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七十八話 新しい刀
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それから数週間後──風太の住む村。
「くっ!」
風太と川次郎は地面に書かれた丸の中で互いの腰部分を掴み合い、必死に投げられまいと踏ん張りながら相撲というものをやっていた。
「うりゃっ!」
「!」
川次郎が風太を地面へと投げつける。
風太は息を切らして、仰向けになる。
「大丈夫?」
「はい」
川次郎が風太に手を差し伸べ、風太はその手を掴み、立ち上がる。
「相撲では川次郎さんには敵わないや」
「いや、風太もなかなかだったよ」
「この相撲というのは戦いの訓練でやってますけど、なかなか面白いですね」
「でしょ?河童の間では人気あるんだよ」
「そうなんですか」
二人が話していると、
「風太!」
一本踏鞴の康夫が刀を持ってやってくる。
「それって、もしかして!──」
「ああ、お前のもう一本の刀だ」
康夫は風太に刀を渡す。
「ありがとうございます。鞘から出してもいいですか?」
「わざわざ聞かなくていいぞ、それはもう風太の刀なんだから」
「わかりました!」
風太は刀を鞘から出し、刀をじっと見る。
「おお」
「気にいったか?」
「はい!」
「試しに右手だけでその刀を持って、風車を放ってみろ」
「わかりました」
風太は刀を上に構え、
「風車!」
約三十五寸(約百五センチメートル)の風車の形をした風を放った。
「なんか一気にでかくなったんじゃないか?」
と康夫が川次郎に話し掛ける。
「いや、そんなことはないよ。日を重ねて少しずつ大きいのを放てるようになったんだ。康夫はここ数週間見てなかったから、そう感じるんだよ」
「そっか・・・・・・風太、次は左手のみでやってみろ」
「わかりました!」
風太は左手だけで約三十五寸(約百五センチメートル)の風車を放った。
「左手でも、大きさ変わらずか・・・・・・」
そう言って、康夫が風太に近づく。
「どうでしたか?」
「ああ。よかったよ。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「こっそり、左手でも稽古してたろ?」
「ああ・・・・・・はい。すみません」
「やっぱりか・・・・・・まあいい。明日から空雄と二刀流での稽古だ」
「はい!」
「くっ!」
風太と川次郎は地面に書かれた丸の中で互いの腰部分を掴み合い、必死に投げられまいと踏ん張りながら相撲というものをやっていた。
「うりゃっ!」
「!」
川次郎が風太を地面へと投げつける。
風太は息を切らして、仰向けになる。
「大丈夫?」
「はい」
川次郎が風太に手を差し伸べ、風太はその手を掴み、立ち上がる。
「相撲では川次郎さんには敵わないや」
「いや、風太もなかなかだったよ」
「この相撲というのは戦いの訓練でやってますけど、なかなか面白いですね」
「でしょ?河童の間では人気あるんだよ」
「そうなんですか」
二人が話していると、
「風太!」
一本踏鞴の康夫が刀を持ってやってくる。
「それって、もしかして!──」
「ああ、お前のもう一本の刀だ」
康夫は風太に刀を渡す。
「ありがとうございます。鞘から出してもいいですか?」
「わざわざ聞かなくていいぞ、それはもう風太の刀なんだから」
「わかりました!」
風太は刀を鞘から出し、刀をじっと見る。
「おお」
「気にいったか?」
「はい!」
「試しに右手だけでその刀を持って、風車を放ってみろ」
「わかりました」
風太は刀を上に構え、
「風車!」
約三十五寸(約百五センチメートル)の風車の形をした風を放った。
「なんか一気にでかくなったんじゃないか?」
と康夫が川次郎に話し掛ける。
「いや、そんなことはないよ。日を重ねて少しずつ大きいのを放てるようになったんだ。康夫はここ数週間見てなかったから、そう感じるんだよ」
「そっか・・・・・・風太、次は左手のみでやってみろ」
「わかりました!」
風太は左手だけで約三十五寸(約百五センチメートル)の風車を放った。
「左手でも、大きさ変わらずか・・・・・・」
そう言って、康夫が風太に近づく。
「どうでしたか?」
「ああ。よかったよ。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「こっそり、左手でも稽古してたろ?」
「ああ・・・・・・はい。すみません」
「やっぱりか・・・・・・まあいい。明日から空雄と二刀流での稽古だ」
「はい!」
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