妖戦刀義

三十一話 夏海

　風太はいつにも増して、剣の稽古に身が入っていた。
　
　風太の木刀が空雄の首にあたりそうになる。

「！」

　しかし、空雄はすれすれでよけ、

「ぐふっ」

　風太の腹に木刀を当てた。そして、尻もちをつく。

「ふー」

「あと、少しで当たりそうだったのに･･････」

「そうだな、惜しかったな。だが、俺もそう簡単に当てさせるわけにはいかない」

「･･････」

　風太が地面に座ったまま、下にうつむく。

「･･････だが、昨日の経験がよかったのか、前よりも良くはなっている」

「！」

「その調子で油断せず、精進しろ」

「ありがとうございます！」

　風太は笑顔で礼を言った。

　川次郎が風太の様子をじっと眺めていた。

「･･････」

　しばらくして──

「風独楽！」

　風太が日本刀を水平に振りかざすと約十ニ寸（約三十六センチ）の風の独楽が放出され、横回転に回りながら、風独楽の芯棒部分が土を少し刳り吸収していく。

　そして、風独楽が当たると、的は壊れ周りに木片が散らばった。

「威力が風車に比べると弱い気がする」

　風太は少し不満そうに言う。

「まあ、初めてやったのだからね。でも、なかなか上出来だと思うよ」

「そうですか？」

「うん。それで風太」

「はい」

「･･････朝、言ったと思うけど、後少ししたらオラは村に帰るから無茶はしないようにね」

「わかりました。ありがとうござい──！」

　風太が何かに気づく。

「ん？どうかした？」

「川次郎！」

「！」

　川次郎は後ろから聞こえた声に反応して、振り向く。

　そこにいたのは、腰近くまで伸びた青い髪の胸の大きい女性だった。

「夏海なつみ⁉」