妖戦刀義

和山忍

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二話 平穏な日々

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 風太は身体が大きくなり、田畑仕事をするようになった。

 今日は田に米の苗を植えていた。身体を少し伸ばし、周りを見渡す。田には、まだ苗の植わってない所が多く、風太はまだまだかと思うと、

「おーい、休憩だ!」

 宗太の声が聞こえた。風太は田から出る。桶に貯めてた水で手足を洗い、座って休む。
 
「風太兄ちゃん!」

 風太は声のする方に顔を向ける。そこには五歳くらいの男の子二人と、女の子一人がいた。

「なんだ?」

独楽こまの綱渡りやって!」 

 男の子が風太に独楽を渡す。

「できるかな?ちょっと待ってて」

 独楽に紐を巻いていく。

「危ないから離れて・・・・・・よっしょ」

 独楽を勢いよく投げ、紐が完全に離れる前に、手元に引っ張った。独楽は右手に乗ったものの、しばらくして回らなくなった。

「ああぁ」

 風太と子供達が残念そうに叫ぶ。

「やっぱ難しいなぁ」

 風太が頭を掻きながら言った。

「どうした?」

「名主さん」

「おっ独楽か?」

「はい。今、子供達に綱渡りせがまれたんですけど、上手くいかなくて・・・・・・」

「どれ、貸してみ」

 宗太は独楽を紐で巻いていく。

「離れてな・・・・・・よっと」

 独楽を勢いよく投げ、自分の手元に引っ張った。独楽は右手に乗り、そこから独楽を紐に乗せて綱渡りさせた。

「おお」

「わあ」

「すごーい!」

 その後も宗太は独楽の回転が止まるまで何度も綱渡りさせた。

「ありがとうございます!」

 子供達はお礼を言うと、独楽を持って去って行った。

「相変わらず、上手いですね」

「褒めても何もでないぞ」

 そう言いながら、宗太は顔をにこにこさせる。

「あれって、名主さんが作った独楽ですよね?」

「ああ」

「オイラも独楽や竹とんぼ、風車を作ってもらいましたっけ」

「だな」

「オイラも父ちゃんに、綱渡りせがんだけど・・・・・・」

「・・・・・・できなかったんだろ?」

「ええ」

「不器用だったからな」

「そういえば、名主さんと父ちゃんって仲いいですけど、幼馴染だったんですか?」

「いや、佐吉に会ったのは大人になってからだ。お互い助けられてな」

「へえー」

「ちなみに川次郎は、佐吉に命を助けられたと言ってたな」

「そうなんだ」

「ああ。そろそろ、田植え始めるか」

「はい」

 そこから時は流れ、夕刻。

「ただいま」

「おかえり」

 風太が家に帰ってくると、十六歳くらいの口角に黒子と豊満な胸をした少女が応える。

「咲姉、来てたの?」

「うん、さっきまで陽子さんと少しお話してたんだけど、疲れて寝ちゃったみたい」

 陽子の方を見る。

「どうもありがとう」

「いいえ。今、夕餉作るから、待ってて」

「オイラも手伝うよ」

 しばらくして、食材を入れ、鍋で煮るだけになった時に、咲が風太に話し掛ける

「今日、田植えお疲れ様」

「うん、まだ終わってはないけど」

「でも、お父は田植え早いから、後二日くらいで終わっちゃうんじゃないの?」

「かもしれないね。オイラの二倍いや五倍早いし。名主さん、人間じゃないよ」

「うん、そうね」

「手先も器用だし、面倒見も良いし、ほんと凄い人だよ。ご飯なんか結構食べてるんじゃない?」

「ううん、お父って、ああ見えて少食なのよ」

「そうなの?意外!」

「でも、それですごい体力あるの。不思議よね?」

「ほんとだね」

「あたしはそんなお父が好き。血の繋がりのないあたしを、ここまで育ててくれたし」

「えっ?名主さんと血繋がってないの?」

「あれ、言ってなかった?」

「今、初めて聞いた」

「そっか、ごめん」

「謝ることじゃないけど、驚いた」

「うん。前のお父が死んで、数年後くらいにお母と婚姻したんだ」

「そうだったんだ」

 風太はちらっと陽子の方を見た。

「どうしたの?」

「いや、オイラの父ちゃんは今も必死で、病気を治せる者を探してるのかなと思ってさ」

「・・・・・・そうだね」
    
 その頃、風太達の村から約十里(約三十九キロメートル)離れた森の中で、獣の激しい悲鳴が聞こえた。
そこには倒れた猪と、激しく息を切らした佐吉がいた。

「・・・・・・夕餉にするか」


  








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