浮気されたくない幸の恋愛奮闘記

第百八話 元父その十

　次の日──。

　幸は見立市みたちしにある病院の駐車場にいた。

「･･････」

　幸は病院を見て、中へと向かった。

　数分後──。

　幸は山田雅彦と書かれた病室の前にいた。

「･･････」

　幸は深呼吸する。

　病室のドアを開けた。

　そこにはベッドの上で仰向けになった雅彦の姿があった。

「幸か？」

「･･････そうだよ」

「仕事は？」

「夏季休暇」

「そうか･･････もうそんな時期か」

　雅彦の顔はやせ細り、腕には点滴がされていた。

「なぜ、ここにいるってわかった？」

「探偵にお願いして捜してもらった。今はマンションに住んでるらしいね」

「なるほど･･････マンションの大家には私を尋ねてきた人がいたら、ここにいることを教えていいと電話で伝えてあったが･･････」

「･･････」

「しかし、最後に会った時はもう二度現れないでと言っておいて、なんで探偵を使ってまで私を捜した？」

「それは･･････約束の盲点を見つけて、隠れて尾行するんじゃないかって思ったのと言っておきたいことがあったから」

「ふっ」

　雅彦が下を向いて、馬鹿にしたように笑う。

「私が尾行するとでも思ったのか？ん？･･････まあ、確かにやろうとしたが」

　こいつぅ！

「けど、その前に倒れてしまってね･･････自力で電話してここに運ばれた」

「･･････」

「それで、私に対してどんな悪口を言いに来た？」

「･･････勘違いしないで、あたしは悪口を言いに来たわけじゃない」

「･･････じゃあ、何を言いに来た？」