことができなかった。たったいま耳にした事柄の衝撃もさることながら、問題はもうひとつあった。

「ルーク、まだ寝ていたのか? 具合はどうだ?」
「え、ええ、その」

 ルークは口ごもった。どうしたらいいのかわからなかった。
 ラッセルの顔に浮かんでいるのはルークへの気遣いだけで、ルークがたった今まで、ほとんど壁に耳をくっつけるようにして立ち聞きという恥ずべき真似をしていたとは思ってもいないようだ。
 あるいはラッセルはそれをわかったうえでルークを気遣っているのか。それはつまり、自分ごときに何を聞かれてもべつにかまわないということか。

 それに――それに。

 ルークの膝は自分でも気づかないうちに震えていた。ラッセルの眉が軽く寄ったと思うと、太い腕がルークの背中を支えた。

「まだ調子が悪そうだな。官舎まで送ろう」
「いえ、わ、私は大丈夫……」
「ちっともそう見えない。官舎に持って帰るものは? あ、そうか。ドラゴンがそっちにいるのか」
「え、は、はい?」

 背中にまわっていた腕が腰に移動し、ルークの両足は一瞬宙に浮いた。とそのとき、ルークのズボンの裾から丸いものがふたつころがりおち、長椅子の下へ入りこんだ。ラッセルはきょとんとしたが、ひとまずルークを長椅子に下ろした。開いたドアから館長室の光が差しこんでいるだけなので、ルークの顔色をみるのがやっとだ。

「何か落ちたぞ?」
 ルークがハッと息を飲んだ。
「だめ、それはだめです!」
「何がだめなんだ?」

 ラッセルは長椅子の前にひざまずいた。すると薄暗い中でもはっきりわかるほど、ルークの顔が赤くなる。
「やめてください館長!」
「何の話だ。ほら、これ――」
 ラッセルは拾ったものをルークに差し出そうとして、ハッと固まった。
「これ……は……?」

 ラッセルの手のひらにあるのは透きとおった水色の石である。雫型をしたそれは、夕方ルークが持ってきた小箱の中にあったドラゴンの卵のひとつとそっくり同じ。
「卵――じゃないか」
 みるとルークは長椅子の上で、両手で顔を覆っている。

「ルーク」
「……だめ、だめです。そんなの触っちゃだめ……」
「なぜだ?」
「だって……あっ、あっ……だめ、いやっ、また――」

 ルークは長椅子の上で体をよじり、両腕でみずからをぎゅっと抱いた。うるんだ目が助けを求めるようにラッセルをみつめている。かすかにひらいた唇からもれるのは官能的な吐息で、たちまちラッセルの欲望がぐいっと頭をもたげた。

 まずい。どうなってる。ハーバートとあんな話をした直後に、これはまさか……

 ラッセルはぐっと右手を握りしめた。すでにそこには雫型をした石がふたつある。
「ルーク」
 ラッセルは膝立ちになってルークに顔を寄せた。官能をこらえて苦しげな吐息が、ラッセルの首筋をくすぐった。
「苦しいんだろう。どうしたらいい」
「や、あ、だめ……」

 言葉とは裏腹に、ルークの手はふらふらとラッセルのシャツをつかむ。ラッセルはひきよせられるままルークの上に覆いかぶさった。とたんに学生時代の記憶が押し寄せて来た。

 あのときのことをルークは何ひとつ覚えていないようだが、今度は……。

 ルークの腰帯から下はぐっしょり濡れている。とっくに達しているのに、ルークはいまやラッセルにすがりついて、身もだえながら体を揺すっている。
 いったい何が彼をこんな風にしたのかわからないまま、ラッセルはルークを抱きしめ、布の上からゆっくりと尻をもんだ。自分の欲望を二の次にすることに奇妙な満足を覚えていた。

「あっ、ああっ……ぁ……」
 ルークの腰ががびくんと跳ねる。同時にラッセルの指先は、布の下にあらわれた硬くて丸いものをたしかに感じていた。

 間違いない。ルーク・セクストンはドラゴンだ。

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