妖戦刀義

和山忍

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三十八話 その言葉忘れるなよ!

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 玉穂に抱きつきながら、結衣が佐吉の方を向き、

 「そうだ・・・・・・え~と佐吉だっけ?姐様とあたしの封印を解いてくれてありがとう。おかげでこうやって姐様と会うことができたよ」

 と満面の笑みで礼を言う。

「それは何より。では、さっそく玉穂様から離れて、負の感情を──」

「やっ!」

 と言いながら、佐吉から目を逸らす。

「あたしは、姐様とまだこうやっていたいの!」

「・・・・・・はあ」

 佐吉がため息をつく。

「結衣。佐吉も呆れておるぞ」

「いえ、別に呆れてるわけでは・・・・・・」

「いいもん!佐吉に呆れられたってかまわないもん!」

「・・・・・・佐吉。わっちと結衣に気をつかうな。正直に申せ」

「・・・・・・では」

 佐吉が玉穂に向かって軽くお辞儀する。

「・・・・・・いささか幼稚というか、こんな奴に負の感情など集めることができるのかと不安です。まだ、この間の旧鼠の方がマシに思えます」

 結衣の身体がピクッと動く。

「・・・・・・言ってくれるじゃないの?人間風情が?」

 玉穂に抱きつきながら、佐吉を睨む。

「だったら、負の感情をたんまり集めてこい。そしたら、土下座して謝ってやる」

「言ったな!その言葉忘れるなよ!」

 そう言いながら、結衣は玉穂から離れる。

「姐様!あたしをさっきいた場所に戻して!」

「ああ。負の感情、楽しみにしとるぞ」

「任せて!たんまり持ってくるから!」

 と結衣は両手を広げながら、玉穂に話す。

 鳥居が現れ、結衣に向かっていく。

 鳥居が結衣を通らせると、結衣はその場からいなくなる。

 そして、鳥居が消える。

「・・・・・・すまなかったな。佐吉」

「いえ。玉穂様の為とあれば、これきし。しかし・・・・・・」



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