妖戦刀義

和山忍

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二十二話 鼠の妖怪

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 風太の村から一里(約三.九キロメートル)離れた村──

「お父!」

 ねずみの妖怪がうつ伏せになってる男の背中に乗って、腕を掴んでいた。

「チューチュッチュッ。お前の娘はかなりの別嬪べっぴんさんだなチュウ」

「それはどうもありが──ぎゃああ!」

「お父!」

 鼠の妖怪が男の腕をへし折る。

「余裕ぶっこいて、お礼言おうとしてんじゃねえチュウウウウ!」

「余裕ぶっこいたわけじゃあ・・・・・・あああ!」

「お父!」

 今度は男の指をへし折った。

「言い訳してんじゃねえチュウウウウ!」

「うう・・・・・・」

「もうやめて!お父を離して!」

 涙を流しながら、懇願する。

「・・・・・・じゃあ、この場で裸になれチュウ」

「待て!それだけは──がああ!」
 
 また、男の指をへし折った。

「お前は黙ってろチュウウウウ!」

「お願い!もうやめてぇ!」

「じゃあ、さっさと脱げチュウウウウ!」

「・・・・・・」

 娘は涙を流しながら脱ごうとするが、途中手が震え止めてしまう。すると・・・・・・

「ぎゃああ!」

「!」

 男の指をへし折った。

「手を止めずにさっさと脱げチュウウ!さもないと今度はこの腕を引き千切るぞチュウウウウウウウ!」

「ごめんなさい!脱ぐから!だから、お願い!もうお父にこれ以上ひどいことしないで!」

「ううっすまねぇ・・・・・・お千代」

 鼠の妖怪が周りを見渡す。

「お前らに一応言っとくが、脱ぐのを妨げたり、俺に近づいたりしても引き千切るからなチュウ」

 それを聞き、村の人達は黙って、下を向いたり、申し訳なさそうな顔をしたりする。

 チュチュチュ、最高だチュウ。負の感情は集まるし、若い娘の裸は見れるし、それで負の感情が集まれば玉穂様に褒めてもらえるチュウ。いいことずくめだチュウ!

 娘が着物の帯を泣きながら、外していくと、その様子を凝視する。

 若い娘が嫌々脱いでいく姿はたまらんチュウと夢中で見ていると・・・・・・

「痛っチュウ!」

 突然、何かに噛まれた。鼠の妖怪は思わず、男の腕を離してしまう。

 すると、今度は横腹に何かが勢いよく当たる。

「ぐほっチュウ!」

 鼠の妖怪は男から転げ落ちるが、すぐ様体勢を立て直す。

「!」

 空雄が飛びながら、男を救出し、その後に草むらから風太と川次郎が現れた。





 



 


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