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十三話 まだ、修行始めたばっかだよ
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外は日が落ち、暗くなっていた。それでも、風太は村人の遺体をこのままにはしたくはなかった。川次郎と空雄もそれを察していたのか、もう暗いから明日にしようとは言わなかった。
壊れなかった松明に火を灯し、埋葬にとりかかった。
時が流れ、数刻後──
「これで全員だな」
「はい・・・・・・どうもありがとうございます」
村人の埋葬が終わった。ただ、宗太の墓は形だけのものとなった。
「風太は先に寝ててくれ。一応心配ないと思うが、俺と川次郎で見張りをする」
「ちょっと待って下さい⁉だったら、オイラも・・・・・・」
「風太は寝な。今日はいろいろあったんだから」
川次郎に肩を掴まれ、止められる。
「・・・・・・わかりました。ありがとうございます」
風太は家の中で眠りについた。
そして、朝の卯刻の四ツ時(六時半から七時)──
「昨日、川次郎とも話し合ったんだが、今日から周りの村の見回りと玉穂に関する情報収集しながら俺達も含め、修行をする。まずは、足腰を鍛える為に村まで走っていく」
「俺達も?」
「そうだ。今のままでは、玉穂に簡単に殺られてしまう可能性が高い。だから、風太の修行を付けながら、俺達も修行する」
「オラは治癒に専念すると言ったんだけど、貴重な治癒が簡単に死んだらどうするんだって言われてね」
そう言いながら、川次郎と空雄は人の姿へと変化した。川次郎は小太りした男性に空雄は目つきのきつい筋肉質な身体をした男性になった。
「川次郎、少し太ったか?」
「うん・・・・・・ここ数年でいろいろあったからね」
「?」
「そうだったな。では、さっそく行こうか」
「だね」
「ちょっと、川次郎さん何かあったんですか?」
「それに関しては今日の夜、川次郎からゆっくり聞け・・・・・・影烏」
空雄は二本指を立てながら、唱えた。空雄の目の前に全身を炭で塗ったような真っ黒い烏が二体現れる。
「この影烏が今から行く村まで、俺達の後を飛んで追いかける。途中はぐれたり、迷ったとしても、案内してくれる」
風太達は村を出る。空雄が先頭に川次郎、風太の順に走っていた。しばらくすると、川次郎がへばり始め、風太に抜かされる。
しかし、その風太も川次郎ほどではないが、息を切らし、走りが遅くなっていった。
「やばい、死ぬ」
川次郎が今にも倒れそうな顔しながら、走る。空雄の姿が見えなくなった。影烏が風太の前に来て、案内をする。もう一体は川次郎の後を追いかけるように飛んでいた。
ようやく、村へと着いた。川次郎と風太は息を切らしながら、地面に仰向けになっていた。しばらくして、空雄が現れる。
「風太はともかく、川次郎・・・・・・おまえまでへばるとは」
「そもそも、オラは走るのは苦手なんだ」
「風太は大丈夫か?」
風太はゆっくり起き上がり、座り込む。
「大丈夫と言いたいですけど、まだ息が整いません」
「だろうな。もう少し休んだら、違う村に行くぞ」
「はい」
この後、村を数箇所回り、住んでいた村に戻ったのは夕方であった。風太は仰向けになり、川次郎は横向きに息を切らし、倒れていた。
「川次郎さん」
「なに、風太?」
「オイラ、強くなれるのかな?」
「・・・・・・それは風太次第だけど、自信なくなっちゃった?」
「オイラ、体力には自信あったけど、今はこうやって倒れる始末です」
「・・・・・・それ言ったら、倒れてるオラはどうなるよ?」
「すみません!そんなつもりで言ったわけじゃなくて・・・・・・」
風太は、上半身だけ起き上がらせて、謝罪と弁解を言った。
「大丈夫、怒ってないから。でも、まだ修行始めたばっかだよ。そんなすぐから上手くいかないよ」
そう言うと、川次郎は起き上がった。
「オイラは夕餉に食べる魚を獲ってくるよ」
川次郎は歩いて行った。
「・・・・・・」
風太は少し考え込み、立ち上がる。
「川次郎さん!オイラも手伝います」
風太は川次郎の後を追いかけた。
壊れなかった松明に火を灯し、埋葬にとりかかった。
時が流れ、数刻後──
「これで全員だな」
「はい・・・・・・どうもありがとうございます」
村人の埋葬が終わった。ただ、宗太の墓は形だけのものとなった。
「風太は先に寝ててくれ。一応心配ないと思うが、俺と川次郎で見張りをする」
「ちょっと待って下さい⁉だったら、オイラも・・・・・・」
「風太は寝な。今日はいろいろあったんだから」
川次郎に肩を掴まれ、止められる。
「・・・・・・わかりました。ありがとうございます」
風太は家の中で眠りについた。
そして、朝の卯刻の四ツ時(六時半から七時)──
「昨日、川次郎とも話し合ったんだが、今日から周りの村の見回りと玉穂に関する情報収集しながら俺達も含め、修行をする。まずは、足腰を鍛える為に村まで走っていく」
「俺達も?」
「そうだ。今のままでは、玉穂に簡単に殺られてしまう可能性が高い。だから、風太の修行を付けながら、俺達も修行する」
「オラは治癒に専念すると言ったんだけど、貴重な治癒が簡単に死んだらどうするんだって言われてね」
そう言いながら、川次郎と空雄は人の姿へと変化した。川次郎は小太りした男性に空雄は目つきのきつい筋肉質な身体をした男性になった。
「川次郎、少し太ったか?」
「うん・・・・・・ここ数年でいろいろあったからね」
「?」
「そうだったな。では、さっそく行こうか」
「だね」
「ちょっと、川次郎さん何かあったんですか?」
「それに関しては今日の夜、川次郎からゆっくり聞け・・・・・・影烏」
空雄は二本指を立てながら、唱えた。空雄の目の前に全身を炭で塗ったような真っ黒い烏が二体現れる。
「この影烏が今から行く村まで、俺達の後を飛んで追いかける。途中はぐれたり、迷ったとしても、案内してくれる」
風太達は村を出る。空雄が先頭に川次郎、風太の順に走っていた。しばらくすると、川次郎がへばり始め、風太に抜かされる。
しかし、その風太も川次郎ほどではないが、息を切らし、走りが遅くなっていった。
「やばい、死ぬ」
川次郎が今にも倒れそうな顔しながら、走る。空雄の姿が見えなくなった。影烏が風太の前に来て、案内をする。もう一体は川次郎の後を追いかけるように飛んでいた。
ようやく、村へと着いた。川次郎と風太は息を切らしながら、地面に仰向けになっていた。しばらくして、空雄が現れる。
「風太はともかく、川次郎・・・・・・おまえまでへばるとは」
「そもそも、オラは走るのは苦手なんだ」
「風太は大丈夫か?」
風太はゆっくり起き上がり、座り込む。
「大丈夫と言いたいですけど、まだ息が整いません」
「だろうな。もう少し休んだら、違う村に行くぞ」
「はい」
この後、村を数箇所回り、住んでいた村に戻ったのは夕方であった。風太は仰向けになり、川次郎は横向きに息を切らし、倒れていた。
「川次郎さん」
「なに、風太?」
「オイラ、強くなれるのかな?」
「・・・・・・それは風太次第だけど、自信なくなっちゃった?」
「オイラ、体力には自信あったけど、今はこうやって倒れる始末です」
「・・・・・・それ言ったら、倒れてるオラはどうなるよ?」
「すみません!そんなつもりで言ったわけじゃなくて・・・・・・」
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「大丈夫、怒ってないから。でも、まだ修行始めたばっかだよ。そんなすぐから上手くいかないよ」
そう言うと、川次郎は起き上がった。
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川次郎は歩いて行った。
「・・・・・・」
風太は少し考え込み、立ち上がる。
「川次郎さん!オイラも手伝います」
風太は川次郎の後を追いかけた。
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