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第十七話 いえ、なんでもありません

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 それは、五センチくらいの黒い禍々しい色をした玉だった。

「これは転移魔玉。名前の通り転移ができる玉。ただ、転移するのに長い呪文と二十人以上の人の身体が必要なの。でも、気絶した人、眠ってる人、死んだ人じゃないとだめなの」

「だから、この店にいるお客さんとお父さん合わせて、二十人を眠らせたり、気絶させたりしたんですか?」

「そう。あと、一応言っとくけど、眠ってるやつらはどんなことがあろうとあと一時間は起きないから、何がなんでも起こそうなんて、無駄なことはしないことね」

「・・・・・・!」

 リルは急にハッとした顔をした。

「どうかしたかしら?」

「いえ、なんでもありません」

 リルは、そう言うと目を反らし、内股になり、そわそわし始めた。

「・・・・・・!もしかして、トイレに行きたいのかしら?」

「違います!」

「じゃあ、なんでそんなに落ち着かないのかしら」
 
「それは・・・・・・」

「・・・・・・やっぱり、トイレに行きたいんじゃないの?」

「違いますって」

「じゃあ、なんだって言う──」

 パリンッ

「!?」

 何かが、割れる音がした。ナメヌルンは、自分の触手にあった転移魔玉がないことに気づく。そして、後ろを見る。

「おお、割ると蒸発するんだな。へぇ~」

 そこにはタケシが廻し姿になって、しゃがみながら割れた転移魔玉の蒸発する様子を眺めていた。





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