浮気されたくない幸の恋愛奮闘記

和山忍

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第八十二話 幸せからの・・・・・・その八

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  次の日の朝──登の住むアパート。

 登が食器を洗っていると、スマホが鳴り出す。

「幸かな?」

 スマホを見ると、清からの電話だった。

 登は電話に出る。

「どうした?清」

「兄貴・・・・・・昨日のことなんだけど・・・・・・」

「ん?ああ──」

 昨日の夜──。

 登がドアを開ける。

「どうした?──!」

 そこにいたのは黒髪の長い女性の姿だった。登は思わず、ドアを閉める。

「・・・・・・」

 清の声だと思って、開けてしまったが、危ない、危ない。

「兄貴!急にドア閉めるなんてひでえよ!早く開けてくれよ!」

 と言いながら、ドアを叩く。

「申し訳ありませんが、俺の知り合いに女装趣味の人はいません。部屋を間違えてませんか?」

「何言ってるんだよ!俺だよ!弟の清だよ!こないだ癒やし南国であっただろ?」

「・・・・・・じゃあ、聞くが俺の名前と誕生日は?」

「え?佐々木登・・・・・・二十九歳。四月二十五日生まれだろ?」

「じゃあ、俺と一緒にいた女性の名前は?」

「海原幸」

 どうやら、本当に清のようだ。

 登はドアを開ける。

「なんだよ!兄貴!俺の姿見るや否や、すぐドア閉めて!」

「すまない。怪しい奴かと思って・・・・・・っていうか、その姿どうしたんだよ?」

「ああ・・・・・・由梨にやってもらった」

「なんで、やってもらったんだ?」

「いや。今日、由梨が休みで俺もそれを前から知ってたから有休とってたんだ」

「うん」

「それで、由梨の住むアパートでドッキリ番組の録画を観てたんだ。その時に特殊メイクのドッキリがあってさ」

「うん」

「それで、俺もやってみたくて、由梨に頼んでやってもらったんだ」

「なるほど、でも、なぜに女性?」

「いや、その方が面白いかなぁ?と思ってさ。それで由梨の住むアパートから俺の住むアパートに帰る時にふと、このまま兄貴の所に行こうと思い立ったわけ」

 思い立たなくてよかったのに・・・・・・。

「そっか・・・・・・もしかして、酒飲んでる?」

「ああ、うん。飲んだ」

「やっぱりか・・・・・・」

 どおりで顔は赤いし、女装したままここに来るわけだ・・・・・・。

「そう言えば、その衣装は由梨に借りたのか?」

「そう。あと、ブラも借りた」

「マジか・・・・・・」

 よく、由梨貸してくれたな・・・・・・。

 登が清の膨らんでる胸の部分を見ていると、

「ちなみにこのブラはDだぜ」

「そうか・・・・・・」

 由梨ごめん・・・・・・

「それで、兄貴?」

「何?」

「今から、飲みに行かない?」

「・・・・・・まさかだと思うけど、その格好でか?」

「イエス!」

「だったら、断る!知り合いに会った時なんて説明していいのかに困る!せめて、俺の服貸すから着替えてくれ!」

「それは嫌だぜ!せっかく由梨にやってもらったのにさ!」

「じゃあ、飲みに行くのはなしだぞ」

「しかたない。今回は諦めるか・・・・・・」

 今回はって・・・・・・まさか、またやるつもりか?

「じゃあ、兄貴!今日はここに泊まっていっていいかな?」

「いや、悪いけど駄目だ。明日、朝に幸が来るから」

「え~」

「え~じゃない!」

「・・・・・・わかった、ごめん。今日は帰るよ」

「ちょっと待て!ここまで何で来たんだ?」

「え?電車と歩き」

「電車と歩きか・・・・・・」

 このまま帰してもいいが、一応送って行くか・・・・・・心配だし。でも、この格好のままは一緒には・・・・・・。

「・・・・・・タクシー呼ぶか」





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