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第八十九話 幸せからの・・・・・・その十五
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幸と舞はお店の個室でトマトとチーズを使った料理を食べていた。
「イタリア料理ってトマトを使ったものが多いですよね」
「そうね。それにしても美味しいわね」
「そうですね」
幸と舞は話しながら、ナイフとフォークを使って食べる。
「ねえ、幸ちゃん」
「はい」
「何かあった」
幸の手が止まる。
「・・・・・・いえ、何もないですよ」
と幸が目を逸らすように料理を見ながら答える。
「隠しても駄目よ。手と顔にでてるわよ」
幸が気まずそうな顔をして、
「・・・・・・なんで、そう思ったんですか?」
と舞に訊ねる。
「今週に入ってからやたら仕事してたでしょ?・・・・・・もちろん、普段は仕事してないって意味じゃないわよ!ただ・・・・・・嫌なことを思い出さないようにやってるように見えたから・・・・・・」
「・・・・・・誰にも言わないって約束できますか?」
「もちろん」
「・・・・・・実は金曜日の夜に登さんが女性と一緒にアパートに入る所を見たんです」
「え!」
「その時にアパートへ訪ねて確認することもできたんですけど・・・・・・」
幸の手が震える。
「登さんに限って浮気なんかするわけない、何か理由があるに違いない・・・・・・だから、あたしが押し入ったら迷惑だと思って・・・・・・」
幸が両手を震わせながら、ギュッと握る。
「・・・・・・いえ、本当は怖かったんです。心のどこかで浮気と疑っていたんです。でも、本当のことを知るのが怖くて、自分に言い訳して何もしなかったんです」
「・・・・・・」
「土曜日に登さんの住むアパートで、前々からおうちデートする約束してて・・・・・・あたしは登さんに浮気されたくない、嫌われたくない、そんな気持ちが強くなっていて・・・・・・」
「うん」
「いつもより露出の多い服を着て、映画を観ていた時に登さんの腕に抱きついて胸押し付けたり・・・・・・」
「あら」
舞が少しにやける。
「テレビゲームしてる時は接戦してる所でわざと負けたりしました」
「うん」
「でも、それが仇となって登さんに何かあったのかと問いだされて、女の人のことを聞いたんです。そしたら、それは女装した男だって言われたんです」
「え?」
「それを聞いた時、あたし信じられなくて、どこの誰なのと聞いたんです。けど、口止めされてるから言えないと言われて・・・・・・登さんを信じることできなくて・・・・・・その場から出ていったんです」
幸が涙を流す。
「別れたわけじゃないのよね?」
「はい」
「まあ、他の人はどうかわからないけど、あたしも幸ちゃんの立場だったら信じられなかったと思うわ」
「でも、あたしも馬鹿だったんです。人の助言を無視して愚行なことをしたばかりにこんなことになって・・・・・・」
「・・・・・・そんなに自分を責めないで、幸ちゃん」
「でも・・・・・・」
「・・・・・・あ!」
「どうしたんですか?」
「幸ちゃんは、あれからそのアパートには行ったの?」
「いえ、全然」
「・・・・・・だったら、明日行ってみない?あたしもついていくから」
「え?」
「イタリア料理ってトマトを使ったものが多いですよね」
「そうね。それにしても美味しいわね」
「そうですね」
幸と舞は話しながら、ナイフとフォークを使って食べる。
「ねえ、幸ちゃん」
「はい」
「何かあった」
幸の手が止まる。
「・・・・・・いえ、何もないですよ」
と幸が目を逸らすように料理を見ながら答える。
「隠しても駄目よ。手と顔にでてるわよ」
幸が気まずそうな顔をして、
「・・・・・・なんで、そう思ったんですか?」
と舞に訊ねる。
「今週に入ってからやたら仕事してたでしょ?・・・・・・もちろん、普段は仕事してないって意味じゃないわよ!ただ・・・・・・嫌なことを思い出さないようにやってるように見えたから・・・・・・」
「・・・・・・誰にも言わないって約束できますか?」
「もちろん」
「・・・・・・実は金曜日の夜に登さんが女性と一緒にアパートに入る所を見たんです」
「え!」
「その時にアパートへ訪ねて確認することもできたんですけど・・・・・・」
幸の手が震える。
「登さんに限って浮気なんかするわけない、何か理由があるに違いない・・・・・・だから、あたしが押し入ったら迷惑だと思って・・・・・・」
幸が両手を震わせながら、ギュッと握る。
「・・・・・・いえ、本当は怖かったんです。心のどこかで浮気と疑っていたんです。でも、本当のことを知るのが怖くて、自分に言い訳して何もしなかったんです」
「・・・・・・」
「土曜日に登さんの住むアパートで、前々からおうちデートする約束してて・・・・・・あたしは登さんに浮気されたくない、嫌われたくない、そんな気持ちが強くなっていて・・・・・・」
「うん」
「いつもより露出の多い服を着て、映画を観ていた時に登さんの腕に抱きついて胸押し付けたり・・・・・・」
「あら」
舞が少しにやける。
「テレビゲームしてる時は接戦してる所でわざと負けたりしました」
「うん」
「でも、それが仇となって登さんに何かあったのかと問いだされて、女の人のことを聞いたんです。そしたら、それは女装した男だって言われたんです」
「え?」
「それを聞いた時、あたし信じられなくて、どこの誰なのと聞いたんです。けど、口止めされてるから言えないと言われて・・・・・・登さんを信じることできなくて・・・・・・その場から出ていったんです」
幸が涙を流す。
「別れたわけじゃないのよね?」
「はい」
「まあ、他の人はどうかわからないけど、あたしも幸ちゃんの立場だったら信じられなかったと思うわ」
「でも、あたしも馬鹿だったんです。人の助言を無視して愚行なことをしたばかりにこんなことになって・・・・・・」
「・・・・・・そんなに自分を責めないで、幸ちゃん」
「でも・・・・・・」
「・・・・・・あ!」
「どうしたんですか?」
「幸ちゃんは、あれからそのアパートには行ったの?」
「いえ、全然」
「・・・・・・だったら、明日行ってみない?あたしもついていくから」
「え?」
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