妖戦刀義

和山忍

文字の大きさ
上 下
13 / 91

十三話 まだ、修行始めたばっかだよ

しおりを挟む
 外は日が落ち、暗くなっていた。それでも、風太は村人の遺体をこのままにはしたくはなかった。川次郎と空雄もそれを察していたのか、もう暗いから明日にしようとは言わなかった。

 壊れなかった松明に火を灯し、埋葬にとりかかった。

 時が流れ、数刻後──

「これで全員だな」

「はい・・・・・・どうもありがとうございます」

 村人の埋葬が終わった。ただ、宗太の墓は形だけのものとなった。

「風太は先に寝ててくれ。一応心配ないと思うが、俺と川次郎で見張りをする」

「ちょっと待って下さい⁉だったら、オイラも・・・・・・」

「風太は寝な。今日はいろいろあったんだから」

 川次郎に肩を掴まれ、止められる。

「・・・・・・わかりました。ありがとうございます」

 風太は家の中で眠りについた。

 そして、朝の卯刻の四ツ時(六時半から七時)──

「昨日、川次郎とも話し合ったんだが、今日から周りの村の見回りと玉穂に関する情報収集しながら俺達も含め、修行をする。まずは、足腰を鍛える為に村まで走っていく」
 
「俺達も?」

「そうだ。今のままでは、玉穂に簡単に殺られてしまう可能性が高い。だから、風太の修行を付けながら、俺達も修行する」

「オラは治癒に専念すると言ったんだけど、貴重な治癒が簡単に死んだらどうするんだって言われてね」

 そう言いながら、川次郎と空雄は人の姿へと変化した。川次郎は小太りした男性に空雄は目つきのきつい筋肉質な身体をした男性になった。

「川次郎、少し太ったか?」

「うん・・・・・・ここ数年でいろいろあったからね」

「?」

「そうだったな。では、さっそく行こうか」

「だね」

「ちょっと、川次郎さん何かあったんですか?」

「それに関しては今日の夜、川次郎からゆっくり聞け・・・・・・影烏」

 空雄は二本指を立てながら、唱えた。空雄の目の前に全身を炭で塗ったような真っ黒い烏が二体現れる。

「この影烏が今から行く村まで、俺達の後を飛んで追いかける。途中はぐれたり、迷ったとしても、案内してくれる」

 風太達は村を出る。空雄が先頭に川次郎、風太の順に走っていた。しばらくすると、川次郎がへばり始め、風太に抜かされる。
 しかし、その風太も川次郎ほどではないが、息を切らし、走りが遅くなっていった。

「やばい、死ぬ」

 川次郎が今にも倒れそうな顔しながら、走る。空雄の姿が見えなくなった。影烏が風太の前に来て、案内をする。もう一体は川次郎の後を追いかけるように飛んでいた。

 ようやく、村へと着いた。川次郎と風太は息を切らしながら、地面に仰向けになっていた。しばらくして、空雄が現れる。

「風太はともかく、川次郎・・・・・・おまえまでへばるとは」

「そもそも、オラは走るのは苦手なんだ」

「風太は大丈夫か?」

 風太はゆっくり起き上がり、座り込む。

「大丈夫と言いたいですけど、まだ息が整いません」

「だろうな。もう少し休んだら、違う村に行くぞ」

「はい」

 この後、村を数箇所回り、住んでいた村に戻ったのは夕方であった。風太は仰向けになり、川次郎は横向きに息を切らし、倒れていた。

「川次郎さん」

「なに、風太?」

「オイラ、強くなれるのかな?」

「・・・・・・それは風太次第だけど、自信なくなっちゃった?」

「オイラ、体力には自信あったけど、今はこうやって倒れる始末です」 

「・・・・・・それ言ったら、倒れてるオラはどうなるよ?」

「すみません!そんなつもりで言ったわけじゃなくて・・・・・・」

 風太は、上半身だけ起き上がらせて、謝罪と弁解を言った。

「大丈夫、怒ってないから。でも、まだ修行始めたばっかだよ。そんなすぐから上手くいかないよ」

 そう言うと、川次郎は起き上がった。

「オイラは夕餉に食べる魚を獲ってくるよ」

 川次郎は歩いて行った。

「・・・・・・」

 風太は少し考え込み、立ち上がる。

「川次郎さん!オイラも手伝います」

 風太は川次郎の後を追いかけた。

 






 


     
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

奇妙丸

0002
歴史・時代
信忠が本能寺の変から甲州征伐の前に戻り歴史を変えていく。登場人物の名前は通称、時には新しい名前、また年月日は現代のものに。if満載、本能寺の変は黒幕説、作者のご都合主義のお話。

処理中です...