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最終話 幸あれ

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 約一年後──夕方ごろの太平洋遊園地。

 幸と登が歩いていると、登がベンチを見る。

「・・・・・・幸」

「何?」

「ここ覚えてる?」

「え?・・・・・・あ!」

 幸は何かを思い出す。

「ここで俺が絶叫系酔いしてる所を幸が声掛けてくれたんだよね?」

「うん、そうだね」

「もし、俺が絶叫系酔いしてなければ幸には出会えなかった」

「・・・・・・その前にお母さんが絶叫系酔いしなかったら、登さんが絶叫系酔いしてても会えなかったかも・・・・・・」

「それ言ったら、姉ちゃんに頼まれてなければ俺は健太とここには来てなかった」

「それ言うなら、お母さんの誘いを受けなかったらあたしも来てなかったかも・・・・・・」

「・・・・・・ぷふっ」

「ふふ」

 二人が笑う。

「・・・・・・いろんなことの積み重ねがあって、俺と幸は出会えたんだね」

「そうだね」

「・・・・・・幸、せっかくだから座らないか?」

「うん」

 幸と登がそのベンチに座る。

「・・・・・・」

 登が幸の前に地面に片膝をついた。

「どうしたの⁉登さん?」

 登はショルダーバッグから何かのケースを取り出す。

「この先、いろいろと迷惑や苦労させるかもしれないけど、浮気はしないと誓う。こんな俺で良ければ結婚してくれませんか?」

「!」

 登はケースを開け、結婚指輪を幸に見せる。

 幸は両手で口を押さえる。

「・・・・・・」

「喜んで」

 幸は満面の笑みに涙目で登の手を両手で握る。

 一年後──幸の実家。

 電話が鳴り出す。

 それに真智が出る。

「もしもし幸?」

「あ、お母さん?」

「どうしたの?」

「新婚旅行のお土産渡したいんだけど、明日空いてる?」

「空いてるわよ。それより登さんとはどうだったの?」

「どうだったのって?」

「それは・・・・・・仲良く過ごせた?」

「うん。過ごせた」

「そう。それはよかったわ」

 電話の脇に写真立てが置いてあった。

 写真立ての中には満面の笑みを浮かべる白無垢しろむく姿の幸と袴姿の登、真智達の写ってる写真が入っていた。


 完   


 ここまで、お読みいただきありがとうございました。    
 
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