上 下
84 / 113

第八十三話 幸せからの・・・・・・その九

しおりを挟む
 それから十分後──。 

 登は窓の外を見ながら、電話をしていた。

「一ヶ月以内にはまた行けると思うから・・・・・・うん。じゃあね」

 登は電話を切る。

「か~さんから?」

「ああ、幸のことが気にいったみたいでさ──あ!」

「ど~した、兄貴~?」

「ど~したじゃないよ!どんだけ酎ハイ飲んでんだよ!」

「どんだけって~これで六本だけど~」

「飲みすぎだろ!会話もおかしいし」

「心配ないって~」

「アパートに帰ったら、今日は飲むなよ」

「わかりました~!」

 相当、酔ってるなぁ。

 登が窓の外を見る。すると、呼んだタクシーがちょうど来た所だった。

「清、タクシー来たぞ!」

「わかった~」

 清が立上がろうとすると、ふらつく。

「かなり酔ってるな」
 
「トイレに行ってくる~」

 清はふらつかながら、トイレへと向かった。

 しばらくして、清は登の腕にしがみつきながら、階段を下りて行く。

 この状態で階段を一人で歩かせるのは危ないからな・・・・・・。

 タクシーへと二人は乗る。そして、タクシーを走らせる。

「久しぶりだね。登君」

「?・・・・・・道夫さん⁉」

「兄貴の知り合い~?」

 清が登に訊ねる。

「こちらは幸の親戚の道夫さんだ」

 登が道夫に清のことを紹介しようと、

「それで、え~と言っても大丈夫か?」

 清に訊ねると頷く。

「・・・・・・弟の清です」

「なんだ。弟さんか。しかし、なんでそんな格好を?」

「そのですね──」

 登は道夫になんで、清が女装をしているのかを話した。

「なるほど、そういうことか。ははは」

 と笑いながら言う。

「ちなみにこのことは他言無用で・・・・・・」

「大丈夫。警察にでも聞かれない限りは話さないよ」

「それなら、よかったです」

 数十分後──。

 気がつくと清は眠っていた。

「いろいろすみません。弟が・・・・・・」

「いや、全然。むしろ弟さんでよかったよ」

「え?」

「最初、女の人かと思って一瞬、申し訳ないけど、もしや浮気?って思ってしまってね。内心ハラハラしちゃったよ」

「それはすみませんでした」

「いや、こちらこそ疑ってすまなかった」

「いえ」

「着いたよ」

「はい。ありがとうございます」

 登は代金を払い、二人はタクシーから降りる。

 そして、タクシーは走り去っていった。

 清は登の腕にしがみつきながら、自分のアパートへと歩いて行った。

 中に入り、清をベッドに横にさせる。

「じゃあ、俺は帰るから」

「待って~兄貴~」

 清が起き上がる。

「どうした?」

 清の腹が鳴る。

「何か作って~」

「・・・・・・わかった」

 そして、現在──。


 


 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

処理中です...