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番外編&後日談
貝の口(後編)
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離れの窓からも湖はみえる。段々畑のような地形を生かした敷地だけあって、全室レイクビューが売りなのだ。
藤野谷はロビーの売店のビニール袋を持っている。いつ買い物をしたのかと思ったが、ちょうど到着したのもあって中身を聞きそびれた。夕食のあいだに部屋の座卓には茶菓子が置かれ、続き間に寝る支度がされていた。ガラス戸ごしにテラスの露天風呂がみえる。
俺は脱いだ浴衣をテラスの長椅子に放り出して、今度は足からゆっくり湯につかった。夜になって風が冷え、湯がすこしぬるく感じられるのがちょうどよかった。湯船から眼をあげると夕方早風呂を使った時は気づかなかった、湖を囲む光が視界に入る。上をみるとテラスの軒の先に星が――ひとつふたつみっつ……。
「気持ちいい?」
藤野谷の笑顔が星を隠す。
湯のかさが増え、あふれて、浴槽のふちから流れていく。浴槽のあるテラスはほの暗い。なめらかな湯の感触と針葉樹の匂い、それに藤野谷の肌の匂いが俺を圧倒する。
藤野谷は俺の真横にならぶ。肩と肩がぶつかって湯がぴしゃんと顔まで跳ねる。俺たちは同時に笑い、藤野谷の指が俺の顔にかかったしずくをぬぐった。対抗するように俺は藤野谷の濡れた前髪を撫で、俺たちはいつのまにか腕と腕をからめ、唇を重ねている。湯でぬくもった体がちがう熱にゆっくりと火照る。
ピチャっとまた湯が跳んだ。
「サエ」
「ん?」
「あがろう。のぼせる」
テラスの長椅子からみえる湖は細長く湾曲して、ずっと先まで続いている。この湖の南端は海の近くまで広がっているのだ。風が火照った肌をなぞるのが気持ちがいい。俺と同時に湯を出た藤野谷が浴衣を羽織って長椅子のうしろに回る。
「天?」
問いかけた俺の口に冷たいものが触れた。
「半分ずつだ」
藤野谷は水色をしたアイスの棒を片手に持っている。いつの間に持ってきたのか、なんだか手品のようだ。ひと口齧って棒を俺に渡す。子供っぽい表情をしているのがおかしかった。冷たい甘い氷はなつかしいソーダの味がする。風呂上がりの熱に気持ちよくて、半分どころか全部食べてしまいそうになり、俺はあわてた。
「ごめん、おまえの分」
「いいよ」
藤野谷はいたずらっ子のようにニヤっと笑う。
「俺はこれからサエごと食べるから」
この男はどうしてこんな気恥ずかしいことを平然といえるんだろう。そう思った隙をつくように正面にまわった藤野谷の唇が俺の吐息をふさぐ。俺はぬくもった肌に抱きしめられたまま、眼を閉じて舌をからませた。藤野谷の甘い息を耳たぶに感じ、首筋に感じる。体のあちこちが浴衣の布に擦られ、藤野谷のおかげですっかり敏感になった部分が彼を欲しがってしくしくと疼いた。
「あ――」
胸を弄られて声が出てしまい、俺は慌てて口を閉じた。
「我慢しなくていい」
藤野谷がささやく。
「いつもみたいに啼いて」
「だって……天、ここ、外――」
「どうせ聞こえない」
「でも……でも他にも、あ、あ」
クスッと笑うような声が胸の上で響いた。
「それなら我慢して」
とたんに胸と腰の奥に強い刺激をくわえられ、俺は藤野谷の首にしがみつくようにして声をこらえた。声を出せないと思うと快感が内側にこもるようで、藤野谷の舌も浴衣の布の肌触りも、テラスの長椅子の堅い感触までが刺激になって俺を追いあげようとするし、うしろをほぐす指の動きに勝手に腰がすすみたがる。
「天……」
俺はうるんだ眼で藤野谷をみつめる。
「ん?」
「天……欲し……あ、」
「サエの声、聞かせてくれるなら」
「や……馬鹿……天」
涙がひとすじこぼれ、藤野谷の指がそれをたどる。彼の怒張が俺のそれと重なり、擦りあわされる快感もだが、うしろの疼きが耐えがたいほどだ。すすり泣きそうになるのをこらえているとふいに足と背中が宙に浮いた。藤野谷が俺を抱き上げたのだ。
あっという間にパウダールームに連れこまれ、ガラス戸に夜の風が締め出される。手を壁につかせられ、背中から覆いかぶさる藤野谷の怒張を感じてますます息が上がった。欲望のあまり俺はねだるように腰を揺らした。
「天、天……」
うなじに吐息がかかり、歯が立てられると同時に熱い楔が腰の奥へ打ち込まれる。俺の体はすっかり藤野谷に慣らされて、このごろはヒートでなくても、最初ですらあまり痛みも感じない。はしたないほどに藤野谷の熱を受け入れて、先端が快楽の中心を擦るたびにもっと奥へと誘おうとする。噛まれたうなじからは別の快感が襲ってきて、背筋を滴りおちるような甘さに脳髄の奥がしびれた。
「あ―――っ…」
「サエ……」
揺さぶられながら瞼をあけると涙でけむった視界にパウダールームの鏡がうつった。俺の顔は上気してだらしなく蕩けていた。自分の顔とも思いたくないくらい恥ずかしいのに、藤野谷の腰が自分にぴったりと重なって動く様子に、俺が内側で感じている快楽が同期して止まらない。
ふたりで一気にのぼりつめ、崩れかけた俺の足を藤野谷の腕が抱きとめた。彼の唇はまだうなじに触れていて、俺たちはふたりでひとつの脈の音を聞く。
そのあと布団の上でもさんざん絡み合ったから、俺たちの翌朝の目覚めは遅かった。
朝食は離れの玄関に届けられていた。俺は藤野谷よりかなり遅れて布団から這いだし、朝風呂でやっとけだるさを克服した。体を拭いていると藤野谷が脱衣所に顔をのぞかせる。
「朝飯の用意ができた」
座卓の上に置かれたおひつの白飯はまだ温かかった。藤野谷はポットの味噌汁を椀によそって俺の分までネギを散らす。彩りよく盛られた朝食のおかずを前に俺は箸をとった。藤野谷の箸さばきはとてもきれいだった。昨日の浴衣の帯結びもそうだが、藤野谷の所作や身近なものの扱い方はときおり驚くほどきっちりと正確で、常識を一歩飛び越えた教養を感じさせるときがある。さすが育ちの良い名族だ、というべきなのか。
「サエ?」
藤野谷が怪訝な顔をしているので俺は我に返った。箸や帯結びの話をすると、藤野谷はたいして驚いた様子もなく「渡来さんのおかげだな」といった。
「子供の頃から色々教えてくれた。俺を叱りつけるのもあの人くらいだ。渡来さんがいてくれてよかったよ。もとは伯父が連れてきた人だし、藤野谷家に義理がある家来筋でもない」
「天にそういう人がいてよかった」
「そうだな」
藤野谷は箸を持ったまま急にニヤニヤ笑う。
「俺も昨夜は嬉しかった」
「なんで?」
「サエの帯を結んでやってさ……」
「天、変な笑いかたするなよ」
「そう?」
「顔がたるんでるぞ」
「それはサエの可愛い顔を思いだしたから――帯を前に迷ってるとこもだけど、夜中も――ああ、ちょっとやめてサエ! 足の裏をくすぐるのなし!」
俺は座卓の下で藤野谷の足を蹴飛ばした。
「馬鹿天が。渡来さんに叱られてろ」
午前のうちに俺たちは居心地のよい宿を出た。オーナーはもう発ったという。支配人の横に昨夜の黒服のオメガが立って見送ってくれた。湖の縁を車でしばらく走っていくと、丘を越えた先に別の水平線があらわれる。海だ。
オーナーが昨夜教えてくれた「貝の浜」は、地震と津波で被害にあった浜に姫神が恵みを取り戻したという伝説が残る場所だった。東の空から羽衣をなびかせてふたりの貝の神が舞い降り、水辺の浜砂をすくってまくと、まかれた砂はすべて赤貝や蛤になり、荒れた浜は貝が育つ浅瀬に生まれ変わった、というものだ。
姫神をまつる社が近くの高台にあるらしいが、浜は絶滅危惧種の生息地だとわかって以来、自然公園として整備されていた。白と金の砂にひたひたと潮がよせては引く。車道は遠く、波と風の音以外何も聞こえない。
水際に藤野谷とならんで立つとふたつの影が砂の上に落ちた。もうすぐ昼になる時刻で影の背は低い。
「サエ?」
「ん?」
藤野谷は静かにいった。
「ここにサエと来ることができて嬉しい」
俺は手を伸ばして藤野谷の指をつかんだ。ふたつの影がつながり、ひとつの複雑な輪郭になる。一瞬おいて藤野谷の指が俺の手を握りかえした。貝の口が閉じるようにつないだ影を重ねたまま、俺たちはしばらく黙っていた。水が去っていく砂の上では取り残された貝殻が白い光を放っている。
藤野谷はロビーの売店のビニール袋を持っている。いつ買い物をしたのかと思ったが、ちょうど到着したのもあって中身を聞きそびれた。夕食のあいだに部屋の座卓には茶菓子が置かれ、続き間に寝る支度がされていた。ガラス戸ごしにテラスの露天風呂がみえる。
俺は脱いだ浴衣をテラスの長椅子に放り出して、今度は足からゆっくり湯につかった。夜になって風が冷え、湯がすこしぬるく感じられるのがちょうどよかった。湯船から眼をあげると夕方早風呂を使った時は気づかなかった、湖を囲む光が視界に入る。上をみるとテラスの軒の先に星が――ひとつふたつみっつ……。
「気持ちいい?」
藤野谷の笑顔が星を隠す。
湯のかさが増え、あふれて、浴槽のふちから流れていく。浴槽のあるテラスはほの暗い。なめらかな湯の感触と針葉樹の匂い、それに藤野谷の肌の匂いが俺を圧倒する。
藤野谷は俺の真横にならぶ。肩と肩がぶつかって湯がぴしゃんと顔まで跳ねる。俺たちは同時に笑い、藤野谷の指が俺の顔にかかったしずくをぬぐった。対抗するように俺は藤野谷の濡れた前髪を撫で、俺たちはいつのまにか腕と腕をからめ、唇を重ねている。湯でぬくもった体がちがう熱にゆっくりと火照る。
ピチャっとまた湯が跳んだ。
「サエ」
「ん?」
「あがろう。のぼせる」
テラスの長椅子からみえる湖は細長く湾曲して、ずっと先まで続いている。この湖の南端は海の近くまで広がっているのだ。風が火照った肌をなぞるのが気持ちがいい。俺と同時に湯を出た藤野谷が浴衣を羽織って長椅子のうしろに回る。
「天?」
問いかけた俺の口に冷たいものが触れた。
「半分ずつだ」
藤野谷は水色をしたアイスの棒を片手に持っている。いつの間に持ってきたのか、なんだか手品のようだ。ひと口齧って棒を俺に渡す。子供っぽい表情をしているのがおかしかった。冷たい甘い氷はなつかしいソーダの味がする。風呂上がりの熱に気持ちよくて、半分どころか全部食べてしまいそうになり、俺はあわてた。
「ごめん、おまえの分」
「いいよ」
藤野谷はいたずらっ子のようにニヤっと笑う。
「俺はこれからサエごと食べるから」
この男はどうしてこんな気恥ずかしいことを平然といえるんだろう。そう思った隙をつくように正面にまわった藤野谷の唇が俺の吐息をふさぐ。俺はぬくもった肌に抱きしめられたまま、眼を閉じて舌をからませた。藤野谷の甘い息を耳たぶに感じ、首筋に感じる。体のあちこちが浴衣の布に擦られ、藤野谷のおかげですっかり敏感になった部分が彼を欲しがってしくしくと疼いた。
「あ――」
胸を弄られて声が出てしまい、俺は慌てて口を閉じた。
「我慢しなくていい」
藤野谷がささやく。
「いつもみたいに啼いて」
「だって……天、ここ、外――」
「どうせ聞こえない」
「でも……でも他にも、あ、あ」
クスッと笑うような声が胸の上で響いた。
「それなら我慢して」
とたんに胸と腰の奥に強い刺激をくわえられ、俺は藤野谷の首にしがみつくようにして声をこらえた。声を出せないと思うと快感が内側にこもるようで、藤野谷の舌も浴衣の布の肌触りも、テラスの長椅子の堅い感触までが刺激になって俺を追いあげようとするし、うしろをほぐす指の動きに勝手に腰がすすみたがる。
「天……」
俺はうるんだ眼で藤野谷をみつめる。
「ん?」
「天……欲し……あ、」
「サエの声、聞かせてくれるなら」
「や……馬鹿……天」
涙がひとすじこぼれ、藤野谷の指がそれをたどる。彼の怒張が俺のそれと重なり、擦りあわされる快感もだが、うしろの疼きが耐えがたいほどだ。すすり泣きそうになるのをこらえているとふいに足と背中が宙に浮いた。藤野谷が俺を抱き上げたのだ。
あっという間にパウダールームに連れこまれ、ガラス戸に夜の風が締め出される。手を壁につかせられ、背中から覆いかぶさる藤野谷の怒張を感じてますます息が上がった。欲望のあまり俺はねだるように腰を揺らした。
「天、天……」
うなじに吐息がかかり、歯が立てられると同時に熱い楔が腰の奥へ打ち込まれる。俺の体はすっかり藤野谷に慣らされて、このごろはヒートでなくても、最初ですらあまり痛みも感じない。はしたないほどに藤野谷の熱を受け入れて、先端が快楽の中心を擦るたびにもっと奥へと誘おうとする。噛まれたうなじからは別の快感が襲ってきて、背筋を滴りおちるような甘さに脳髄の奥がしびれた。
「あ―――っ…」
「サエ……」
揺さぶられながら瞼をあけると涙でけむった視界にパウダールームの鏡がうつった。俺の顔は上気してだらしなく蕩けていた。自分の顔とも思いたくないくらい恥ずかしいのに、藤野谷の腰が自分にぴったりと重なって動く様子に、俺が内側で感じている快楽が同期して止まらない。
ふたりで一気にのぼりつめ、崩れかけた俺の足を藤野谷の腕が抱きとめた。彼の唇はまだうなじに触れていて、俺たちはふたりでひとつの脈の音を聞く。
そのあと布団の上でもさんざん絡み合ったから、俺たちの翌朝の目覚めは遅かった。
朝食は離れの玄関に届けられていた。俺は藤野谷よりかなり遅れて布団から這いだし、朝風呂でやっとけだるさを克服した。体を拭いていると藤野谷が脱衣所に顔をのぞかせる。
「朝飯の用意ができた」
座卓の上に置かれたおひつの白飯はまだ温かかった。藤野谷はポットの味噌汁を椀によそって俺の分までネギを散らす。彩りよく盛られた朝食のおかずを前に俺は箸をとった。藤野谷の箸さばきはとてもきれいだった。昨日の浴衣の帯結びもそうだが、藤野谷の所作や身近なものの扱い方はときおり驚くほどきっちりと正確で、常識を一歩飛び越えた教養を感じさせるときがある。さすが育ちの良い名族だ、というべきなのか。
「サエ?」
藤野谷が怪訝な顔をしているので俺は我に返った。箸や帯結びの話をすると、藤野谷はたいして驚いた様子もなく「渡来さんのおかげだな」といった。
「子供の頃から色々教えてくれた。俺を叱りつけるのもあの人くらいだ。渡来さんがいてくれてよかったよ。もとは伯父が連れてきた人だし、藤野谷家に義理がある家来筋でもない」
「天にそういう人がいてよかった」
「そうだな」
藤野谷は箸を持ったまま急にニヤニヤ笑う。
「俺も昨夜は嬉しかった」
「なんで?」
「サエの帯を結んでやってさ……」
「天、変な笑いかたするなよ」
「そう?」
「顔がたるんでるぞ」
「それはサエの可愛い顔を思いだしたから――帯を前に迷ってるとこもだけど、夜中も――ああ、ちょっとやめてサエ! 足の裏をくすぐるのなし!」
俺は座卓の下で藤野谷の足を蹴飛ばした。
「馬鹿天が。渡来さんに叱られてろ」
午前のうちに俺たちは居心地のよい宿を出た。オーナーはもう発ったという。支配人の横に昨夜の黒服のオメガが立って見送ってくれた。湖の縁を車でしばらく走っていくと、丘を越えた先に別の水平線があらわれる。海だ。
オーナーが昨夜教えてくれた「貝の浜」は、地震と津波で被害にあった浜に姫神が恵みを取り戻したという伝説が残る場所だった。東の空から羽衣をなびかせてふたりの貝の神が舞い降り、水辺の浜砂をすくってまくと、まかれた砂はすべて赤貝や蛤になり、荒れた浜は貝が育つ浅瀬に生まれ変わった、というものだ。
姫神をまつる社が近くの高台にあるらしいが、浜は絶滅危惧種の生息地だとわかって以来、自然公園として整備されていた。白と金の砂にひたひたと潮がよせては引く。車道は遠く、波と風の音以外何も聞こえない。
水際に藤野谷とならんで立つとふたつの影が砂の上に落ちた。もうすぐ昼になる時刻で影の背は低い。
「サエ?」
「ん?」
藤野谷は静かにいった。
「ここにサエと来ることができて嬉しい」
俺は手を伸ばして藤野谷の指をつかんだ。ふたつの影がつながり、ひとつの複雑な輪郭になる。一瞬おいて藤野谷の指が俺の手を握りかえした。貝の口が閉じるようにつないだ影を重ねたまま、俺たちはしばらく黙っていた。水が去っていく砂の上では取り残された貝殻が白い光を放っている。
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