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一話 とある農村
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時は日本の江戸時代初期──とある農村の家の中。
「ゴホゴホ」
「母ちゃん大丈夫?」
八歳くらいの丸目をした少年が、少し痩せ細った、肌が白い母の背中をさする。
「ありがとね、風太」
母は風太の頭をなでながら、強面で、がたいが良い男に顔を向ける。
「お父さんもありがとう。良いお医者様を連れて来てくれて」
「気にしないでくれ。それより身体に触るといかんから横になったほうがいい」
「けど、名主さんが来てるのに・・・・・・」
母が言いかけると、吊り目気味の男がにこやかに言う。
「俺のことは気にしないでくれ。陽子さんの身体の方が大事だ」
「名主さんがそう言うなら・・・・・・ありがとうございます」
「礼なんて言わないでくれ。俺の方こそ気を遣わせてしまって、すまない」
陽子は横になりながら、名主に話し掛ける
「いえ、そんなことはありません。名主さんがこうやって来てくれただけで、私は心強いです」
「大袈裟だよ。俺はそろそろお暇するよ」
名主が立ち上がると、父も立ち上がった
「陽子、風太。父ちゃん、名主さんを外まで見送ってくるよ」
「わかった」
「お願いします」
名主と父は外に出る。
そして、名主が周りに人がいないことを確認し、深刻そうに話し掛けた
「佐吉・・・・・・川次郎はなんて言ってたんだ?」
「心の臓を治すのは難しいと言っていた。薬で治るものではないらしい。しかも、それ以外の方法でも治るかわからないと・・・・・・」
「そうか、あいつでも難しいか・・・・・・」
「だから人魚を探しに、海へ行くと言っていた」
「人魚って、まさか肉を食べれば不老長寿になれるという噂を信じてか?妖怪の肉なんか食えるわけないだろ?」
「私もそう言ったよ。そしたら、そんな噂は信じてないと」
「じゃあ、なんで人魚なんか探しに?」
「不老長寿は嘘でも、そんな噂が立つなら、心の臓を治す術があるんじゃないかって・・・・・・けど、期待はしないでくれと言っていた」
「そうだな。相手はう・・・・・・悪い」
「いや、気にしないでくれ。その通りだ。いくら川次郎が河童で、泳ぐのが得意とは言え、海の中を探すのは困難だ。仮に見つけたとしても、治す術を持ってるとは限らない」
「・・・・・・」
「それで宗太に頼みがある」
「なんだ?」
「約五年、陽子と風太の面倒をみてほしい。私は陽子の病気を治せる人、もしくは妖怪を探す旅に出る」
「ちょっと待て!気持ちはわかるが、心当たりはあるのか?」
「ない・・・・・・けど、このまま治療法が見つからなければ、長く持って約五年だと川次郎に言われた。やれることはやっておきたいんだ」
佐吉は地面に座り込み、
「おまえがいるから、安心して探しに行けるんだ。すまないが、頼む」
地面に頭をつける勢いで土下座をする。
「・・・・・・わかった。けど土下座は止めてくれ」
宗太は膝を下ろして佐吉に言った。
「すまん・・・・・・ありがとう」
佐吉は宗太の手を強く握り、目を強く閉じながら言った。
それから、数日後。
「風太、父ちゃんは母ちゃんの病気を治せる者を探す旅に出る。見つかればすぐにでも帰ってくる。しかし、見つからなければ長くて五年は帰らない」
「うん」
「父ちゃんの代わりに母ちゃん頼むぞ!」
「わかった」
「よし、いい子だ」
頭を激しくなでる。さらに抱きしめた。
「・・・・・・」
父はそっと風太から離れる。宗太の方に顔を向けて、話し掛けようとした瞬間──
「今日くらい、名主と言うのは止めてくれよ」
「・・・・・・わかった。宗太、すまないが二人を頼む」
「ああ、心配すんな」
佐吉は村を出ていく。宗太はそっと風太の頭をなでる
「よく耐えたな」
風太は右手で涙を拭った。
それから時が流れ、五年近くが経とうとした。
「ゴホゴホ」
「母ちゃん大丈夫?」
八歳くらいの丸目をした少年が、少し痩せ細った、肌が白い母の背中をさする。
「ありがとね、風太」
母は風太の頭をなでながら、強面で、がたいが良い男に顔を向ける。
「お父さんもありがとう。良いお医者様を連れて来てくれて」
「気にしないでくれ。それより身体に触るといかんから横になったほうがいい」
「けど、名主さんが来てるのに・・・・・・」
母が言いかけると、吊り目気味の男がにこやかに言う。
「俺のことは気にしないでくれ。陽子さんの身体の方が大事だ」
「名主さんがそう言うなら・・・・・・ありがとうございます」
「礼なんて言わないでくれ。俺の方こそ気を遣わせてしまって、すまない」
陽子は横になりながら、名主に話し掛ける
「いえ、そんなことはありません。名主さんがこうやって来てくれただけで、私は心強いです」
「大袈裟だよ。俺はそろそろお暇するよ」
名主が立ち上がると、父も立ち上がった
「陽子、風太。父ちゃん、名主さんを外まで見送ってくるよ」
「わかった」
「お願いします」
名主と父は外に出る。
そして、名主が周りに人がいないことを確認し、深刻そうに話し掛けた
「佐吉・・・・・・川次郎はなんて言ってたんだ?」
「心の臓を治すのは難しいと言っていた。薬で治るものではないらしい。しかも、それ以外の方法でも治るかわからないと・・・・・・」
「そうか、あいつでも難しいか・・・・・・」
「だから人魚を探しに、海へ行くと言っていた」
「人魚って、まさか肉を食べれば不老長寿になれるという噂を信じてか?妖怪の肉なんか食えるわけないだろ?」
「私もそう言ったよ。そしたら、そんな噂は信じてないと」
「じゃあ、なんで人魚なんか探しに?」
「不老長寿は嘘でも、そんな噂が立つなら、心の臓を治す術があるんじゃないかって・・・・・・けど、期待はしないでくれと言っていた」
「そうだな。相手はう・・・・・・悪い」
「いや、気にしないでくれ。その通りだ。いくら川次郎が河童で、泳ぐのが得意とは言え、海の中を探すのは困難だ。仮に見つけたとしても、治す術を持ってるとは限らない」
「・・・・・・」
「それで宗太に頼みがある」
「なんだ?」
「約五年、陽子と風太の面倒をみてほしい。私は陽子の病気を治せる人、もしくは妖怪を探す旅に出る」
「ちょっと待て!気持ちはわかるが、心当たりはあるのか?」
「ない・・・・・・けど、このまま治療法が見つからなければ、長く持って約五年だと川次郎に言われた。やれることはやっておきたいんだ」
佐吉は地面に座り込み、
「おまえがいるから、安心して探しに行けるんだ。すまないが、頼む」
地面に頭をつける勢いで土下座をする。
「・・・・・・わかった。けど土下座は止めてくれ」
宗太は膝を下ろして佐吉に言った。
「すまん・・・・・・ありがとう」
佐吉は宗太の手を強く握り、目を強く閉じながら言った。
それから、数日後。
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「うん」
「父ちゃんの代わりに母ちゃん頼むぞ!」
「わかった」
「よし、いい子だ」
頭を激しくなでる。さらに抱きしめた。
「・・・・・・」
父はそっと風太から離れる。宗太の方に顔を向けて、話し掛けようとした瞬間──
「今日くらい、名主と言うのは止めてくれよ」
「・・・・・・わかった。宗太、すまないが二人を頼む」
「ああ、心配すんな」
佐吉は村を出ていく。宗太はそっと風太の頭をなでる
「よく耐えたな」
風太は右手で涙を拭った。
それから時が流れ、五年近くが経とうとした。
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