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第五話 カンソウガエル

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 カンソウガエルは二本足を少し伸ばした状態で立っていた。  
           
 その後ろからタケシは、こっちを向くなよと思いながら、体勢を低くして、徐々に近づく。

 カンソウガエルとの距離が約二メートルになった。

 よし、あと少し近づければ、掴みかかって・・・・・・と考えてると小枝を踏んでしまう。

「!」

「ゲコッ!」

 その音に反応し、カンソウガエルが身体ごと後ろを向いた。さらにタケシの身体を見る。

「ぷふっ」

 カンソウガエルが、口を手で押さえながら吹き出した。

「・・・・・・この格好を見て笑ったな!おまえ!」

「ケーロ、ケロケロ」

 カンソウガエルは、身体を揺らしながら笑う。

「馬鹿にしやがって・・・・・・!」

 カンソウガエルがタケシに向かって、腕を前に出し、手の甲を見せるようにクイクイと指を動かした。

「その上、挑発とはいい度胸だな・・・・・・だったら、遠慮なくいくぞ!」

 タケシは、カンソウガエルに掴みかかろうとするが、カンソウガエルは横に避けた。 

「だったら・・・・・・」

 タケシは、カンソウガエルめがけて平手で突く─突っ張りという技をやるが、避けられる。

「くっこのっ!」

「ケロ」

 またしても、突っ張りが避けられる。その後も何度も攻撃を仕掛けるが、ことごとく避けられ続けた。

「ちくしょう。どうしたら・・・・・・」

 カンソウガエルが、タケシに見えるように中指だけ立てて、クイクイ動かす。

「ちっ」

 いや、落ち着け!何か、こいつの意表をつく何か・・・・・・と考えてると突然カンソウガエルが誰もいない所へ舌を伸ばした。

「!」

 カンソウガエルは何かを飲み込む。

 虫でも、飲み込んだのか?しかし、さっきの舌は攻撃には使わないのか?まあ、それはそれで助かるが、さっきのは驚いた・・・・・・!と何かを思いつく。

 タケシは体勢を低くして、カンソウガエルめがけて突進した。そして、カンソウガエルの顔の前で、両手合わせるように思いっきり叩いた。

「ゲコッ!」

 カンソウガエルの身体はビクッと止まり、一瞬目をつぶる。

 タケシはそのスキにカンソウガエルの脇腹をギュッと掴む。

「ゲコッ!」

「やっと掴まえたぞ!」

 タケシはそのままカンソウガエルを地面に叩きつけた。

「ゲゴッ!」

 カンソウガエルは、地面に倒れたまま気絶する。


 
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