1 / 17
シンデレラ改変その一
しおりを挟む
昔、ある国の城下町に特別大きくもなかったが、小さくもなかった屋敷があった。
その屋敷には父と母と娘の三人が暮らしていた。あとは数人のメイドが交替勤務で一日一人働いていた。
「ママ!このデザインどうかな?」
六歳くらいの娘が、お世辞にも上手いとはいえない薄ピンク色のドレスを着た女性の絵を青い瞳の目を輝かせながら、母に見せる。
「あら、いいわね。じゃあ、これを元にレラちゃんのドレスを作ろうか。エラ」
「うん!」
母はエラの金髪のセミロングヘアの頭を優しく撫でる。
レラちゃんとはエラの父が買ってきた成人女性をモデルに作った人形で、大きさは約二十六センチくらいであった。
母は身体が弱く、屋敷からあまり出ることがなかった。しかし、そんな母の楽しみの一つが服作りであった。
エラはそんな母の服を作ってる姿が好きだった。
そして、母と一緒に洋服を考えて作るのはもっと好きだった。
しかし、そんな母もエラが十一歳の時に病気でこの世を去った。
エラは母の悲しみを紛らわすかのように毎日のように服作りをするようになった。
そんなエラの姿を見てなのか、父は仕事で多忙であったが、休みの日は、前よりも母に代わりエラと一日中遊んでくれるようになった。
しかし、それでも足りないと感じたのか、父はその一年後にある女性と結婚した。
その女性には連れ娘が二人いた。どちらもエラより年齢が上だった。
それから、四年後に父が病気で死んでしまう。
父の死後、義理の母とその娘達は人が変わった・・・・・・いや、本性を現したと言うべきだろう。
屋敷で働いていたメイドを辞めさせ、屋敷の家事から何までエラにやらせるようになった。
エラはお金も休みも与えられず、朝から夜まで働かされた。
そんなある日、疲労でエラは暖炉の前で息を切らし、床に座り込んでしまう。
そこに赤髪の女性が現れ、
「エラ!何を休んでいるの!」
とエラに怒鳴りつける。
「ごめんなさい!お義母様!少しだけでいいので、休ませ──きゃあ!」
義理の母はエラの頭に暖炉の冷めた灰をかけた。
「休みたければ、休めばいいわ!その代わり今みたいによけいな仕事ができることを忘れないように!その灰も掃除しときなさい!──灰かぶりのエラ・・・・・・シンデレラ!」
そう言って、義理の母は暖炉の部屋から出ていく。
「・・・・・・」
震えるエラ。そして、目から涙が溢れる。
そして、その日の夜──。
エラは部屋で蝋燭の火を灯し、昔、母と一緒に作った人形のドレスを見ながら、穏やかな顔で人用のドレスを作っていた。
とは言っても、自分が着る為に作ってるわけではなかった。
ただ、こうしてドレスを作っていると実の母と一緒に服作りをしていた、あの楽しかった頃のことを思い出し、心が落ち着くのだ。
悪く言えば、今の辛い状況からの逃避であった。
その屋敷には父と母と娘の三人が暮らしていた。あとは数人のメイドが交替勤務で一日一人働いていた。
「ママ!このデザインどうかな?」
六歳くらいの娘が、お世辞にも上手いとはいえない薄ピンク色のドレスを着た女性の絵を青い瞳の目を輝かせながら、母に見せる。
「あら、いいわね。じゃあ、これを元にレラちゃんのドレスを作ろうか。エラ」
「うん!」
母はエラの金髪のセミロングヘアの頭を優しく撫でる。
レラちゃんとはエラの父が買ってきた成人女性をモデルに作った人形で、大きさは約二十六センチくらいであった。
母は身体が弱く、屋敷からあまり出ることがなかった。しかし、そんな母の楽しみの一つが服作りであった。
エラはそんな母の服を作ってる姿が好きだった。
そして、母と一緒に洋服を考えて作るのはもっと好きだった。
しかし、そんな母もエラが十一歳の時に病気でこの世を去った。
エラは母の悲しみを紛らわすかのように毎日のように服作りをするようになった。
そんなエラの姿を見てなのか、父は仕事で多忙であったが、休みの日は、前よりも母に代わりエラと一日中遊んでくれるようになった。
しかし、それでも足りないと感じたのか、父はその一年後にある女性と結婚した。
その女性には連れ娘が二人いた。どちらもエラより年齢が上だった。
それから、四年後に父が病気で死んでしまう。
父の死後、義理の母とその娘達は人が変わった・・・・・・いや、本性を現したと言うべきだろう。
屋敷で働いていたメイドを辞めさせ、屋敷の家事から何までエラにやらせるようになった。
エラはお金も休みも与えられず、朝から夜まで働かされた。
そんなある日、疲労でエラは暖炉の前で息を切らし、床に座り込んでしまう。
そこに赤髪の女性が現れ、
「エラ!何を休んでいるの!」
とエラに怒鳴りつける。
「ごめんなさい!お義母様!少しだけでいいので、休ませ──きゃあ!」
義理の母はエラの頭に暖炉の冷めた灰をかけた。
「休みたければ、休めばいいわ!その代わり今みたいによけいな仕事ができることを忘れないように!その灰も掃除しときなさい!──灰かぶりのエラ・・・・・・シンデレラ!」
そう言って、義理の母は暖炉の部屋から出ていく。
「・・・・・・」
震えるエラ。そして、目から涙が溢れる。
そして、その日の夜──。
エラは部屋で蝋燭の火を灯し、昔、母と一緒に作った人形のドレスを見ながら、穏やかな顔で人用のドレスを作っていた。
とは言っても、自分が着る為に作ってるわけではなかった。
ただ、こうしてドレスを作っていると実の母と一緒に服作りをしていた、あの楽しかった頃のことを思い出し、心が落ち着くのだ。
悪く言えば、今の辛い状況からの逃避であった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる