上 下
58 / 72

第五十ハ話 親父

しおりを挟む
「なんだ?」

「俺の刀がお前の首に当たった時、切れなかったのはなんでだ?」

「あ~それな。俺は弟達と違って、一時的に皮膚の一部だけを岩のように硬く・・・・・・つまり、岩化がんかさせることができる」

「そんなことできんのかよ・・・・・・」

「もういいか?」

「正直言うと、まだ死にたくはねえ・・・・・・見逃してくれねえか?」

「馬鹿か?見逃すわけねえだろ?」

「だよな・・・・・・」

 ギターノがヒロキの刀を拾う。

「最期はお前の刀で殺してやる。ありがたく思え」

 ヒロキの頭の中である男の姿が一瞬よぎった。

「親父・・・・・・」

「あ?」

「悪い。死んだ親父が頭に浮かんじまった」

 こんな時に親父の姿が浮かんじまうなんて、もうやばいかもな・・・・・・

「死んだ親父か・・・・・・さぞ、お前のような馬鹿だったんだろな」

 ああ、馬鹿だったよ・・・・・・真面目で真っ直ぐで正々堂々と戦うのがモットーな剣士だった・・・・・・

「おっ!この刀、雷魔法の付与付きだったのか!」

 強かったけど、騙されやすくて・・・・・・その結果、命乞いをした魔族に騙され殺された・・・・・・

「この刀、気にいった!」

 だから、俺は忍になりたかった・・・・・・

「お前が死んだら、この刀はもらうぞ?」

 お前らのような奴を欺いて、倒して、捕まえて・・・・・・

「おい!」

 親父のような人を減らしたかった・・・・・・

「まあいい・・・・・・いくぞ」

 ギターノが雷を纏わせた刀を上に構える。

「ちょっと待て!」

「なんだ?」

「親父は馬鹿だが・・・・・・俺のような馬鹿じゃねえ!それだけは覚えとけ!」

「あ?・・・・・・死ぬ前に言うことがそれか?馬鹿じゃねえのか?ぷははは!」

 ああ、俺もなんでこんなこと言ってんだろな・・・・・・馬鹿だと思うよ。けど・・・・・・

「さ~て、今度こそいくぞ!」

 ・・・・・・親父が俺のような奴だと思われたくなかった。

「死ねぇ!」

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

憐の喜び〜あなただけ知らない〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:448pt お気に入り:7

あの恋の贖罪

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:2

余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:27

帝国動乱記 若しくは 婚約破棄された皇女が女帝となるまで

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:27

【完結】人形と呼ばれる私が隣国の貴方に溺愛される訳がない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:454pt お気に入り:8,215

腹黒王子は、食べ頃を待っている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:969

処理中です...