妖戦刀義

和山忍

文字の大きさ
上 下
12 / 90

十二話 宗太の妖気

しおりを挟む
「名主さんの妖気?」

「そうだ。宗太は生前、もし自分が殺された時に発動するようにその刀に術式を仕込んでいたんだ」

「術式?」

「ああ、発動すると、最初に触れた人間の中に妖気が流れる」

「ちょっと待って下さい!なんで今になって妖気を感じたんですか?名主さんの刀に触れて恐らく一刻は経つのに・・・・・・」

「宗太が死んで、刀を手にした時はまだ妖気が少なかったからわからなかったんだろ」

「えーと、刀の妖気がオイラの中に流れて集まるのに時間がかかったってことですか?いや、でも、玉穂がいなくなった後、手から刀を離していたし・・・・・・」

「刀の妖気は風太の身体の中に流れるが、それは少しで、その妖気を元に、身体の中で作られるんだ」

「じゃあ、作られるのに時間がかかったってことですか?」

「そうだ」

「でも、なんで宗太さんはそのような術式を?」

「昔、宗太は俺の故郷である天狗山で剣術の修行をしていたんだ。その時になぜかはわからないが、蔵之介様に勧められたらしいんだ」

「そうなんですか・・・・・・でも、手にしたのが、悪人だったらやばかったんじゃないですか?」

「その心配はない。二つの条件を満たさないと流れないようになっていたからな」

「二つの条件?」

「ああ、一つ目は宗太の知り合いであること。二つ目は宗太が妖力を手にしても私利私欲の為に使わないと思った人」

「なるほど・・・・・・けど、それでも絶対では──ん?」

 風太は川次郎が涙を流していたのに気がつく。

「どうしたんですか⁉川次郎さん?」

「ごめん。さっきからこらえていたんだけどさ・・・・・・もう限界でさ」

「なんでそんな・・・・・・?」

「オラまで、泣いたら余計不安になるだろ?」

「そんなことは・・・・・・」

 その時、名主さんも涙を流していなかったことを思い出す。

「・・・・・・名主さんも涙をこらえてたのかな?」 

それを聞いた。空雄が口を開く。

「かもな」

 空雄は下を向き、考え込む。

「・・・・・・今さらだが、すまなかった」

「ごめん・・・・・・」  

 胡座をした状態で頭を下げる空雄と川次郎。

「急にどうしたんですか!?頭を上げて下さい!」

「理由はどうあれ、俺達がもっと早く来てれば、被害を抑えられたかもしれない」

「まさか、こんなことになってるとは思わなくて・・・・・・」

「だからって、川次郎さんや空雄さんが悪いわけじゃないんですから、謝らないで下さい・・・・・・そういえば、二人はなぜ、ここに来たんですか?」

「ああ、俺は川次郎の村に来ていてな・・・・・・」

「オラが頼んだんだ。陽子さんの余命が近かったから気になって」

「・・・・・・それはありがとうございます」

「しかし、話は変わるが、これからのことも考えないとな」

「・・・・・・だね」

 川次郎が外を見に行く。

「雨は止んだみたいだね」

 それを聞き、風太が立ち上がる。

「どうした?」

「埋葬をしてきます」

「・・・・・・オラ、手伝うよ」

「俺も」

「・・・・・・ありがとうございます」




 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

江戸の夕映え

大麦 ふみ
歴史・時代
江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。 「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三) そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。 同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。 しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。

陸のくじら侍 -元禄の竜-

陸 理明
歴史・時代
元禄時代、江戸に「くじら侍」と呼ばれた男がいた。かつて武士であるにも関わらず鯨漁に没頭し、そして誰も知らない理由で江戸に流れてきた赤銅色の大男――権藤伊佐馬という。海の巨獣との命を削る凄絶な戦いの果てに会得した正確無比な投げ銛術と、苛烈なまでの剛剣の使い手でもある伊佐馬は、南町奉行所の戦闘狂の美貌の同心・青碕伯之進とともに江戸の悪を討ちつつ、日がな一日ずっと釣りをして生きていくだけの暮らしを続けていた…… 

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

大航海時代 日本語版

藤瀬 慶久
歴史・時代
日本にも大航海時代があった――― 関ケ原合戦に勝利した徳川家康は、香木『伽羅』を求めて朱印船と呼ばれる交易船を東南アジア各地に派遣した それはあたかも、香辛料を求めてアジア航路を開拓したヨーロッパ諸国の後を追うが如くであった ―――鎖国前夜の1631年 坂本龍馬に先駆けること200年以上前 東の果てから世界の海へと漕ぎ出した、角屋七郎兵衛栄吉の人生を描く海洋冒険ロマン 『小説家になろう』で掲載中の拙稿「近江の轍」のサイドストーリーシリーズです ※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』で掲載します

時代小説の愉しみ

相良武有
歴史・時代
 女渡世人、やさぐれ同心、錺簪師、お庭番に酌女・・・ 武士も町人も、不器用にしか生きられない男と女。男が呻吟し女が慟哭する・・・ 剣が舞い落花が散り・・・時代小説の愉しみ

処理中です...